表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/22

お店の定番、うさぎのターン

「さーてさて」

 トントンとテーブルを指で叩くと、

「落ち着いたところで、今日の議題に入ろっかー」

「・・・オチもついたわね」

「ううううるさいよ妃」

 あわあわする千華だが気を取り直し、

「コホン。・・・えっと、今日はゆいちゃんのうさぎグッズ開発についてだね!」

「わぁい。いいのかな、わたしの事で・・・」

「全然おっけーだよー。朝見せてくれたてろーんてした子の事かな?」

「ううん。あの子はもうお店に出すのは決定だから大丈夫ー。・・・あ、お兄ちゃん。後であの子の写真撮ってほしいなぁ」

「りょーかい」

 背中で答える月理を見て頷いた唯理は向き直り、

「んとね、今日はお店で新しい定番グッズを考えたいなぁって」

「ふむふむ、定番かぁ」

「・・・まず、今ある定番が何かって話ね」

 コクコクと頷いて、スカートのポケットに手を入れて紙片を取り出すと、

「うーんと。うちは今、定番って呼べるのはこれかなー」

 千華と妃が少し乗り出して、開いた紙片に目を通す。

「おっ、意外と少ない?」

「お母さんが色々買い付けてくるけど、僅少品ばっかりだからなかなか定番になるものが無くて・・・」

「・・・この記号は?」

「あっ、これはどこでよく売れてるかを記号にしてみたんだー。建物のマークがお店で、まるいやつはネットのつもりー」

「なるほど」

 三人で眺めること暫し。

 すると身体を後ろに戻した千華が、

「大体はネットで売れていくみたいだね。あとお値段はわからないけど、ちょっとお高めの物は店頭で売れているみたい?」

「あ、お値段印刷するの忘れちゃった。でも千華ちゃんが言った通りかも。これなんて私がお店番の時よく売れてるけど、確かに安くは無いと思うー」

「・・・遠方から買いに来る方とかいるのかしら?」

「うん。なんか、近くの県から来ましたーってお客さん、結構見るよー」

「おぉ、別の県からも来るのかー。それってなかなかすごいんじゃない?」

「そーだよねぇ。しかもうち、結構へんぴなところにお店構えてるから尚更かも」

「・・・それぞれ足らない所を補完するのはどうかしら」

『足らないところ?』

 千華と唯理がハモらせる。

「・・・例えばネットだったら少し高めの商品とか、店頭ならついでに買ってもらえる小物とかかしら」

「あー、なるほど」

 ポンと手を合わせる唯理。

 紙片の一覧を再び眺めた千華は、

「そういえばここに載ってる子達、お店ではあまり見ないねぇ」

「・・・そういえばそうね」

「あー、うん。この子達はネットで売れていくから、大体在庫は倉庫に仕舞いっぱなしかも」

「じゃあその子達出してあげたら、一緒に売れていくかもね!」

「うん。早速やってみるー」

 唯理は、紙片を手元に引き寄せて何かを書き足す。

「・・・そして新規商品開発に戻ってくる訳ね」

「そだねぇ。・・・うーん」

 流れるしばしの沈黙。

 ふと、唯理が視線を横にやり、目を大きくする。

「わっ。わわわっ」

「?どしたのゆいちゃん」

「のののケージ、開いてるよっ!」

 すると後ろを向いたまま平然とした声で、

「そりゃ出してるからな」

「出してるから、じゃないよー。最初に言っておいてよー」

 半べそになりつつ視線を部屋中にまき散らす。

「の、ののはどこ!?」

 カップを口元に傾けていた妃は、ふと折った膝先に感触に、視線を下へ向ける。

「・・・いたわ」

 びくっとした唯理は、自身の周囲を慌てて見回し、

「ど、どこ!?どこかな妃ちゃん!?」

「・・・大丈夫。私の足下よ」

 すぐにテーブルから身体を少し離すと、

「そっかー。妃ちゃんの近くなら大丈夫かな」

 安心して、カップに手を伸ばす。

「ゆいちゃん、のののこと苦手だったとは思ったけど、こんなにダメだったっけ?」

 テーブルの下を覗き込み、うさぎに手を伸ばしながら千華が不思議がる。

「だってぇー。ののこの前、わたしが座ってただけなのに手を噛んだんだよ!」

 柔らかく語気を荒げて、そのままカップに口づける。

「じゃれただけだろ」

 その言葉に、カップから口を離すと背を向ける月理に向かい、

「血が出たんだよぅ。痛かったんだからー」

 困り果てた声音を恨めしそうにあげると、再びカップを傾ける。

 その手を見た千華が、

「あ、その右手の甲がそう?」

 コクコクと頷く唯理に、

「あらー、痛そう。大変だったねぇ、ゆいちゃん」

 頭を軽く撫でる。

「・・・・・・」

 無言でうさぎを見つめていた妃はカップを置き、

「・・・あまり困らせないであげて」

 ゆっくりと手を下げて、膝頭に手をかけているうさぎの頭を撫でる。

 うさぎはわかっていると言わんばかりに、目を細めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ