表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
114/269

第114話 魔獣との死闘

挿絵(By みてみん)





 覚醒都市バイカルヴェイ北部。変電所付近。


 不自然な大穴が少し離れた場所にある、道路上。 

 

 そこで繰り広げられているのは、人間と魔獣の攻防。

 

 刃と鞭が幾度も飛び交い、魔獣の犬牙と衝突を繰り返す。


 人並み外れた速度で打ち合うものの、直撃は一度もなかった。


 敵と味方、互いに傷を負うことなく、不気味な均衡が続いている。


 ――いつ崩壊するかは分からない。


 綱渡りのような感覚で刀を振るい、気を引き締める。


 一瞬でも手を抜けば、簡単に転げ落ちるのは目に見えた。


 ただ、現状を維持できても好転せず、状況は何も変わらない。


 時間と体力とセンスに限りがある以上、取っ掛かりが必要だった。


「あなたの意思能力は、攻撃型か補助型だと……どちらですか?」


 策を講じるにしても、現状の把握は必須。


 果てのない攻防の隙間を縫い、隣人に問いかける。


「どちらかと言えば……補助型ですね。物質の創造可変にメモリを割いておりますので、決定力には欠けます。このまま純粋な体術勝負が続くのであれば、後れを取らない自信がありますが、彼女を倒し切るレベルには至らないでしょう」


 すかさず、鞭を振るう女教師は質問に答えていた。


 内容は的確だった上に、呼吸も姿勢も鞭捌きも乱れない。


 後れを取らない発言は、強がりじゃなく、事実のように思えた。


(わたしがやらないと、か……)


 あわよくばと考えた、逃げ道が塞がれた瞬間だった。


 率直に言って、今の実力だと、あの魔獣には通用しない。


 隙を作り、全力の技を叩き込んでも、勝てない気がしていた。


 ――原因は戦闘経験の不足。


 内閣総理大臣になって以降、政治が日常だった。


 死線や死闘とは程遠い場所で、デスクワークが主体。


 基礎的修行は欠かさなかったけど、成長速度は鈍化する。


 たった数か月とはいえ、同期の人たちとは大きく差が開いた。


 目を背けたかったけど、直視しないといけない現実が押し寄せる。


 ――戦闘能力の向上は急務。


 追い込まれることで浮き彫りになったのは、課題。


 頭脳戦だけじゃなく、肉弾戦も必要だと気付かされた。


 優れた策を考えようと、身体がついてこないと意味がない。


 だからこそ、この土壇場でやらなければいけないことがあった。


(――意思能力を開発する。今ここで)


 目標を明確に定め、倒すべき敵を見据え、胸中で誓う。


 決定力に欠けるなら、この場で用意すればいいだけのこと。


 それだけの自由度と創造性は意思の力にある。あとは発想次第。


「何か思いついたようですね。わたくしは何をすればよろしい?」


 表情を見抜いたのか、女教師は意向に沿う提案をしていた。


 戦闘能力を抜きにしても優秀。それがヒシヒシと伝わってくる。


 ――内閣の特別顧問にいれば心強い。

 

 なんて妄想が頭によぎるけど、今は必要ない。


 雑念を振り払い、自分がやるべきことに目を向けた。

 

「少しの間、一人で時間を稼いでください。わたしが道を切り拓きます」

 

 ◇◇◇


 機を見計らい、白髪の女性は戦線を離れていきました。


 深くは伺っておりませんが、間違いなく、策を講じるため。


 彼女の選択を微塵も疑うことなく、託された役目を全うします。


「――――」


 相手は犬型の魔獣。三つある頭の二つが動き、迫り来るのは犬牙。


 甘噛み癖のある駄犬を躾けるように、わたくしは鞭で迎撃し続けます。


 身を貫くことはありませんが、一人欠けたせいもあり、押されていました。


 ――戦線崩壊は時間の問題。


 さっきは強がってしまいましたが、今のままでは危うい。


 もし、逃亡されたのだとすれば、助けが来ることはありません。


 見ず知らずの関係であれば十分あり得る展開であり、死に直結します。


 ――それでも疑うことはありませんでした。


 敵味方問わず、相手がどういう人物かを知る術があります。


 言わずとも伝わる。観察していれば、自ずと視界に入ってくるもの。


(『あの瞳』でお願いされては……期待には応えねばなりませんね)

 

 人となりは、言葉よりも目に現れる。


 熱意あるものの眼差しには独特の光が宿る。


 彼女にはそれがあった。命を懸けるに値する相手。


 向かう先を見守るためにも、生き残る必要がありました。


 ――だからこそ。


グラーグの鉄鎖(アイアン・ボンダージ)


 わたくしは、持っていた鞭を自分自身に巻き付ける。


 両手を縛る。意思能力の発動条件が満たされた瞬間でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ