その感情の名は
昨日投稿しようと思ったのですが、いつの間にか日付が変わっていました。
余裕をもって書けるようになりたいです。
「───で?お前は何そんな死にそうな顔してるわけ?」
「……別に、そんなことは無い」
「嘘でしょ。本当に大丈夫なら、アレスはここまで付いて来ない」
「……」
ヴィオレットが去っていった後、教室に戻った俺はフィサリスに連れ出されていた。ちなみに、ちょうど本鈴が鳴ったところだ。
確かに普段の俺なら、授業を無断で欠席したりしない。ただしそれ以前に、表情に出ていたとは思わなかった。フィサリスの言う“死にそうな顔”をした覚えは無かったのだが。
「……ヴィオレットに、逃げられた」
「は?マジで?」
「…ああ」
「え、何があったわけ?」
俺は先程あったことを、己が理解している限り全てを話した。俺が話していくうちに、フィサリスは段々と何とも言えない表情になった。
「…あー、うん。それは…」
「俺は、どうしたら良い」
フィサリスらしくない煮え切らない口調だったが、それを振り切るように真剣な表情で俺の目を見てきた。
「オレにどうしたら良いか訊かれてもね…。…なあ、そもそもお前はどうしたいんだ?」
「どうしたいか、とは?」
「この前も聞いただろ?ヴィオレット様のこと、どう思ってるかって」
「……俺は」
(俺は、どうしたいんだ…?)
近頃の俺はおかしい。ヴィオレットでなくとも、俺の婚約者候補ならいるのだ。わざわざ彼女に拘る必要はない。
それなのに、俺は隣にヴィオレット以外の女が並ぶ姿が、如何にも想像出来なかった。
何が俺の心をここまで掴んでいるのかは、わからない。それでも、ヴィオレットに近付こうとする自分がいることは、事実だった。
「…わからない。わからないが、ヴィオレットに改めて婚約解消して欲しいと言われて、引き止めたい、と思った」
「そっか。じゃあ、アレスはこのままで良いわけ?」
「良い、筈が無いだろう。…だが、」
「だが?」
「ヴィオレットは苦しいと、耐えられないと、言っていた」
そうだ。俺が何を思おうと、彼女が苦しいと口にして、涙を溢したのだ。既に、俺の意思のみでどうにか出来る問題では無くなっていた。
ヴィオレットの涙を思い出し、微かに胸に痛みを感じた気がした。そんな俺に、フィサリスがふと思ってもみなかったことを告げた。
「…それだけどさ、ヴィオレット様は、何が耐えられないって言ったんだ?」
「そういえば、聞いていないな」
「だったら、それをちゃんと聞いてからでも遅くないんじゃないか?」
「は…?」
「結局のところ、アレスはヴィオレット様が何を苦しんでいるのか、わからないんだろ?だから、もう一度話すべきだ」
「…だが」
そう言われても、彼女を苦しめているのはきっと俺だ。
俺は、ヴィオレットが泣いたのを初めて見たのだ。俺の知っている彼女は、自信に満ちた顔か、年相応な愛らしい表情をしていた。俺が知らない間に、ヴィオレットを傷付けていたのは明らかだろう。
「あーもう、お前面倒だな?どんだけ逃げられたこと気にしてんだよ」
「別にそういう訳では」
「お前がこんなに悩んでるのって珍しいよ。オレらがよっぽどヴィオレット様は特別なんだな、って思うぐらいにはな」
「とく、べつ…」
「逆に違うわけ?あれで?」
───ああ、そうか。やっと、わかった。
俺が気にしてしまうのも、心が掴まれるのも、胸が痛むのも。彼女が特別で、大切なかけがえのない存在になっていたからだ。
俺はいつの間にか、ヴィオレットを───。
彼女に、恋をしていたんだ。
失った後に大切なものに気付くことってありますよね。本当に大切なら、あとは必死に取り返すしかないです。
書きながらありきたりかな、と思いましたが、私はこういうのが好きなんですよ。皆様もそうだったら良いのですが…。
私としては今回頑張ったので、誰か褒めて下さい…!!




