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悪の根城に忍び込む

「またこれを使うことになるとはね」


 私は両方の拳装着したオープンフィンガーグローブを撫でる。総合格闘技で使われる指の自由なグローブは、ナックルパートに石膏が流し込んである。


 最初にこのグローブを使ったのは、吾妻タツという迷惑系配信者に菜々さんが攫われた時だった。志崎と一緒に菜々さんを助けるために半グレたちを相手に大暴れしたんだよね。


 でも、今回は志崎を呼んでいる場合じゃない。助けが来るまで待っていたら、琴音ちゃんがどんな目に遭うか分からない。それに今度の相手は現役半グレの悪人だ。サウザント・ペイバックは表面上解散したことになっているみたいだけど、悪人なんてちょっと放っておけばまた集まって悪さをすると相場が決まっている。


 志崎にはとりあえず「これからカチコミに行ってくるから明日になっても私から連絡が無ければ警察に通報して」と伝えてある。というか、一方的にLINEだけ送ってその後は知らない。


 スマホの地図アプリで、鬼塚の指定した場所へと向かって行く。正直、地図を見るのは苦手だ。前世の試合で会場に辿り着けず、試合放棄とみなされかけたことがあったぐらいだし。


 ネットで調べた鬼塚の施設は、OLや若い女性をメインターゲットにしたフィットネスジムだった。反社のくせに、色々とごまかしが上手いせいでものすごく大手の企業家がやっているジムに見える。「健康とフューチャーブライトな人生を」とキャッチコピーが表示されている。いちいちうさんくさい。


 なにがフューチャーブライトだ。本当のところは未来のハゲだからそう呼ばれているだけのくせに。


 私は夜の街を歩きながら怒りを燻ぶらせていた。歩きながらシャドウをして、時々すれ違う人々をビビらせる。考えたらそれもそうか。いくら私が美少女とはいえ、オープンフィンガーグローブを嵌めた少女が歩きながらシャドウボクシングをしていたら異様な光景に決まっている。


 さすがに制服で行くのもおかしいだろと思ったのでジャージを着て家を出たけど、夜も遅いし色々とツッコミどころがある。


 警官に見つかったら補導されちゃうなと思っていると、上手いこと誰にも見つからずに目的のジムへと辿り着いた。深夜のせいか、明かりが消えている。


 あのハゲに呼ばれてはいるものの「今着いたよ」なんてメッセージを送れば、待ち構える半グレの集団に襲われる可能性が高い。そうなると忍び込む形で施設に入るしかなくなる。まあ、呼ばれているわけだし、不法侵入にはならないだろう。


 正面玄関の大げさな両開き扉はどう見ても開いているようには見えなかったので、裏口が無いか回りこんで探してみる。予想通りというか、関係者専用の小さな入口があった。ドアのレバーにゆっくりと手をかけると、鍵は掛かっていないようだった。息を殺して、音を立てないようにしながらレバーを回していく。


 真っ暗なジムに入ると、音を立てないようにしながら手探りで前へ進んでいく。暗くてよく分からないけど、無駄に広いのだけは分かった。この広大なジムも、国際ロマンス詐欺をはじめとしたろくでもない「ビジネス」で手に入れたのかと思うと腹が立ってきた。


 さあ、覚悟しなさいよ。このまま鬼塚を見つけて、気付かれる前に背後からボコボコにしてやるんだから。と、その時――


「うわっ」


 急にジムの明かりがついた。私は驚いて、思わず声を上げてしまった。


 さっきまで真っ暗な中にいたので、目が光に慣れておらず眩しさに目を細める。ふと視界の端を妙なものがかすめて、そちらの方に振り向いた。


「うっわ、最悪」


 私は目の前に映る光景を見て思わずこぼした。


「待ってたぜ。お嬢ちゃん」


 目の前に立ち並ぶのは、鬼塚の手下と思われる武装した半グレたちだった。

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