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第18話

新しい金が生まれた。

これは今でこそ銅貨と呼ばれているが、近い未来には、別の名で呼ばれることになるかもしれない。


俺だけのやり方で鋳造したこの硬貨は、俺の手のひらの中で、温かく、にこりと微笑んでいた。


「今、作れる銅貨の限界は三百枚」


それすら、手持ちの銀貨の三分の一ほどを費やした量だった。

おそらく、市中に出回ると同時に、大きな混乱を引き起こすことが予想された。

これ以上は作らない――それもまた、一つの戦略と言えるだろう。


ともあれ、まず真っ先に行き渡らせるべきは、給金が滞っていた城内の者たち。

彼らが第一だった。その次が商人たち、そして市民たちだ。


本来なら、市民をもっと優先したかった。だが、商人たちの信頼を得られなければ、せっかく作ったこの好機も水の泡になってしまう。革製品とともに新銅貨を配れば、商人たちは忠実な煽り役となってくれるはずだ。


『あとは、事後報告のみか』


一夜が明けた。


公爵に会いに行く道のりが、どうにも気重だった。

あの人は、すでに知っていたのだろうか?


なぜ、この経済が破綻へ向かう状況になるまで、止める者が一人もいなかったのか?

公爵の周りには、無能な者しかいなかったのか?


数多の思いが、頭をよぎっては過ぎていった。

答えの出ない問いばかりだった。


結局、すべてを語るのは、彼女の番だった。


俺は公爵のいる場所へ向かい、力を込めて言い放った。


「なぜ、私をここまで放っておかれるのですか」


公爵はちょうど朝食を終えたところなのか、空いた皿を下げさせ、紅茶を口にしていた。

その姿はどこか静謐で、見ている俺の内に、緊張を満たしていった。


だが、退くわけにはいかなかった。

相手が老練な統治者だとしても、彼女のしたことは、致命的な過ちだ。


私が解決できていなければ。公国は滅んでいた。

自治領ほどに落ちぶれるという問題ではない。ただ大陸の地図の上から、消え去るほどの災厄だ。


信頼を失った金を配り続けることにも、結局は責任が伴ううえ、それは国に過負荷をもたらす。


公爵ともあろう者が、その事実を知らぬはずがない。


「理由を、聞かせていただけますか」


「……」


沈黙。

それが、いまだ俺と彼女との間にあるものだった。


公爵は初めて俺を見るなり、監査官という重い地位を委ね、俺はその任を忠実に果たしてきたが。

いまだ彼女は、俺を信じきれていないようだった。いや、慎重だ、と言うほうが正しいだろうか。


これ以上、抗弁したところで無駄だ。


俺はすでに公国の市民であり、どこへ行こうと、自分が公国で働いていたという事実は、大陸の役所で書類を取り寄せれば、たやすく知れることだ。


つまり、もはや俺自身も、公国の興亡盛衰に、少しは関心があるということだった。


「あの時も申し上げた通り、私は公国の未来のために参りました」


俺は卓に手をつき、言葉を継いだ。


ここへ来るまでに、俺は多くの人々と出会った。

好意的な者もいれば、俺を欺こうとする者もいた。


だが、彼らを見て俺が感じたのは、前世とは違い、その瞳の中には『世界』がある、ということだった。


今やここが、俺の家であり、故郷だ。

もう二度と、失うわけにはいかない場所だということ。


俺は力を込めて言った。


「公爵様が私を信じてくださらなくとも……私はこの国のために働きます。今日も、です」


そう言って、堂々と踵を返して歩き出すと、彼女の声が聞こえてきた。


「レイン。宰相という地位。背負えるか?」


俺はにやりと笑ってみせ、窓の外の空を見上げた。


「いくらでも」


どんな地位を担おうと。

俺がこの国のために身を捧げることは、変わらないだろう。


ただ、道具と手立てが増えただけのことなのだから。


公爵の申し出は思いがけないものだったが。

俺は、誰よりもうまくやり遂げてみせる。この公国のために!

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