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第三章 1 『世界へ向かう』





 王都の大門前には、朝から旅立つ人々の声が満ちていた。商人の荷馬車が石畳を軋ませ、門番たちが通行書を確認するたびに、人と馬の列が少しずつ動いていく。リゼルヴェートはその賑わいを眺めながら、自分たちの馬車の前で大きく背伸びをした。


「いよいよ出発だね! なんだか、昨日までよりずっと遠くへ行く気がする!」


「実際、遠くへ行くんだからな。王都の外へ出るのと、国際会合へ向かうのじゃ話が違う」


 ルシェルトは荷台に積んだ鞄の固定を確かめながら、笑って答えた。食料や着替えだけでなく、道中の通行に必要な書類や、万一の際に使う物資まで用意されているらしい。


 リゼルヴェートが手伝おうとすると、彼はちょうど結び終えた荷紐を引き、問題ないと頷いた。


「荷物はこれで全部だ。途中の補給場所も確認してあるし、宿の手配も済んでる。あとは変に予定を増やさず、向こうまで行けばいい」


「変に予定を増やすって、私のこと?」


「他に誰がいるんだよ」


「ええっ、私そんなに寄り道しないよ!」


「……澪桜。昨日、街道に珍しいお菓子が売っていたら寄りたいって言ってた」


 隣にいたアシェラが、いつもの無表情で口を挟んだ。リゼルヴェートは思わず彼女を見下ろしたものの、確かにそんなことを言った覚えがある。


 美味しい物があれば食べてみたいと思っただけなのに、どうして二人とも最初から寄り道する前提なのだろう。


「それは、見つけたらちょっと気になるって話だよ!」


「……同じ」


「違うもん!」


 そんなやり取りをしている間にも、ゼルディヴァンは街道図へ視線を落とし、各地の移動状況を確認していた。今回の目的地には六大国をはじめ、多くの国家から至冠者や関係者が集まるという。


 普段なら単純な移動で済む道でも、参加者が集中する時期には思わぬ混雑が起こるらしかった。


「到着まで二日。道中で各国の車列と重なる可能性は高いけど、無理に追い越す必要はない。会合の入場手続きまで含めて余裕を取ってある」


「さすがゼルディヴァン! もう何でも分かってるんだね!」


「分かってないことが多いから調べてるんだよ。現地の混雑までは、実際に着かないと判断できないしな」


 いつもどおりの返答に、リゼルヴェートは少し笑った。第二十七位になった時も、五ポイントへ到達した時も、彼は数字だけで喜ぶより先に、その意味を調べてくれていた。


 おかげで戦歴照会権を使って上位至冠者の記録まで確認できたのだから、今回も知らないことを教えてもらえるに違いない。


「リゼルヴェート、少しいいかしら」


 書類を抱えたイェルシェリナが、門の方から歩いてきた。いつもより改まった旅装ではあるものの、その立ち姿は普段と変わらず落ち着いている。


 彼女の後ろに見覚えのある王女の姿を見つけ、リゼルヴェートは嬉しくなって手を振った。


「セレヴィナ! 見送りに来てくれたの?」


「はい。それと、出発前の最終確認も兼ねています。陛下からお預かりした書類がありますので、少しお時間をいただけますか?」


「もちろん! ちょうど荷物の確認も終わったところだよ!」


 セレヴィナは柔らかく微笑み、付き添いの王城職員から書面を受け取った。王女らしい端正な身なりでありながら、その表情には堅苦しい威圧感がない。


 リゼルヴェートは初めて王城で話した時から、彼女が自分の答えをきちんと聞こうとしてくれることを嬉しく感じていた。


「今回の国際至冠者会合について、王家としての正式な立場を改めて確認します。出席するのは至冠序列第二十七位のリゼルヴェートだけではありません。ノルシェリア派の四名を、それぞれ独立した役割を持つ一つの外交単位として送り出します」


「ええ。その条件なら、これまで王廷と取り決めてきた内容から変わらないわ。リゼルヴェート本人の同意と、私たちの対外折衝権限も維持されるのよね?」


「もちろんです。国家全体に関わる決定は王廷との調整が必要ですが、ノルシェリア派の活動や個別の交渉を、すべて王家が代行するものではありません」


 イェルシェリナは書面を受け取り、記載された条件へ素早く目を通した。リゼルヴェートも隣から覗き込んでみると、自分だけでなく、イェルシェリナ、ゼルディヴァン、ルシェルトの名前が並んでいる。


 さらに別の欄にはアシェラの同行も記されており、彼女が派閥の正式構成員とは区別されていることも分かった。


「私たち四人が一緒に行くって、ちゃんと書いてある!」


「ええ。あなた一人を送り出すわけではないもの。交渉も分析も移動の実務も、それぞれ担当する人間がいるのだから」


「そのとおりです。今回の会合でも、リゼルヴェートの力だけが王国の成果として扱われるべきではありません」


 セレヴィナの言葉を聞き、リゼルヴェートは書面から顔を上げた。以前のノルシェリア派は、国内ではほとんど期待されていない小さな派閥だったという。


 けれど、自分が力を見せるより先に手を差し伸べてくれた三人が、こうして王家から正式に認められていることが何より嬉しかった。


「それと、リゼルヴェート。今回の参加について、あなた自身の意思も最後に確認しておきたいのです」


「うん。私はみんなと一緒に行きたいよ。強い人たちにも会ってみたいし、今まで知らなかった世界のことも知りたいから!」


「分かりました。あなたがそう望んでいるのなら、私から止める理由はありません」


 セレヴィナは満足そうに頷き、確認を終えた書面をイェルシェリナへ返した。至冠者の順位が上がっても、王家との関係が急に変わったわけではない。


 リゼルヴェートはそのことに安心しながら、王都へ帰ってきた時には、見てきたものを彼女にも話してあげたいと思った。


「セレヴィナも一緒に来られたらよかったのにね。きっと面白いものがたくさんあるよ!」


「お気持ちは嬉しいですが、私には王都で果たすべき仕事があります。それに、皆さんから帰国後のお話を聞く楽しみも残しておきたいですから」


「そっか! じゃあ、いっぱい覚えて帰ってくるね!」


「はい。どうかお気をつけて」


 門番たちの合図に合わせ、馬車がゆっくりと動き始めた。リゼルヴェートは幌の端から身を乗り出し、セレヴィナへ何度も手を振る。


 見慣れた王都の城壁が少しずつ遠ざかっていくにつれ、胸の奥には寂しさよりも新しい場所への期待が膨らんでいった。


 晴れ渡った空の下、街道は緩やかな丘陵を越えて続いていた。王都を離れて間もないうちは商人や農作物を運ぶ荷馬車が多かったものの、道が広くなるにつれて見慣れない旗や紋章が増えていく。


 リゼルヴェートは窓の外へ視線を向けたまま、次々と通り過ぎる人々を飽きずに眺めていた。


「ねえ、あの馬車、王都で見たことない旗を掲げてる!」


「あれは国外から来た使節団だろうな。護衛の配置を見る限り、ただの商人じゃない」


「こっちの人たちも?」


「そっちは研究関係者かもしれないな。積んでいる機材が普通の交易品とは違う」


 ゼルディヴァンは次々と現れる車列を観察しながら、分かる範囲で説明してくれた。軍装姿の護衛に守られた豪華な馬車もあれば、書類や測定器らしい道具を山ほど積んだ車もある。


 リゼルヴェートには、これまで紙に書かれていた国家や組織が、ようやく現実の人々として見えてきたように感じられた。


「こんなにたくさんの人が、同じ場所へ行くんだね」


「至冠者が何十人も集まるのだから、本人たちだけで済むはずがないわ。国家の代表、護衛、研究者、商人、それぞれ目的が違うもの」


「至冠者に会いたいだけじゃないんだ?」


「もちろん。国家同士の話し合いもあるでしょうし、今後の関係を確かめたい人たちもいるはずよ」


 イェルシェリナの説明を聞きながら、リゼルヴェートは封書で埋まっていた拠点の机を思い出した。第三十一位になった頃は、どこから何が届いたのかを把握するだけでも大変だったはずだ。


 それが今では第二十七位になり、実際に手紙の送り主たちが暮らす世界へ向かっているのだから、少し不思議な気分だった。


 昼前には、さらに大きな車列とすれ違った。揃いの装備を身につけた護衛たちが馬車を囲み、その中心からはリゼルヴェートにも分かるほど強い源素の気配が感じられる。


 思わず窓から身を乗り出しかけたところで、隣に座るアシェラが彼女の袖を軽く引いた。


「……澪桜。落ちる」


「あっ、ごめん。でも、今の馬車にすごく強い人がいた気がする!」


「至冠者かもしれないな。直接確認していない以上、断定はできないけど」


「そっか……。ちょっと話してみたかったなあ」


「向こうにも予定があるでしょう。顔を合わせる機会なら、これからいくらでもあるわ」


 イェルシェリナに言われ、リゼルヴェートは素直に席へ戻った。以前なら、強い気配を感じただけで相手がどんな技を使うのか気になって仕方がなかったかもしれない。


 けれど、ユルディオやサルディオンとの戦いを経験した今は、強さだけでは相手の考え方まで分からないことを知っていた。


 ユルディオは勝てないと判断すれば迷わず降参し、サルディオンは勝つための準備を徹底して積み重ねていた。どちらも至冠者でありながら、戦いへ向ける考え方は驚くほど違っていたのである。


 まだ会ったことのない上位至冠者たちにも、それぞれ譲れないものがあるのだろうと思うと、会合への興味はますます大きくなった。


「そういえば、第一位の人も来るんだよね?」


「参加予定者には入っている。ヴァルゼリア・グラナシェル、現在の第一位だ」


「七十二ポイントで、調べられる戦歴には負けた記録がないんだよね。あれを見た時はびっくりしたなあ」


「第一位という順位だけでも十分な情報だけど、正式戦歴と合わせて見ると、また違った意味があるからな」


 ゼルディヴァンの言葉に、リゼルヴェートは頷いた。五ポイントで取得した《戦歴照会権》を使った時、第一位だけでなく第二位や第三位、第五位、第十位の記録も確認している。


 順位とポイントが必ずしも比例しないことは既に知っていたものの、実際の数字を並べてみると、それぞれが異なる戦いを積み重ねてきたことがよく分かった。


「第一位って、やっぱりすごく強いんだろうなあ。どんな人なのかな?」


「正式記録だけでは性格まで分からないわ。会った時に自分で確かめればいいでしょう」


「うん! セラフィネアみたいに、話してみたら優しい人かもしれないし!」


「……澪桜。強い人が全員優しいとは限らない」


「それも分かってるよ。でも、会う前から怖い人って決めつけるのも違うでしょ?」


 アシェラは短く瞬きをし、それ以上は何も言わなかった。リゼルヴェートは彼女の反応を見て少しだけ笑い、再び街道へ視線を戻す。


 第一位と実際に顔を合わせた時、何を話すのかはまだ決めていないが、せっかく会えるのなら互いのことを少しでも知りたかった。


 午後になると空には薄い雲が広がり、陽射しが少し柔らかくなった。街道沿いの休憩場所では、複数の国の人々が同じ井戸を使い、護衛たちが順番に馬を休ませている。


 リゼルヴェートは見慣れない服装や異なる言葉の響きに気を取られ、気づけば何度も足を止めていた。


「リゼル、そろそろ出るぞ。次の宿場まで、まだ少し距離があるからな」


「はーい! でも、あっちの馬車に積んである物って何?」


「研究用の道具だと思うけど、詳しくは分からないな。それより、そこの荷車を見てみろよ。あれだけの人数が移動するなら、食料や水を運ぶだけでも大仕事だ」


 ルシェルトが示した先には、何台もの補給用馬車が並んでいた。荷物を運ぶ人々は忙しそうに動き回り、積み荷を確認してから次の行き先へ向かっている。


 華やかな使節団の馬車とは違うものの、その働きがなければ大勢の人間が旅を続けられないのだと、リゼルヴェートにも想像できた。


「そっか。至冠者がたくさん集まるって、その人たちのご飯や寝る場所も必要なんだね」


「そういうこと。会合に参加する本人だけ見てたら、全体の規模は分からないからな」


「ルシェルトって、こういうのを見るの好きだよね!」


「好きっていうか、俺の仕事だからな。どうやって運んでるのかは気になるよ」


 彼の返事を聞いて、リゼルヴェートはノルシェリア派の拠点を思い浮かべた。今では以前より多くの人が訪れるようになったが、食料や備品の準備が勝手に済むようになったわけではない。


 小さな派閥の暮らしでさえ大変なのだから、世界中の人々が集まる会合を運営する苦労は、きっと想像以上なのだろう。


 日が傾く頃には予定していた宿場へ到着し、五人は翌日の道程を確認して休息を取った。食事の席では道中で見かけた使節団の話が続き、ゼルディヴァンが旗の違いを説明するたび、リゼルヴェートは覚えようと何度も繰り返した。


 途中で二つの国の特徴を取り違えてしまい、アシェラから短く訂正されたことだけは少し悔しかった。


「明日はもっと人が増えるのかな?」


「開催地へ近づくほど増えるだろうな。別の街道から合流してくる一団もいるはずだ」


「それなら、早めに到着する方がよさそうね。入場手続きで時間がかかる可能性もあるわ」


「そっか。じゃあ明日は、ちゃんと早起きする!」


「……澪桜。今日もルシェルトに起こされてた」


「明日は自分で起きるもん!」


 翌朝、リゼルヴェートは宣言どおり早く目を覚まし、出発の準備を終えた。ルシェルトには少し驚かれたが、褒められると嬉しくなって、荷物を運ぶのまで手伝ってしまう。


 馬車が再び街道へ出る頃には雲の切れ間から青空が覗き、前日よりも多くの車列が同じ方向へ進んでいた。


 道幅が広くなるにつれ、行き交う人々の顔ぶれも変わっていった。軍装の護衛たちに混じって宗教関係者らしい白い礼装が見え、商会の荷馬車の後ろには研究機関の印を掲げた車が続く。


 六大国の名前は何度も資料で読んでいたはずなのに、異なる服装の人々が同じ道を進んでいる光景は、それ以上にはっきりと世界の広さを伝えてきた。


 途中の通行確認所では、ノルシェリア派の書類が改めて役に立った。係員はリゼルヴェートの至冠序列に目を留めたものの、イェルシェリナが代表として提出した書類を確認すると、四人の役割を順に照合していく。


 ゼルディヴァンとルシェルトも必要な事項を説明し、五人は問題なく通行を認められた。


「ねえ、イェルシェリナ。さっきの人、最初は私の名前ばっかり見てたよね?」


「第二十七位の至冠者が来たのだから、気になるのは当然よ。でも、だからといって私たちの権限がなくなるわけではないわ」


「うん。王都でセレヴィナが確認してくれたことって、こういう時にも大事なんだね」


「ええ。実際に使える取り決めでなければ、書類に残す意味がないもの」


 リゼルヴェートは馬車へ戻りながら、左手にある至冠印へ視線を落とした。この印が現れてから、自分へ向けられる視線も、届く招待状の数も大きく変わっている。


 けれど、印を持つ自分だけではなく、イェルシェリナたち三人の仕事もこうして正式に認められていることが嬉しかった。


 再び走り始めた馬車の中では、到着後の予定について話し合いが続いた。イェルシェリナは会合での交渉と本人同意の確認を担当し、ゼルディヴァンは公開されている上位至冠者の情報を整理する。


 ルシェルトは入場後の移動や宿泊先への経路を確かめるつもりらしく、三人がそれぞれ別の資料を広げる様子はいつもどおりだった。


「私は何をすればいい?」


「まずは、あなた自身が何を聞かれているか理解すること。分からない時は、その場で確かめればいいわ」


「大事なのは、知らないことを知っているふりしないことだな。上位至冠者だからって、何でも知ってるわけじゃない」


「それに、向こうで移動する時は俺たちにも一声かけてくれ。勝手に知らない場所へ行かれると、迎えに行くのが大変だからな」


「もう! みんな私が迷子になる前提で話してない?」


「……澪桜。王都でも何度か迷ってた」


「アシェラまで!」


 三人とアシェラが揃って自分を心配しているのが分かり、リゼルヴェートは抗議しながらも笑ってしまった。強い相手と戦うことなら誰にも負けたくないが、知らない場所での生活や難しい交渉となると、三人には到底かなわない気がする。


 それでも、だからこそ一緒に行くのだと考えれば、世界中の至冠者が集まる場所もそれほど恐ろしくはなかった。


 午後になると雲が晴れ、丘陵の向こうへ青空が大きく広がった。馬車は緩やかな上り坂へ差しかかり、先を進んでいた車列が次々と速度を落としていく。


 何か問題でも起きたのかと思ったところで、ルシェルトが御者台から振り返った。


「リゼル! そろそろ見えてくるぞ!」


「えっ、本当!?」


 リゼルヴェートは窓から身を乗り出し、街道の先へ目を向けた。丘の頂上を越えると、それまで木々に隠れていた景色が一気に開け、巨大な建物群が遠くまで広がっていた。


 中心にそびえる施設の周囲には幾つもの建物が連なり、その外側を囲む広い通路には無数の人影と馬車が行き交っている。


「……すごい。あれ、全部会合の場所なの?」


「中心施設と周辺の設備を含めれば、相当な規模だな。これだけの人数を受け入れるなら、普通の会議場じゃ足りないんだろう」


「移動する人の数だけでも大変そうね。入場前に確認することも多そうだわ」


 イェルシェリナの言葉を聞きながら、リゼルヴェートは建物の手前に広がる光景を見つめた。六大国の旗が高く掲げられ、それ以外にも数え切れないほど多くの国旗が風にはためいている。


 旗の下を歩く人々は軍人だけでも貴族だけでもなく、旅装姿の者から研究者らしい者まで入り交じっていた。


「これだけの人が、みんな同じところに集まってるんだ……」


「そうね。私たちがこれまで会ってきた人たちも、この広い世界の一部だったということよ」


「うん。でも、思ってたよりずっと大きいね!」


 リゼルヴェートは目を輝かせながら、見渡す限りの建物と人の流れを追った。ノルシェリア派の小さな拠点から始まった自分たちの毎日が、いつの間にかこんな場所へ繋がっていたのだと思うと、胸が高鳴って仕方がない。


 隣にはイェルシェリナがいて、ゼルディヴァンとルシェルトもそれぞれの仕事を始めており、アシェラも変わらず一緒にいた。


「……澪桜。楽しそう」


「うん! だって、こんなにたくさん知らない人がいるんだよ。どんな人たちなのか、これから知れるんだもん!」


 アシェラはリゼルヴェートを少し見上げ、それから再び前方へ顔を向けた。馬車は広い道へ続く車列に加わり、巨大な開催施設へ向けてゆっくり進んでいく。


 入口の向こうに何が待っているのかはまだ分からなかったが、リゼルヴェートにはそれを知ることが楽しみで仕方なかった。


 遠くに掲げられた国旗が風を受け、街道には異なる国から訪れた人々の声が重なっていた。そこに立つ一人一人が、それぞれの目的と暮らしを持っているのだと思うと、目の前の景色はますます広く感じられる。


 招待状の文字だった世界が、いまは巨大な建物と人の群れとして目の前に広がっていた。リゼルヴェートはようやく、自分たちが世界の中心へ踏み込むのだと実感した。





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