憤慨しているようですよ?
ふざけんなよ!
なんで勇者が負けてるんだ!?
これじゃあ、勇者パーティーに入った意味がほぼ無いじゃねーかよ!
俺は無性にイライラして宿にある机を力任せに蹴り飛ばす。
当然、物にあたってもイライラが無くなることはなく、そこに残るのは机だったものの残骸だけだ。
先程の光景を思い出すだけで辺りはまだ明るいのに酒を飲みたくなってくる。
……勇者は決して弱くはない。
昨日の時点で俺と手合わせしたがさすがに技量があるため負けはしなかったものの危ないところが多かった。
勇者の身体機能は既に人族から突出し始めている。
なのに、シンのやつはその攻撃を軽々と受け流し、なんだったら魔法は止めることすらなく正面から受けやがった。
あいつはあんなに強かったのか?
いや、確かにあいつが攻撃をくらって重症になっているところなんて見た事ないが、それはアリアの回復があっての事だと思っていた。
それは間違いで、実はアリアの回復なんてそこまで要らなかったということか?
なら、余計にアリアとウィズはこっちに残しておいてくれてもいいじゃねーかよ。
あいつは人族の領域を逸脱した勇者の身体機能に軽々と対応していた。
ならば、あいつは何者なんだ?
俺たちと年は同じなら先代勇者パーティーに入っていたわけでもなく、人族の限界を超えられるのか?
というか、少し前にも変なことがあった気がする。
火竜討伐の際、俺は前線に出ていていたため直接見た訳では無いが、後衛に向けてブレスが放たれたときにものすごい爆発音がしたはずなのに後衛に微塵の被害もなかった。
討伐が終わったあと、ほかの皆からシンがブレスを一人で止めたと聞いたが、さすがにそれはないと信じていなかった。
火竜のブレスといったら一息で小さな町なら跡形もなくなってしまうぐらいの火力だ。
それを一人で受け止めるなんて人族が出来ることじゃない。
はぁ……今はシンの実力とかじゃなくどうやってアリアとウィズを連れ戻すか、だな。
アリアとウィズがシンに惚れているのはもう確実と言っていいだろう。
正攻法はもう無理だろう。
ならば、アリアとウィズを攫う……とかか?
まぁ、それぐらいしかないか。
もう一つ、シンを殺す方法は今日の決闘を見る限り難しそうだからな。
勇者は明日にでも王都へ向かうだろう。
勇者もアリアとウィズを完全に諦めたわけじゃないなら協力してくれるかもしれない。
「ギリーさん?なにニヤけているんですか?」
「いや、なんでもねぇよ。ルミナス」
ルミナスを適当に誤魔化し、とりあえず俺は勇者の部屋へ向かう。




