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第12話

想像してみてほしい。戦国の世の名高い武将が、戦場でこちらを睨みつけてきたら、こんな心地なのだろうか。

前世で、金融の世界に擦り切れるほど揉まれてきた俺であっても。


激昂した若き剣士の気迫を、軽く受け流すことは難しかった。

俺はそっとアカドを見やったが、彼もまた、首を横に振った。


助けてはやれん、という意味だった。


先ほどの商人との取引がエクストラステージだったとすれば、己の命がかかった今こそが、より重要なメインステージだった。


生き延びるために、何の意味もない見苦しい言い訳を口にしようとしたそのとき、今にも俺を斬ろうとしていた青年は、静かに殺気を収めた。

周囲の険悪な空気が消えたのを感じ取ると、アカドは己の息子を見て、頷いた。


「立派になったな、アレン」


アレンは腕を組み、冷ややかに言い返した。


「……それが、親父の道ですか」


かろうじて半分ほど抜いた剣を鞘に収めながら、彼は言った。


「俺は、皆がもう一度集まって笑える道を探します。親父が失敗した、別のやり方でね」


アレンが去ると、俺は父子の間に何があったのかを尋ねたかったが、それも先ほどと同じ理由で、今は流れに任せておくことにした。


確かに、ここであのアレンという男を引き入れれば、俺の商団にとって計り知れない利となるだろう。

父にあれほどの反感を抱く彼を引き込むには、条件も、規模も――今の俺には、何一つ備わっていなかった。


それが、俺には苦々しく感じられた。


『ケイナ、と言ったか。他の者は身分がわからんが、彼女は間違いなく貴族だ。あとで、よく調べておく必要があるな』


もし、いつかどこかでアレンと再会したなら。

命を脅かされた代償を、何十倍にもして必ず請求してやる。


一連の騒ぎが収まると、アカドは俺に詫びた。


「実のところ、わしのせいなのだ」


もっと説明してほしかったが、正確な経緯については語られなかった。

雲をつかむような詫びに俺は一瞬戸惑ったが、ほどなくしてその詫びを受け入れた。


「懸案に戻りましょう。どうあれ、生き延びたことが肝心ではありませんか」


「お前は、大胆で、ひどく前向きだな」


アカドもまた、一国の長であった者らしく、本来の主題へと話を戻した。

俺たちは今、公国の経済について論じていた。


夜も更けた時刻だったが、通りには飲み食いできる場所もある。ただ、話の内容が内容だ。近くで飲み物だけを買い、アカドだけが知る景色のよい場所へと向かった。


少し歩くと、道は街の外れのほうへと逸れていった。

ほどなくして、人ひとりいない寂れた場所に着いた。


アカドは、道端に咲いた色とりどりの野の花に触れながら、久方ぶりに訪れた自由を噛みしめていた。


「なかなかの景色だろう? わしはここを『妖精の庭』と呼んでいる」


彼とともに着いたその場所は、かなり広い空き地だった。

蛍と、名も知れぬ精霊たちが、巨大な木の周りを巡る様は、実に壮観だった。

先ほどから俺たちについてきた幻獣種の女も、ここが気に入ったのか、腰を落ち着けて、短い瞑想を始めた。


そんな姿をぼんやりと眺めながら、俺は彼に話しかけた。


「方法が、あるのではありませんか」


「あるとも」


アカドは、俺の問いを待っていたとばかりに答えた。

そして、ありきたりな解法を口にした。


「銅貨に、何かを混ぜるのだ」


「ですが、何を混ぜたところで、銅貨は銅貨で……」


そのとき、稲妻のような閃きが頭をよぎった。


「もし、銅貨が銅貨でなければ? いや――それ以上のものだとしたら?」


「面白いことを言う」


アカドは、自分好みにカスタマイズした飲み物を一滴残らず飲み干すと、空を見上げた。

星が降りそそぐ、雲ひとつない眺めだったが、なぜか見慣れたいつもの夜空のように思えた。


「これまで、貨幣の価値を変えようとした者は多くいた。だが、誰一人として成し遂げられなかった」


そうして、淡々と、再び俺を見据えた。


「お前に、できると思うか」


どくん――!


ありふれた問いが、まるで俺の胸をねじり上げたかのように、緊張を煽り立てた。

手に汗がにじみ、今すぐにでも、承諾の言葉を口の外へ吐き出したくなった。


心を落ち着け、冷静に考えてみる。

俺と同じことを考えた者が、この大陸にどれほど多くいただろうか。


それにもかかわらず、俺が今置かれている()()()()()()()()であれば? 全く別だ!


『今、公国の銅貨は、誰も見向きもしない状況にある。公国市民だけが使っている閉鎖的な条件に、俺のアイデアが加われば』


この大陸に、とてつもない波及効果をもたらすかもしれない。

そのためには、前提条件が必要だった。


『鋳造する前に必要な、元手となる財貨!』


今、公国が持っている手持ちの資産だけでは、計画を実行するには足りなかった。

そのうえ、限られた数量で勝負を挑めば、たやすく外部の勢力に切り崩される事態が来るかもしれなかった。


「どうやら、助けが必要なようだな」


アカドが立ち上がり、肩をすくめた。


「紹介しよう。なぜケパル自治領が、これまで滅びずに、弱小国の間で生き延びてこられたのか――その理由をな」


ゲート。

未知のその場所へ、俺たちは行く!

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