見間違い?
(私、なんで一緒に行くって言ったのかしら……)
斜め前を歩く殿下と、繋がれた手を交互に見つめ、少し後悔していた。
◇◇◇
「…ヴィオレット、行くぞ」
「え?あ、はい」
(……待って、まだ心の準備が出来てないのだけど!?)
…実は昨日、ほとんど眠れなかったのだ。
いくら自分の破滅フラグだとしても、前世で愛してやまなかった推しとのデートだ。緊張するし、楽しみに決まっている。
しかも、前世をあわせてもこれが初デートなのだ。
今も平静を保っているように見せているが、内心ずっと気が気でない。それでも殿下の後に続いて歩き始める。
(ゲームではこんなイベント、あり得なかったのに…。どう対応したらいいの!?)
頭の中でぐるぐると考えていると、いつの間にか学院の門まで来ていた。そこまで一度も振り返らずに歩いていた殿下が、私の方を向いた。
「……手、出せ」
「?これで良いです、か…っ!?」
手を、握られた。
予想もしていなかったことだったから、驚いて殿下の顔を見上げる。
殿下はいつもと同じような不愛想な表情で、私を見ている。彼のいつも通りの顔を見ると、私も冷静になってきた。
(そうよね、ただのエスコートよね…。貴族なら当たり前のことだわ)
そう自分に言い聞かせ、胸の鼓動を落ち着かせようとした。あまり効果はなかった。
……すぐにまた歩き出した殿下の頬が、微かに赤く見えたのは私の見間違いだろうか。
…こういうの、憧れません?
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