閑話 冷めたホロホロ鳥
『メアリー様が、伯爵は、書類を読まずに印を押すからと、私ども使用人の紹介状をこっそり、書類の山に紛れ込ませてくれました。おかげで、何とか、次の職場に行けました。オリビア様のひいきの使用人ばかり残る結果になって、ウグ、グスン』
『メアリー様は、領から、逃げ出そうとする商会に、ここは、未開発地域が多くて、戦役が終わったぐらいに、開発が進むからと、自ら、プレゼンをしていました』
『メアリー様は、農民達に、王都に訴える方法を教えていました。ええ、オリビア様が、王子殿下の婚約者なので、騒ぎになってはまずいからと、伯爵様は、税率を王国法まで、下げてくれました』
・・・ほお、メアリー嬢、ますます気に入った。既知の方法を最大限に生かすタイプだのう。
妾は王妃、メアリー捜索のために、ローゼン伯爵家の元使用人たちに事情を聞いているが、メアリー嬢の有能さが垣間見えてくる。
一方、オリビアは、
『あのヌイグルミは、私がぬって、メアリーにプレゼントしたのが真相です!』
『ほお、妾が出した刺繍の課題、あれは、お針子に下縫いをさせて、その上を縫っただけだと、分かっているぞえ』
『勘違いでしたわ。私が買ってあげたのです!王都の高級オモチャ屋さんで、私のお小遣いから』
『もう、王都中のオモチャ屋は捜索したぞえ。そなたの言はコロコロ変わって、信用できない。もう、いい。平民オリビアを、王宮からつまみ出せ。不遡及の原則があるからのう。ネズミ講で逮捕はしない。次、やったら、牢屋いきぞ』
『王妃殿下!第2王子殿下と婚約させて下さい!』
『こら、さっさと、来なさい!』
全く、下積みを嫌い。成果だけ取ろうとする。
メアリーを王族に引き込むのが宜しかろう。陛下も賛同されている。
・・・・・・
「・・という理由で、マークよ。メアリー捜索に専念しなさい。貴方が見つけて来るのよ」
「しかし、母上、私は、今、法案の制作に取りかかっています。トーマスと、ダイゼンは、役に立ちません。あの状態です」
「ウワ~~~~ン、メアリーたん。可哀想なり!グスン、グスン、メアリーたん!メアリーたん!」
「グスン、グスン、ウウウウ、オオ~~~~ン、オオ~~~ン、グスン、グスン、ワシはこんな状態でも、メアリー様のお靴を履き替える台になりたいと願っています。アアア、メアリー様、帰って来て、こんな、卑しいトーマスを叱って下さい。オオオオーーーーン。奴隷失格です~~」
「やかましいわ!メアリー嬢は、お前の主人ではないわ。我国では奴隷制度は廃止されているわーーーー、法案に協力しないのなら、王宮から出て行け!」
「メアリー嬢がいなければ、計画が進みません。しばらく、商務卿に担当させます。
貴方が週4で行くメイド猫喫茶のマスター、サトシ・キムラ殿に会いに行きなさい。
ほら、VIP会員カード、寝台の下にあったわ。これを持って、メアリー捜索の意見を聞くのよ」
「週3ですよ!」
☆☆☆リトルアキバ「メイド猫喫茶」
まあ、認めよう。獣人族の雇用創出につながっている。少しは、いいのかもしれない。
シーーーーーーン、
静まっているな。
「ええ、メアリー様は、よく店に来られていました」
「プライベートがあるから、誰も声をかけなかったが、微笑ましく見ていたよ」
「「「はあ~~~」」」
「これは、これだ。だからと言って、自粛していたら、経済は回らないぜ!」
「「「おう!」」」
・・・・・
マスターのサトシ氏と話をする。まずは世間話だ。
「ニャン!ニャン!ご主人様~~」
「・・・株式はこれから、必要になりますね。株って、私が転移前の世界では、10人に聞くと9人は、株式売買、投機対象の話しになっちゃうんですね」
「美味しく、美味しく、美味しくな~~~れ!」
「ほお、違うのか?」
「メアリー様の駅馬車娘の推し団扇、欲しいな」
「違うとは言い切れませんが、
例えば、メアリー商会は、駅馬車商会です。それから、関連するのは、物流、ドワーフの魔道車工房、観光業、土地開発・・・と事業が広がります。
株式交換や株式移転などで、メアリー商会とドワーフ工房や既存の他の商会を結びつける事もできるのです。その資産価値を株式で評価してね」
「通常、商会は、1業種だが・・」
「ええ、これから、間違いなく、他業種で連携する財閥が生まれるでしょう。転移者がいなくても、この流れは止りません。財閥の総帥に相応しいカリスマは、メアリー様しかいないでしょう」
「そうだ。母上から、言われたのだ。メアリー嬢の行く先、サトシ殿に意見を聞けと言われたのだ」
「マークさん。では、こちらに、外に出ましょう」
「え、オプション頼んでいないのだが」
「フフフ、今日はいいです」
☆☆☆リトルアキバ、常設演劇場
「こ、こ、婚約破棄をする!」
「そんな。私はイジメなどしておりません!」
・・・ジャスだ。、演劇で王子の役をしている。ここにいたのか?しかし、演技が下手だ。
「ヒドイ、クソ王子!没落しろ!」
「お嬢様!頑張って!」
観客の罵声が飛び交う。
「陛下って、冷徹だけど優しいですね。廃嫡した後、リトルアキバに保護の依頼が来ました。
王子を市井に放逐すると、民は、迷惑しか被りません。なのに、陛下は廃嫡にされた。
殺しません。幽閉もしません。
私のいた世界のロマノフ王朝では、失脚した王族は、生涯幽閉です。
何故だが、分かりますか?」
「慈悲の心か?」
「違います。殺すと、ニセ王族が現れて、乱が起きます。反乱、詐欺などね。だから、王族を飼い殺しして、偽者が出てきたら、生きていると知らしめる・・・」
「この場合、この役をしていると・・・」
☆
『おれは、第3王子だ!』
『知っているよ!馬鹿王子だろ?サービス精神旺盛だな!』
『本当に、王子なんだよ!』
『ああ、舞台の上ではな』
・・・・・
「となります。この劇、そこそこ人気があります。婚約破棄物が、飽きられたら、この世界の劇作家に、脚本を依頼します。
馬鹿な王子役を生涯やり続けるのです。今、彼は、月給銀貨15枚で雇われています。オリビア嬢は、元王子の偉光が使えなくなったからと、逃げたそうですね」
「それと、メアリー嬢の行方の関係は?」
「人って、納まる場所に納まるものです。メアリー嬢を探すのは、貴方が最適です。貴方なら分かるでしょう?」
「そうか、才覚は隠しても隠しきれない!」
・・・そして、私は、注意深く、王都内、近郊の商会を調査するようにした。
後に、法案作成に役立つ事になった。
彼女の才覚は、既知の方法を最大限生かす方法だ。なら、駅馬車商会か?
「エレガント商会の駅馬車、まだ、続いています。一時は、廃業になると予想されましたが、料金が倍になって、興味を持つ人が出てきたのと、エレガント子爵夫人が名物になって、人気が出ています」
「魔獣ランド、少しずつ収益が増加、安全をアピールしています。それも、この柵を越えたら、お客様の責任です。と宣伝しています」
「安全か、なら、そこだ!」
私は、魔獣ランドに向かうことになる。
☆魔道車開通後、
☆☆☆王宮
「オオオオーーーーン」
「ウワワワワ~~~~ン」
あの、トーマスと、異世界人の泣き声がまだ聞こえる。まだ、王宮にいるのか?
あ、義姉上の声も聞こえる。
「トーマス、ダイゼンとやら、メアリーは、王宮預かりになったわ。王族との婚約を予定しているわ。そなた達の下卑た目を向ける対象ではなくなったわ」
「グスン、グスン、こんなに好きなのに、こんなに萌えているのに、ヒドイなり、可哀想な我なり。グスン、グスン!NTRなり!メアリーたん。お帰りのお祝いのホロホロ鳥が冷めたなりーーーーーー!」
「ああ、王太子妃殿下!まだ、メアリー様に劣情を抱く、卑しきブタであるトーマスにお叱りを!グスン、グスン、メアリー様、ご帰還おめでとうのホロホロ鳥が冷めましたーーーーーー」
「オーホホホホホ!!ざまを見なさい。メアリーは、可愛い妹よ。私が守って見せますわ!!!」
「義姉上、喜んでいますよ!!!何でチキンを王宮に持って来る!?」
後に、山中大全は、芸術家として、メイド喫茶、萌え萌えクラブを主宰、トーマスは、思想家として、世に名を残すことになる。
最後までお読み頂き有難うございました。




