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22/25

その感情の名は

昨日投稿しようと思ったのですが、いつの間にか日付が変わっていました。

余裕をもって書けるようになりたいです。

「───で?お前は何そんな死にそうな顔してるわけ?」

「……別に、そんなことは無い」

「嘘でしょ。本当に大丈夫なら、アレスはここまで付いて来ない」

「……」


 ヴィオレットが去っていった後、教室に戻った俺はフィサリスに連れ出されていた。ちなみに、ちょうど本鈴が鳴ったところだ。

 確かに普段の俺なら、授業を無断で欠席したりしない。ただしそれ以前に、表情に出ていたとは思わなかった。フィサリスの言う“死にそうな顔”をした覚えは無かったのだが。


「……ヴィオレットに、逃げられた」

「は?マジで?」

「…ああ」

「え、何があったわけ?」


 俺は先程あったことを、己が理解している限り全てを話した。俺が話していくうちに、フィサリスは段々と何とも言えない表情になった。


「…あー、うん。それは…」

「俺は、どうしたら良い」


 フィサリスらしくない煮え切らない口調だったが、それを振り切るように真剣な表情で俺の目を見てきた。


「オレにどうしたら良いか訊かれてもね…。…なあ、そもそもお前はどうしたいんだ?」

「どうしたいか、とは?」

「この前も聞いただろ?ヴィオレット様のこと、どう思ってるかって」

「……俺は」


 (俺は、どうしたいんだ…?)


 近頃の俺はおかしい。ヴィオレットでなくとも、俺の婚約者候補ならいるのだ。わざわざ彼女に拘る必要はない。

 それなのに、俺は隣にヴィオレット以外の女が並ぶ姿が、如何にも想像出来なかった。


 何が俺の心をここまで掴んでいるのかは、わからない。それでも、ヴィオレットに近付こうとする自分がいることは、事実だった。


「…わからない。わからないが、ヴィオレットに改めて婚約解消して欲しいと言われて、引き止めたい、と思った」

「そっか。じゃあ、アレスはこのままで良いわけ?」

「良い、筈が無いだろう。…だが、」

「だが?」

「ヴィオレットは苦しいと、耐えられないと、言っていた」


 そうだ。俺が何を思おうと、彼女が苦しいと口にして、涙を溢したのだ。既に、俺の意思のみでどうにか出来る問題では無くなっていた。


 ヴィオレットの涙を思い出し、微かに胸に痛みを感じた気がした。そんな俺に、フィサリスがふと思ってもみなかったことを告げた。


「…それだけどさ、ヴィオレット様は、何が耐えられないって言ったんだ?」

「そういえば、聞いていないな」

「だったら、それをちゃんと聞いてからでも遅くないんじゃないか?」

「は…?」

「結局のところ、アレスはヴィオレット様が何を苦しんでいるのか、わからないんだろ?だから、もう一度話すべきだ」

「…だが」


 そう言われても、彼女を苦しめているのはきっと俺だ。

 俺は、ヴィオレットが泣いたのを初めて見たのだ。俺の知っている彼女は、自信に満ちた顔か、年相応な愛らしい表情をしていた。俺が知らない間に、ヴィオレットを傷付けていたのは明らかだろう。


「あーもう、お前面倒だな?どんだけ逃げられたこと気にしてんだよ」

「別にそういう訳では」

「お前がこんなに悩んでるのって珍しいよ。オレらがよっぽどヴィオレット様は特別なんだな、って思うぐらいにはな」

「とく、べつ…」

「逆に違うわけ?あれで?」


 ───ああ、そうか。やっと、わかった。


 俺が気にしてしまうのも、心が掴まれるのも、胸が痛むのも。彼女が特別で、大切なかけがえのない存在になっていたからだ。


 俺はいつの間にか、ヴィオレットを───。


 彼女に、恋をしていたんだ。

失った後に大切なものに気付くことってありますよね。本当に大切なら、あとは必死に取り返すしかないです。

書きながらありきたりかな、と思いましたが、私はこういうのが好きなんですよ。皆様もそうだったら良いのですが…。

私としては今回頑張ったので、誰か褒めて下さい…!!

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