結局、勝てない。
新作書き始めたので、よろしければそちらもご覧ください!
あれから私は、かなり平和な日々を送っていた。…ある一点を除いて。
「リーリア、明日は暇かしら?一緒に行きたい所があるの!」
「ごめんなさい。明日は約束があって…」
「そうなの?残念だわ…」
お気に入りのお店で明日限定のスイーツがあったので食べたかったのだが、どうやらお預けのようだ。
今世の私は、これでも公爵令嬢なので、一人で食べに行く訳にもいかない。わざわざ護衛を頼むのも申し訳ない。
楽しみにしていたスイーツを食べられないと落胆する私に、リーリアが一点の曇りもない笑顔でさらりと言った。
「でしたら、殿下と食べに行かれたらいかがですか?」
「え!?ど、どうして殿下と?」
「だって、婚約者じゃないですか。一緒にお出掛けされても問題ないですよ?」
「だから、殿下は婚約者じゃない……」
「───二人とも、何の話をしているの?」
リーリアの言葉を否定しようとした私の耳に、悪魔の声が聞こえた。
恐る恐る振り向くと、思った通り、今日もフィサリスと殿下が立っていた。あれから何故か、四人で昼食をとることになっているのだ。
「…別になんでもないわ」
「えー、本当に?…ね、リーリアちゃん、実際のところどうなの?」
「えっと、ヴィオレット様とスイーツの話をしていて…。明日限定だそうで」
「そうなんだ?じゃあ、オレらも行ってみる?」
「はい!行ってみたいです!」
話の流れから察するに、リーリアの明日の約束の相手は、フィサリスなのだろうか。
「…ねえ、もしかして二人って、明日一緒に出掛けるの?」
「はい、そうですよ」
「そう、リーリアちゃんとデート!」
少し表現に違いはあるが、間違っていないらしい。
この二人、どこか気が合うのか最近仲良さげに話しているのを見かける。最初はフィサリスにリーリアが押され気味だったが、今ではリーリアも楽しそうだ。
ちなみに、フィサリスがデート、と口にした瞬間、リーリアの顔が真っ赤に染まった。本当に可愛らしくて羨ましい。
微笑ましく思って見ていると、今まで黙っていた殿下が私に話しかけてきた。
「ヴィオレットもその菓子、食べたいのか?」
「ええ。でも、無理そうなので諦めるしかないですね」
「だったら、俺と……」
「え?」
殿下が何かを言いかけ、固まってしまった。そして、そのまま私から目を逸らす。
(…何が言いたいのかしら?)
最後まで言ってもらわないとわからない。首を傾げそのまま待っていても、殿下はそれ以上何も言わない。…本当に何か言ってほしい。
「ヴィオレット様、せっかくなのでアレスと行ったらどうです?」
殿下にどこか憐れんだ視線を送りながら、フィサリスが言う。さっきまでリーリアと笑顔で話していたのに、こちらの様子も伺っていたのだろうか。
「殿下も忙しいでしょうから、大丈夫です」
「いや、俺は暇だ」
さすがに二人きりは色々な意味で無理なので断ろうとしたら、何故か殿下がわざわざ暇だと言う。
「じゃあ、マジで一緒に行けばいいじゃん」
(…余計なことを言わないで!)
フィサリスを睨んでみたが、気付く様子がない。もしくは、気付いた上で無視しているのか。
「ヴィオレット。…その、一緒に食べに行かないか」
「ええっと……」
食べたかったスイーツに推しとのデート。そして、ゲームの婚約破棄の場面を頭に思い浮かべて。
「……行きます」
結局、欲望に打ち勝てなかった私は、殿下と出掛けることになった。
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