落雷・3
そりゃあ、珍しい例ですよ。稀有な例ですよ。
現場を見ましたが、高低差こそありますが直線距離では二十メートルも離れていませんからね。古墳だか何だかと、お宮が同時に被災したのは、まあわからないでもないです。雷球が地面を走ることはありますのでね。
これが当日の、この地方の天気図なんですが。ここにあるこの台風の影響でですな、こっちの低気圧が局地的に、急激に発達したのです。
落雷もあちこちで観測されています。全部、周辺の山か海に落ちたと思われますが。そうです、そこが稀有なところなんですよ。落雷自体は別に珍しいことじゃありません。ただ、落ちる場所は海や山が多いんです。
地球規模で考えれば、人間が住んでいない場所の方が圧倒的に多いのですからね。落雷も人里離れた場所のほうが多い。別におかしなことではありません。
しかし、この地域では連続して落雷が起こっているのです。この年の梅雨入りの時期に、正にこの焼けたお宮の敷地内で落雷が起こっておるのです。そしてたった四ヶ月後に、二十メートルと離れていない古墳に落雷です。
これは異常と言ってよい出来事です。別段、雷が多い地方でもないというのに、不思議なことですよ、あなた。
確かに境内の木は大きかったようですので、落雷してもおかしくはありません。古墳のほうもね、上に乗っていたというのはかなり良質の鉄鉱石だったという話ですから、単独でならあり得ない話とは言いきれないんです。
だけどねえ、続けて同じ場所に二度もねえ。
あなた、それから二十年近く経ちますけど、その地域の落雷数はゼロですよ。そうそう同じようなところに落ちるもんじゃないです。
それはねえ、確率はゼロではないですけどねえ。天文学的な数字になりますよ。それがたまたま起こったといえば、そうなのでしょうがね。
その日は確かに、日本全国おかしな天気ではありましたんですがね。二度目の落雷があった日です、古墳に落ちた日のほうですな。さっきも言ったように台風の影響で前線が、ほら、こうやって伸びましたからね。大気の状態が非常に不安定でした。そのせいで、全国あちこちに雷雲が発生したわけです。
関東でも記録的な大雨で、落雷で民家が焼けたりもしていましすよ。そういえば、その落雷でも……。いや。
はあ、PHS のアンテナ?
地主さんがそんなものを立てたから雷が落ちたと噂になった?
そんなわけありますか。
だったら都市部の落雷被害は格段に増えますよ。
おかしなことを考えますな。そんな考えは、祟りで雷が落ちると思うのと同じくらい非科学的で、馬鹿馬鹿しいものですよ。




