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第六話 異変の原因

私はゆっくりと右手を前へ掲げた。


魔力が静かに周囲へ広がっていく。


「それじゃあ――始めようか。」


火炎龍は低く唸り声を上げる。


グルルルルル……。


その黄金の瞳は、一瞬たりとも私から逸れない。


さっきまで獲物を見るような目だった。


けれど今は違う。


目の前にいるのは、自分を脅かす"敵"だと理解したようだった。


「賢いね。」


思わず小さく笑みがこぼれる。


「でも、それだけじゃ私には勝てないよ。」


次の瞬間。


ドンッ!!


地面を砕きながらドラゴンが一直線に突っ込んできた。


その巨体とは思えないほどの速度。


普通の探索者なら、姿を捉えることすらできないだろう。


しかし。


「遅い。」


私は半歩だけ横へずれた。


ゴォォォォォッ!!


巨大な爪が空を裂く。


私の髪を数本かすめるだけで、その一撃は空振りに終わった。


「なっ……」


後方で見ていた楓が息を呑む。


ドラゴンは勢い余って壁へ激突した。


ズガァァァァァン!!


ダンジョン全体が揺れるほどの轟音。


岩壁には巨大な亀裂が走る。


だが私は傷一つない。


「力はある。」


私はドラゴンを見つめながら呟く。


「でも、動きが単調。」


ドラゴンが咆哮を上げる。


「GAAAAAAAAAAAAAA!!」


怒りに任せ、口の奥へ灼熱の炎を集め始める。


「またブレス?」


私はため息をついた。


「だったら――」


右手を軽く振る。


「魔力障壁」


パリン――。


薄いガラスのような光の壁が一枚だけ現れる。


次の瞬間。


ゴォォォォォォォォォォォッ!!!


灼熱のブレスが光の壁へ直撃した。


コメント欄も騒然となる。


:終わった!!


:避けろ!!


:無理だ!!


:そんな壁一枚で防げるわけ――


しかし。


ジュゥゥゥ……


「……え?」


ブレスは壁に触れた瞬間、その勢いを完全に失った。


炎はまるで吸い込まれるように消えていく。


一歩たりとも、私の元へ届くことはなかった。


:は?


:消えた……?


:防いだ……じゃない。


:消した。


:なんだ今の魔法……


:Sランクってこんなのなのかよ……


私は小さく肩をすくめる。


「うーん。」


「この程度なら魔法を使う必要もなかったかな。」


ドラゴンの額に青筋が浮かぶ。


怒り任せに再び咆哮を上げた。


その姿を見て、私は静かに魔力を練り上げる。


「じゃあ今度は私の番。」


そう呟いた瞬間。


ダンジョン全体の空気が、一変した。


ドラゴンは怒りに満ちた咆哮を上げる。


「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!」


轟音がダンジョン中へ響き渡り、天井から砂や小石がぱらぱらと降り注ぐ。


「怒らせちゃったかな?」


私は苦笑しながら首を傾げる。


しかしドラゴンは答える代わりに、その巨大な翼を力強く羽ばたかせた。


ドォォォォン!!


暴風が吹き荒れ、木々が根元からへし折れていく。


そのまま巨体とは思えない速度で私との距離を一瞬で詰めた。


鋭い爪が、私の首元へ振り下ろされる。


だが――


「だから、遅いって。」


私は魔力で棒状の何かを作り出し、それで受け止めた。


ギィィィィィン!!


甲高い音が響き、ドラゴンの巨体が止まった。


「なっ……」


離れた場所から見ていた楓が思わず声を漏らす。


配信のコメント欄も一瞬止まり――次の瞬間、一気に流れ始めた。


:は?


:止めた?


:いやいやいやいや


<神代凛>


:相変わらず規格外だねぇ。


<氷室蓮>


:あいつ、本気の一割も出してないぞ。


:え???


:今ので本気じゃないの!?


:Sランク怖すぎる……


私はその状態のまま、小さくため息をついた。


「あなた、本当はもっと強いはずだよね?」


「こんなDランクダンジョンに現れる存在じゃない。」


ドラゴンの瞳が揺れる。


まるで図星を突かれたかのように。


「やっぱり。」


私は静かに笑った。


「誰かに無理やり転移させられたんだ。」


その瞬間だった。


ドラゴンの首筋に、金色の紋章が浮かび上がる。


「……あれは。」


見たことのない紋様。


しかし、どこかで見たことがある色。


「ああ、そういうこと。」


「あなた、アレに命令されて強制的に転移させられたんでしょ。」


全部納得したわ。やっぱりアイツ頭おかしいんじゃねぇの?具体的には前世の俺と同じくらいに。言いたいことがあれば直接言ってこればいいのに、わざわざこいつを経由するとか。


「安心して。今からあのダ女神のもとに送り返してあげる。」

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