第4話
俺は自信に満ちた目でアカデミーの生徒たちを一人ずつ見回した。
彼らの中には記憶の片隅をよぎる人物もいたが、俺と全く接点のない者もいた。
重要なのは、今日を境に俺が卒業生の中で最も要注意人物になるという事実だった。
それを恐れて今日ここに来なかったのなら。
世界は変わらなかっただろう。
世界は努力する者、いや、勝ち取る者のものだ!
「当面の措置としては、銀貨の基準純度を公表し、王立財務庁名義の検印を導入することです」
手のひらの上の金貨を裏返した。
「この金貨は少なくとも誰が作ったのかという保証がされています。しかし。銀貨にその保証が果たして今、存在している……でしょうか? 都市ごとに鋳造方法が異なり、純度もバラバラで、確認する術がないからこそ、商人たちがそれぞれの基準を持ち、自分たちのやり方で判断して回っているのです!」
「検印制度を導入すれば、偽造が相次ぐのではないか」
財務大臣が即座に反問した。
良い質問だった。いや、当然の質問だった。
「その通りです。だからこそ、これは臨時措置なのです」
正直に答えた。
「検印だけでは根本的な解決にはなりません。純度を保証するシステムがない限り、検印もまた新たな偽造の対象になるだけですから」
財務大臣は慌てたように一瞬空咳をした。
『知っていたな』
この人はすでに、この問題をずっと前から把握していたのだ。銀貨の信頼低下も、検印導入の限界も。だとするなら、ここに俺たちを呼んだ『真・の・』理由は……。
「では残念だが、今日の面会はここまでにしよう」
アカデミーの生徒たちは一瞬言葉を失い、俺と財務大臣を交互に見つめた。
準備してきた質問や、自分を誇示するための知識すら披露できないまま、重要な機会の時間が終わってしまったのだ。
財務大臣が上座から歩み出てきた。
そして、俺の隣にいるカルツに目を向けた。
「君がカルツか?」
カルツが顔を上げた。
いつもの図太い表情はどこかへ消え失せていた。
「カルツ・ドラカンです。大臣閣下」
彼が久しぶりに礼儀をわきまえ、丁寧にお辞儀をした。
「君の父親が作った眼鏡は、いつも重宝しているよ」
「いつでも、お待ちしております」
財務大臣は軽く頷き、再び歩みを進めた。
ざわつく雰囲気の中、彼が立ち去ろうとした俺を静かに呼び止めた。
「ついてきなさい」
財務大臣の執務室は同じ建物内にあったが、雰囲気が全く異なっていた。
『さっきの場所はあくまで見せるための場所で、ここが彼の主戦場というわけか』
財務大臣は机に向かい、両手を組んで物思いに耽っているようだった。
おそらく、俺にどんなカードを切るべきか悩んでいるように見えた。
彼が眼鏡を外し、じっと俺を睨みつけた。
暗がりで彼を見た時は威厳に満ちた顔だったが、今は、俺が死ぬ前に銀行でいつも見ていた上司の陰りある顔と同じだった。
財務大臣が口を開いた。
「私もその方法は知っていた」
財務大臣は特に何も言わず、俺をじっと見据えた。
「王立財務庁で三年前に検討し、保留した案だ。偽造リスクのためではない。各都市の鋳造権に手を加えれば、領主たちや多国籍の大型商団が反発するからだ」
彼が机の上の書類の一枚を指でトントンと叩いた。
正確に読むことはできなくても、おそらくその内容に関する書類だろう。
心の中でそう推測し、俺は再び視線を戻して彼を見つめた。
「君もそれを知っていたのか?」
「ある程度……推測はしていました」
「推測ではなく、確信だったはずだが?」
俺は答えなかった。
財務大臣が身を乗り出した。
「さあ……言ってみたまえ。ここには私と君しかいない。検印よりも良い方法があるのだろう?」
心臓が半拍速く鼓動し始め、奇妙な快感が脳の中で爆発した。
恐怖ではない。
そして確かに気づくことができた。
これは質問ではなく、確信という《・》熟練した獣の感覚《・》であることを。
前世で大きな取引を前にして感じたあの感覚。
テーブルの向こう側に本物の相手が座っている時に感じる、あのヒリつくような感情。
「今は、お答えできません」
財務大臣の目が冷ややかに俺を射抜いていた。
一国の財政を総括する者の前で、十八歳の没落貴族が回答を拒んだのだ。
正常な判断なら、この場で持っているものをすべて出すべきだった。
しかし。
『情報は一度にすべて売ってはならない』
前世で学んだ中で、最も高くついた教訓だった。
すべてのカードを見せた瞬間、テーブルの上の主導権は相手に渡ってしまう。
俺が与えられるのは、答えがあるという確信だけでなければならなかった。
その答えを聞くために、相手から先に動くように仕向けなければならない。
財務大臣は俺をしばらく見つめていた。
時間が長く引き延ばされるような気がした。
彼の卓上にある蝋燭の火が風で再び揺れた時。
財務大臣の口角が動いた。
「大胆だな」
彼は躊躇いなくペンを取り、紙に何かを書き殴った。
「推薦状だ」
俺は羊皮紙を受け取った。
王立財務庁財務大臣名義。公式の職印。
この一枚が開く扉の重さを知らないはずがなかった。
「ありがとうございます」
財務大臣がペンを置き、椅子の背もたれにゆったりと体を預けた。
そして、うららかな陽射しが降り注ぐ窓の向こうを眺めながら、俺にそれとなく尋ねた。
「では。君は、どこへ行きたいのだ?」
俺は答える代わりにニヤリと笑ってみせた。
まだ仲間でもなく、未来には敵となるかもしれない者に、行き先を教えるなんて馬鹿のすることだったからだ!




