勇者に対して無双するようですよ?
「よく来ましたね、シンさん。今日の調子はどうですか?」
「まぁ、普通だが何故そんなことを?」
「そりゃもちろん、後で今日は調子が悪かったとか負け惜しみを言わせないためですよ」
どうやら俺は随分となめられているようだな。
まぁ、逆に有難いが。
これから行うのは勇者との決闘だ。
しかも、仲間がかかっている最低の条件で、だ。
当然、こちらも負けるつもりはない。
「そんなことを言うって言うことはそっちも調子は大丈夫なんだな?」
「もちろんですよ」
そうか、ならちょっと本気で勝ちにいってもいいよな。
そう思い、真剣に目の前の敵を叩き潰すことだけに集中する。
その瞬間、勇者の顔が青ざめ、恐怖に表情を歪ませた。
この程度で恐怖……か。
「どうした?もうかかってきていいんだぞ?」
そんな俺のわかり易い挑発に勇者はハッとしたように真っ直ぐこちらを見る。
表情にはいくらかの敵意が見えるが、基本的に浮かんでいる感情は恐怖だ。
勇者は突然駆け出し、俺に向けて切りかかってくる。
しかし、腰の入っていないその剣戟は受け流すのも躱すのも容易だ。
勇者の持つ聖剣は白銀に輝きを放ち、凄まじい切れ味を誇り、魔力や気に融和性が高い。
まさに救国の英雄が持つに相応しい剣だろう。
しかし、そんな剣を使っていても使う人がダメならその剣はなまくら以下だろう。
どんな剣も使う人によっては名剣にもなまくらにもなりうるということだ。
俺はそのなまくらに属する方の剣閃を剣の腹に盾を当てて軌道を変えることで対応する。
剣を持つ手を大きく外に弾かれた無防備な勇者をそのままの勢いで盾で殴りつける。
確かに勇者の身体の成長速度は早い。
しかし、技までは育たない。
剣技や体捌きは長年の経験によって培われるものだ。
勇者の拙い剣術では魔物相手ならまだしも人相手には通じない。
勇者が切りかかり、俺はそれを流したり躱したりしてカウンターに攻撃を放つ。
それを何度か繰り返したあと、突然勇者は立ち止まる。
「剣に宿りし光の精よ、我が魔力を糧に敵を滅せよ『シャインバーン』!」
なるほど、今度は魔法か。
そう思いながら、俺はその魔法を正面から受ける。
極光が体を包み、ジリジリと焼き焦がす。
「ふふっ、やった。やったぞ!これでアリアさんとウィズさんは―――」
「誰をやったって?」
火竜のブレスに比べたら人が出せる魔法なんて威力はそこが知れている。
勇者もまだそこまで育っていないようだし、余裕で耐えられる。
「それで、そろそろ降参してくれないかな?」
そう言いながら、呆然と立ち尽くす勇者に盾を向ける。
おそらくだがさっきの魔法が勇者の最大火力だったのだろう。
勇者は呆然としたまま、突っ立っている。
あれで最大火力なら、これ以上やる意味はないと思う。
正直、今の勇者相手なら盾すら必要なかったな。
「くっ……降参、です」
そうして、俺は勇者との決闘に勝ったのだった。




