風の暴力のようですよ?
「んじゃ、ちょっとお掃除しようか?」
パズ・サヴォーディがその圧倒的な魔力を開放し、荒れ狂う暴風を生み出す。
膨大な魔力によって生み出された暴風は辺り一面の魔物を吹き飛ばす。
カイル達は直接風をぶつけられたわけではないが、風の余波に体を持っていかれこの場から離れてしまう。
しかし、俺の周りには風は捲き起こらず、それどころかそよ風だって来ない。
パズ・サヴォーディの魔力だけでなく制御能力も高い証拠だ。
元々、魔族という種族は人には持ちえないほどの魔力量と高い身体能力を誇る。
見た目も大して人族と変わらず、寿命も特別長い。
人型の種族で寿命が百年を超えているのはエルフと魔族だけだ。
また、魔王が生まれるのは魔族だけであり、勇者が生まれるのも人族だけだ。
そんな事情もあり、魔族は人族を下等種族と見下し、敵対している。
「これくらい広ければいいよね?早くやろっ!」
そんなことを言ったそばから返事を待たずに暴風が俺に襲い掛かる。
魔族が起こしたのは魔法ではなく、現象だ。
魔族の魔力は魔力の状態で属性を帯びているため、詠唱を使わず、直接影響をもたらす。
それを俺は正面から盾で受け止めようとするが風の勢いに押され、体勢を崩される。
俺はすぐに立て直すが、そんな隙を見逃すはずもなく、無数の風の刃が襲い掛かる。
急所は盾で何とか守ってはいたがすべてを守り切る事は叶わず、体のあちこちに切り傷が入り、血がにじむ。
そうしてできた傷を気にしている暇もないほどに風による攻撃は激しく、また不可視の刃を抑えることに集中し続けることは難しい。
恐らく戦闘を始めてから経過した時間は五分もないが既に俺は体中の皮膚という皮膚を裂かれ、血が流れ出ていき、意識がもうろうとしていた。
「あれー?こんなもん?成長前の勇者だし弱くてもしょうがないのかなぁ?」
「こんなもんで悪かったな」
俺は飛びかける意識を無理やり抑え、立ち上がり盾を構える。
辺りは巻き起こる暴風によって地面がえぐれ、半球型になっている。
「まだ、立てるのか―。でももう楽しめなさそうだしなー。殺しちゃってもいいよね?」
その言葉を皮切りに辺りに濃密な魔力が漏れ出し、巨大な黒い竜巻を形作っていく。
こうしてそばにいるだけで引きずり込まれそうになるほどの強力な風が渦巻いている。
あの中に入れば、切り傷どころで終わるわけなく、体中をバラバラに切り刻まれるだろう。
俺は覚悟を決め、竜巻を抑えようとする。
覚悟と言っても死ぬ覚悟ではないが…
俺が竜巻を受け止めるために腰を低くし身構えた時、唐突に竜巻が形を崩し、霧散する。
「シン!大丈夫ですかっ!?」
その声はよく聞いた声――――
後ろを振り向くと居るのはアリアにウィズといったギリーのパーティーのメンバーだ。
俺はどうやら耐えきったみたいだ。




