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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第128話 会合

挿絵(By みてみん)





 東京都。千代田区。パレスホテル東京。


 接客は超一流で、景色は良く、部屋は清潔。


 和洋中の名だたるレストランが10店舗ほど揃う。


 様々なサービスが充実し、顧客満足度は極めて高い。


 全てにおいて非の打ち所がない、日系初の五つ星ホテル。


 ――その6階。


 和のテイストで店を構える和食料理屋があった。


 席数78席。和洋を含めた個室は9室ほど備わっている。


 どこも全面ガラス張りで、皇居外苑の緑と水を一望できた。


 その和の個室では、極めて重要な会合が開かれようとしていた。


千葉一心ちばいっしん男谷信久おだにのぶひさ疋田景典ひきたかげのり、でしたね。私は――」


 上座に座り、声を発したのは、長い銀髪の女性。


 ピンクを基調とした和服に、尖った耳に、幼い容姿。


 床は畳だったが、机の下に空間があり、細い足を伸ばす。


 見た目だけなら童女。ただし、彼女の役職は唯一無二だった。


「存じ上げております。皇帝陛下。お目にかかれて光栄でございます」

 

 黒髪坊主頭の男性――千葉一心は言葉を遮り、挨拶している。


 黒の軍服に袖を通し、所有している刀は席の右側に置かれていた。 


 座席は8席。机を介して左右に4席ずつあり、出入口に近い下座に座る。


 帝とは対角上に位置しており、距離的に考えれば、最も離れた場所にいた。


「おいおいおい。陛下の御言葉を遮るとは、随分、偉くなったもんだな」


「帝の前で汚い言葉は使いたくないんだけどねぇ。舌を斬り落とそうかぁ?」


 反応を示したのは、二人。男谷と疋田だった。


 黒髪坊主頭、もみ上げと眉が濃く、屈強な方が男谷。


 白髪ロン毛、毛先が全体的にうねり、ガリガリの方が疋田。


 それぞれ黒の軍服を着ており、得物となる刀を右側に置いている。


          ―― 

       帝①|   |②

        ③|   |④男谷

      疋田⑤|   |⑥

        ⑦|   |⑧千葉

          ――

               出入り口


 このような配置で座り、同じ隊長内でも格付けされていた。


 勤続年数順か。年功序列か。はたまた、実力順か。それらは不明。


 帝の命令でも、誰かが指示したわけでもなく、流れで自然とそうなった。


 ――席順に対して、特に不満はない。


 二人と同じ役職だが、勤続年数は一年も満たない。


 年功序列で言っても、まず間違いなく最年少となるだろう。


 ここは我慢するのが礼儀。一言謝り、話を円滑に進めるのが大人だ。


「俺に指図するな。……実力者順なら、格下だろうが」


 その思いに反し、無礼を承知で紫色のセンスを纏う。


 刀こそ抜かなかったものの、暴力沙汰覚悟で言い放った。


「「…………」」


 無言だったが、二人は髪色と同じセンスを纏っていた。


 男谷は黒。疋田は白。出力は必要最低限。身を守れる程度。


 初心者に毛が生えたようなもので、何の脅威にも感じなかった。


 これが限界か、わざと抑えているのか、これで十分という評価なのか。


 ――なんにせよ。


「舐められたものだな。……表へ出ろ! どちらが上か分からせてやる!!」


 一心は立ち上がり、隊長格二人に向け、宣戦布告する。


 無茶苦茶なのは頭で分かるが、感情の制御ができなかった。


 癇癪持ちと言えば簡単だが、自分の場合は他人事じゃ済まない。


 どれだけ過去を恥じ、悔い改めようと思っても、本質は同じだった。


「分かりました。……私がお相手しましょう」


 そこで話に応じたのは、男谷でも疋田でもなく、帝。


 冗談を言っているような雰囲気はなく、目は本気だった。


 颯爽と立ち上がって、出入り口の方へと向かおうとしている。


「……お、お待ち下さい陛下。ここは我々が」


「帝を守るのが役目でしてねぇ。お転婆が過ぎますよぉ」


 男谷と疋田は異なる反応を見せるが、言いたいことは同じ。


 帝の身体に触れこそしないものの、言葉で止めようとしていた。


「お構いなく。この集まりは元々、お三方の人となりを知るためのもの。食事を交えた方が話しやすいと思いましたが、身体を動かす方が好みと見えます。刀を扱わない模擬戦であれば、趣旨に合いますし、生死が絡むことはないでしょう。それも、お二人が立ち会ってくれるのであれば、何も問題はない。違いますか?」


 帝は淡々と持論を展開し、意見を押し通そうとしていた。


「それは……そうですが……」


「あっしは構いませんよ。帝がそう仰るなら」


 男谷と疋田は、半ば認めるような発言をしていた。


 流れは完全に帝ムード。何を言っても言い返されそうな空気。


(どうして、こうなった………)


 額に滲んだ冷や汗が、額を伝い、ポトリと落ちる。


 予想外の事態に頭はフリーズ。反論する気も起らない。


 帝の判断に文句は挟めず、今は場に流されるしかなかった。


 ◇◇◇


 後れて和室に入ってきたのは、一人の老人だった。


 スキンヘッドで、左右に伸びた長い白髭を生やした男。


 黒の軍服を着ており、左腰にはサーベル状の格式高い軍刀。


 両手には、四人前の鮨が乗る、下駄のような容器を持っていた。


 ――臥龍岡ながおか亀之助かめのすけ


 この場の調理を担当し、帝の命を任された責任者。


 誰もいなくなった和室を目にし、きょとんとした顔で言った。


「ありゃ? 部屋を間違えたかのぅ……」

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