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第2話

午後まで少し時間があったので、部屋に戻って実家へ送る荷物を整理していた。その時、執事のジェニスが一通の手紙を持ってきた。急報だというので、俺は急いで中身を確認した。



【 息子へ。


我が家の事情は、今ひどく悪化している。

もし家に戻るつもりなら……


お前ももう成人だ。これからは自らの手で道を切り開くがいい。

弟たちのことは気にするな。


彼らの行く末は、私がしっかりと手配した。

お前は自分の身の心配だけをしなさい。


おそらく、これが最後の手紙になるかもしれない。

どうか元気でな。レイン。】



実家へ帰る道は絶たれた。


今の俺に残されているのは、手元にある僅かな金貨と、王立アカデミーの卒業証書だけだ。


『本当に、財務大臣に会うことが俺の一世一代のチャンスになるかもしれない』


王国のすべての富の流れを管理する者。

俺は今、彼に会いに行く。


卒業式の会場とは反対側、庭園を横切って進む道。

ここで、俺はなぜか妙な既視感を覚えた。


『そうだ。全盛期のセントラルパークがこんな雰囲気だったな』


鳥がさえずり、あちこちに落ち葉が積もっている。

しかし、すぐに気づいた。それが俺の幻想に過ぎないということに。


『しっかりしろ。ここはファンタジーの世界だ。それに、さっき鏡を見ただろう? 俺の髪は金髪で、瞳は赤色なんだ!!』


いくら考えても理不尽な状況だが、頭の中に流れる断片的な記憶が、俺がここに存在していることを証明していた。


考え事が終わる頃、道の向こうに見慣れたシルエットが目に入った。


「カトリーナ?」


「ふぅ……すれ違っちゃうかと思いましたよ!」


まだ卒業式の礼服から着替えていないのか、引きずるようなドレス姿で現れた彼女は、唐突に一つの小さな袋を差し出した。


「はい! 卒業のプレゼントです」


「何?」


瞬間、嫌な気分になった。

俺はこんな奴らにまで同情されるような存在なのかと。


だが、自分を刺すような不快な感情を胸の奥にしまい込み、素直に受け取ることにした。


この世界は、意外と噂が広まるのが早い。

彼女が必死に俺を捜しに来たのなら、それは助けになりたかったからであって、恥をかかせるためではないはずだ。


無表情だった顔の口角を少し上げ、温かみを込めて彼女に答えた。


「大事に……使うよ」





巨大な建物が、その壮大さと威圧感を誇示していた。

俺は靴に付いた泥を軽く払い、中に入ろうとしたが、警備兵に立ち塞がれた。


「止まれ。 許可のない者は立ち入れない」


俺は内ポケットから、汗ばんだ許可証を取り出して見せた。

警備兵は無表情のまま中の証書を確認すると、俺を中へと通してくれた。


最初声をかけてきたのはカルツだった。


カルツ・ドラカン。

代々眼鏡師の家系に生まれた友人で、社交的であり、何より頼りになる男だった。


「よっ! レイン。まさか歩いてきたのか!」


寮からここまでは結構な距離があるから、カルツとしては本当に歩いてきたのかとからかう冗談だったのだろう。


だが、なぜかその言葉は、俺がもう二度と元の生活には戻れないのだと、深く胸をえぐるように響いた。


本来なら、カルツ以外にも親しくしていた奴らが何人かいた。

だが、奴らは申し合わせたように俺に近づこうとしなくなった。

まるで不要なものは切り捨てられる、この世界の世知辛さを体現しているようだった。


拳にぐっと力が入る。

言い訳でもしてやりたかったが。


今の俺にあるのは、たった数枚の金貨と卒業プレゼントの小袋の中身だけだ。


『ここからが、本番だ』


そして、そのチャンスを掴める人物がすぐ目の前に存在していた!


「私語はそこまで。 皆さん、入場してください!」


俺はその一瞬でここにいる顔ぶれをすべて把握し、囁くようにカルツに尋ねた。


「おい、カルツ。なぜマックスは来てないんだ? 優秀卒業生なら絶対に来るはずなのに」


「はあ? 今さら何言ってんだ。あいつは……」


その時、集まった人々がいる講堂全体が、一瞬にして暗転した。

言葉を交わす隙もなく、財務大臣の仕組んだ舞台が幕を開けたのだ。


俺たち8人は目の前に並べられた椅子に座り、ただ一人スポットライトを浴びる財務大臣が口を開くのを待った。


それなのに、彼は一向に何も語らない。


すると、一人、また一人と手を挙げ始めた。

まるでそれが狂乱の合図であったかのように、皆が我先にと高く手を挙げ、自らの知識を誇示しようとした。


この状況を目の当たりにして、なぜか俺は前世で見たある光景を思い出していた。


誰もが手を挙げている。

ただ一人、俺だけは挙げなかった。


しばらくの対峙が続いた後。

財務大臣は少し面白そうな顔つきになり、身分を象徴する豪奢な指輪をいくつもはめた右手で誰かを指名し、口を開いた。


「そう、君。私に何か聞きたいことでもあるのか?」


――ついに、チャンスが巡ってきた!

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