アリアは心配のようですよ?
「本当に大丈夫なんですか?アリアさん」
そう言って私に問いかけてくるブラウンの髪をした少女は、どこか不満げな表情であった。
シンが勝負を受けた理由を考えていて、道中のことを覚えていないが、どうやら宿に戻ってきたようだ。
部屋にいるのは私とウィズ、それに私に質問してきた少女だけだ。
少女の名前は、リンといい、シンの所属しているパーティーのリーダーだ。
私とウィズがギリーのパーティーを抜け、シンのパーティーに入ろうとしたときに助け船を出してくれた子だ。
シンがリーダーだと思い、シンにギリーのパーティーを抜けた理由の説明を求められたとき、シンに本心を告白しようとしていたのだが、言いかけた瞬間にこの子に止められ、本当のリーダーを教えてもらったのだ。
もともと、そこまでの流れはウィズと話していたのだが、もし告白してもシンに想いを受け取ってもらえず、パーティーに入れてもらえない可能性が高かった。
たぶん、私たちはシンにそう言った意味で興味を持たれてないし、シンがこの気持ちに気づくことも、もしどこかで聞いたとしても信じることもないでしょう。
シンは誰もが自分に優しく、どこか都合のいい存在でいてくれるのを信じている節がある。
だから、冒険者としての活動に恋愛というお荷物はいらないから、私たちの気持ちに気づかない。
いや、もしかしたら気づいたうえで見て見ぬふりをしているのかどちらかだ……
「エチカもエリンも私に何も教えてくれないし……アリアさん?聞いてますか?」
「え?……あぁ、はい。聞いてますよ」
なにかリンが話していたようだが正直なところ、ほとんど頭に入っていなかった。
ウィズも私と同じように会話に参加することなく、上の空だったようだ。
自分の好きな人のところに留まれるかどうかがかかっているのだから当たり前だろう
シンと勇者の勝負の内容は一騎打ち。
先に敗北を認めるか、戦闘不能にすれば勝ち。
もしシンが一騎打ちに負けた場合は私とウィズは勇者パーティーに入る。
勝負の日はわざとらしく日を跨いだ一週間後。
つまり、その間に勇者の異常な成長速度でシンの強さまで追いつくという算段なのでしょう。
そもそも、勝利条件がタンク役には厳しいため、それも加味して条件を出したのでしょう。
しかし、相手がいくら勇者だろうと、シンが不利なルールだろうと、シンが本気で戦ってくれるなら当然のようにシンが勝つでしょう。
私が心配しているのはシンが勝負を受けた理由。
シンが勝負を受ける前にあのローブを被っている女性、エリンがシンに耳打ちをしていた。
シンは嘘をつき、騙すことが出来ない、というか思いつかない人だ。
つまり、思いついてそれが良案だったら実行する可能性もある…と思う。
エリンは私達の前でローブを取ったことがない。
まぁ、何か訳ありなのでしょうが、おそらく、信用されてないし邪魔者だと思っているのでしょう。
もし、シンが勝負を受けた理由が私たちを追い出すためなら……
「アリア、考えすぎ。……きっと、大丈夫」
いつの間にか私の手を取っていたウィズの表情も優れない。
しかし、その形だけの言葉でも今の私を若干安心させた。
そうだよね。きっと大丈夫。
シンが私達を追い出すはずがない。
そう確証のない言葉を自分に言い聞かせ、ウィズの手を握り返した。




