魔人襲来のようですよ?
「エチカ?ほら、いくよ?」
いつの間にかウィズさんが戻っており、シンの援護をする準備が整っていた。
未だ、自己嫌悪の渦から抜け出せていなかった私の意識がリンにより強制的に呼び戻される。
「あ、はい。……え?皆さん、警戒してください!」
みんながとっさに武器を構え警戒態勢をとる。
「エチカ、どうしたの?」
エリンが警戒態勢をとったまま私に理由を問う。
「気づいてますか?戦闘音が止みました。それに誰かがこちらに向かってきている足音がします」
「えっと、シンではないのですか?」
「……シンのにおいじゃない…です」
私の発した言葉はシンが負けてしまったことを表す言葉であった。
その場の空気が一気に重くなり、迫ってきている足音が鮮明に聞こえるようになるほど静まり返る。
やがて、その足音はちょうど私たちのいる部屋の手前で止まり、ゆっくりとドアが開き始める。
「「天より来たる風の精よ、わが魔力を糧に敵を押し潰せ。『エアプレッシャー』」」
ドアが開ききった矢先、エリンとウィズさんの二人による魔法が放たれるもそこに魔人の姿はなかった。
「もー危ないなぁ。いきなり仕掛けてくるなんて」
魔人は扉の影に身を隠し、魔法を躱していたようだった。
「…シンはどうしたのですか?」
「あの面白いの?あれなら今頃赤髪と同じようになってるんじゃない?だって僕の『ブレイク・マインド』をまともにくらっちゃったし」
「ブレイク……マインド。嘘、でしょ?」
「お?そっちの水色の子は知ってるみたいだね。そうそう、他人の言葉に従順にさせたり、理性だけを壊して本能のままに動く獣のようにさせたり、廃人のようにさせたり出来る魔法」
魔人は笑いながら得意気に魔法の効果を説明してくる。
その態度に今すぐ魔人の体を切り裂き、殺したい衝動に駆られるがここにいる全員で全力を尽くしても勝てるかどうか分からないような敵だ。
冷静に、冷静に。と心の中で何度も衝動を押さえつける。
皆とアイコンタクトをとる。
魔人に攻撃を仕掛け、シンを取り戻すようだ。
そうして、リンが飛び出しかけたその時だった。
魔人がこちらに向かって動き出した。
正確に言えば吹き飛んだ。
魔人がいた場所に佇んでいたのは変わり果てたシンの姿だった。
シンは全身が黒に染まっていた。
その黒色の腕からは白い鎌のようなものが生えており、背中からは先ほどより一回り大きな漆黒の翼が生えている。
その目は虚ろで焦点があっていないようだ。
「シン……?」
思わず呟いた私の言葉に返事が帰ってくることは無かった。




