御要求のお時間のようですよ?
「……しかたない。アリアさんとウィズさんのことは今回は諦めます。でもいつか絶対取り返しにきますからね!」
勇者はそう言い残しこの場を立ち去ろうとするため、俺は慌てて勇者の肩を掴む。
「なんですか?」
「いや、なに立ち去ろうとしてるんだ?」
「あなたとの決闘に負けたんですから、今回はアリアさんとウィズさんを仲間にするのは諦めました。それでもうこの場にいる理由はないでしょ?」
俺もエリンに耳打ちされるまで何も気づかなかったんだがな。
まぁ、知ったところで勇者に言うことはなかったんだが。
「そっちの賭けの対象をまだ支払ってないだろ?」
「はい?」
素っ頓狂な声をあげる勇者。
やはり、俺と同じで気づいてなかったようだが、賭けなら相互に賭けるものがあり、俺らはその対象をまだ言っていない。
「いや、それはアリアさんとウィズさんを俺が諦めるってことでは……?」
「それは元々諦めざるを得なかったものだろ。賭けの対象とは別だ」
「じゃ、じゃあなにを……?」
勇者はダラダラと冷や汗をかきながら戦闘中の時より顔を青くして俺の言葉を聞く。
「それじゃあこっちの要求は、この国にいる全エルフの解放、それにエルフの住まう森をエルフの国として不干渉でいることを国やその民に打診すること……でどうだ?」
勇者の発言力なら王様も無視は出来ないだろうし、エルフの国として認めるのはまだしも不干渉くらいには出来ると思う。
ただ、これは国中の貴族に敵を作ることになるし、もしかしたら王すらも敵に回るかもしれない。
難色を示すだろうが、受けてもらいたいんだが……
しかし、勇者の反応はそんな俺の予想を裏切るものだった。
「エルフってやっぱりいるんですか!?」
俺の言葉を聞いた瞬間の勇者の表情は真っ青の時とは一転して、一際輝いていた。
「お、おう。居るが色んな貴族が捕らえようとしていて、実際に捕まっている人も少なくないはずだ」
「そうかー、やっぱりそうなんですね。エルフと言ったらみんな美人の種族ですもんね。そりゃもう、薄い本のように――――」
勇者が何やら言っているが後半言っている内容の大半が理解に苦しむものだったので割愛する。
「まぁ、その様子を見れば大丈夫だと思うが、やってくれるんだよな?」
「もちろんですよ!綺麗な人を救わないなんて有り得ませんよ!」
「あ、あぁ。あともし説得に失敗したら国中のエルフ奪還と森に送り返すことも条件ってことで――――」
「オッケーです。それじゃあ早速王様に打診してきますね!」
勇者は足早にギリーとルミナスを連れてこの場を去っていった。
あの様子なら救ってはくれるだろうがその後が心配な気がするが……まぁ大丈夫だと信じたい。
というか、『やっぱり居るんですね』…か。
勇者は国の暗い部分は知らされてないようだ。
つまり、あいつは半分国のあやつり人形だった……という訳か。




