涙
リーリアとのお泊りから数日後。私は平穏な日々を取り戻していた。
平穏ではあったものの、ひとつだけ問題があった。
どうしても、何処か自分に対して何とも形容し難い想いを抱いてしまい、またしてもアレス様と話せなくなっていたのだ。
ここ数日は適当な理由をつけ、リーリアと二人で昼食をとっていた。前までのように四人で過ごして、自分が空気を悪くしてしまうのが嫌だった。
今はきっと、顔を合わせない方が良い。
今は、午前の授業が終わってすぐに何処かへ姿を消してしまったリーリアを探していたのだが、一向に見つからない。
「あの子、どこへ行ったのかしら…。お昼食べ損ねちゃうじゃない」
あと他に探していない場所といえば、図書館の方くらいである。少し学舎と離れているので、面倒でまだ訪れていなかった。
(図書館にもいなかったら、さすがに諦めるしかないわね)
私は足早に図書館へと向かった。
◇◇◇
図書館と学舎の間にある渡り廊下に差し掛かった頃、見慣れたビスケット色のストレートヘアが目に入った。
「…あ、リーリア───」
私の言葉は途中からだんだんと小さくなっていった。近付いていくうちに、リーリアの陰で見えなかったもう一人の人物の横顔が見えてしまったから。
(……!?アレス、様…?)
リーリアとアレス様が二人で話していた。互いに笑みを浮かべて。
リーリアが笑顔なのはいつものことだが、アレス様が微笑んでいるのは珍しかった。いや、私は彼のあんなに優しい瞳は、初めて見た。
(……知っていたけれど、やっぱり、私じゃ無理なのよ)
わかっていた。それでも、少しの期待を捨てきれなかった。リーリアがアレス様のことを何とも思っていないと知ってからは、なおさら。
だが、そんなことは関係なかったのだ。相手の気持ちがどうであれ、人は自分が想いを抱くのを止められるわけではない。
アレス様がリーリアを好きになることだってあり得ると、本当は理解していた。
「……ふふ。可愛いヒロインと、攻略対象の王子様。二人が並ぶと、本当にお似合いだわ」
画面越しに、こんな光景を見るのが好きだった。私はずっと、この世界でもこの光景を見たい、と思っていたはずなのに───。
実際に目の当たりにした私の瞳からは、一筋の涙が零れ落ちていた。
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