苦しくて、耐えられないから
私がネタ切れで困っていた間に、ブックマーク登録が100件超えていました…!
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物語も佳境に入ってきました。最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
「───だから、待てと言っているんだが?」
耳に届いた声に、驚きを隠せなかった。
(どうして、わざわざ…)
手首を少し強く掴まれていた。いつもと変わらない声。すぐ側にそれがあると思うと、また泣きそうになってしまう。
姿を見なくたって、わかってしまう。前世からずっと焦がれてきたのだから。その声が、気配が、掴まれた手の感触が、彼以外の誰でもないことを私に伝えている。
足は止めざるを得なかったが、振り向く必要はないだろう。顔を見てしまえば、何を口にするかわからない。きっと目元は赤くなってしまっているし、そんなところを見られたくはないのだ。
「……殿下。どうしてこちらに?」
「そんなことよりも、何故、お前は泣いている?」
「え……」
(まさか、あの距離で気付いていたの?)
どうして、と問い掛けたい気持ちでいっぱいだったが、胸中の動揺を悟らせないよう、落ち着いた声を意識して答えた。
「…泣いてなどいませんわ。見間違いでは?」
「本当に?」
「……ええ」
きっと私の虚勢など、見抜かれているのだろう。それでも、泣いていたなどと言えるはずがないのだ。
これは、私の矜持だ。
その時、手首を掴まれた感覚が緩んだ。それに気付いた時には、アレス様の紅い瞳に目を見開いた私の顔が映っていた。
「…目元が赤くなっている」
「そんなこと、ないです」
「何があった?」
アレス様は、私の否定の言葉など端から信じていないようで、聞き流して再び質問を重ねた。
「何もありません。私は大丈夫です」
「いつもと様子が違う」
「……」
(…なんで、なんでそんなこと、わかるの…?)
どうせ私のことなんて何とも思っていないくせに、どうしてこの人は気付いてしまうのだろうか。そんなことに気が付かないで、気にしないでいてくれれば良かったのに。
…これでは私が、勝手に期待して、勝手に傷付いてしまうだけではないか。
「何か、困っていることでも───」
「───婚約解消、していただけますか」
「…!どうして…」
もう、限界だった。
これ以上優しくされたら、愛されていないことを理解していても、余計に離れ難くなってしまう。アレス様には、悪役令嬢の私よりもお似合いの人がいるとわかっているのに。
……本当は、気に掛けてくれて嬉しかった。でも、それ以上に苦しかった。
あのゲームのシナリオとは大分違っている。だから、私が断罪されることは無いのかもしれない。
それでも、好きな人の隣にいることが出来ても、愛されることがないのは苦しい。私は、嫌だ。だから───。
「……もう、苦しくて、耐えられないです。…失礼します」
「あ、おい、ヴィオレット!」
……ああ、また涙が溢れてきた。
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