表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

泥棒猫

うちの将来の夢は歌のお姉さんだ。

そのためにダンスや歌のレッスンに通いたいけど、うちがビンボーすぎてムリ。

親父は行方をくらますし、家に借金とりがくる始末。

おふくろはガールズバーで働いてる。

親父がギャンブルでこしらえた借金のためにしたくもない仕事で稼いでんだ。

うちも年齢ごまかして居酒屋のバイトで借金返済を手伝ってる。

大人っぽく見せるために茶髪に染めてピアスしてる。

不良扱いされるから小学校にはあまり行ってない。

夢をあきらめたくなくて公園で歌ったり踊ったりしてたらウサギマスクの女の子から怪盗キッズにスカウトされた。

うちはネコマスクとタマっていうコードネームをもらう。

先日は大富豪の子供を誘拐して身代金として金庫の現金・名画・ゴールド・高級腕時計・宝石を頂いた。

うちらが桃華ちゃんの遊び相手をしている間にラクダ、ゼブラ、カバ、コウモリ、パンサー、ライオン丸が身代金を受け取りに行った。

カラスから身代金の受け取りが終わったと通信が入り、桃華ちゃんをおうちに帰した。

帰る途中で寝ちまったからウサミが庭の大木にもたれさせて置いてきたそうだ。

うちの関わった初仕事は大成功した。うたげは最高だったし、翌朝には目が飛び出るほどの大金が手に入る。

借金も返せたし、レッスンにも通えるようになった。

家庭教師も呼べる。

家を買って好きなもんを買った。好きなもんを食べた。

親父も探偵に頼んで連れ帰ってもらい、新しい家で家族仲良く暮らしてる。

部屋で最新のスマホをいじってたら怪盗キッズについて特集していた。

シチサン眼鏡の中年男性が司会だ。

「全国に美術館での窃盗、豪邸での空き巣、資産家の子どもを狙った誘拐。すべて動物マスクをかぶった子供たちによる反抗です」

若い犯罪評論家が解説する。

「まずしい人にお金を配ってるらしいよ?現金と名刺の入った袋が届くんだって。僕の家にも届かないかなぁ」

名刺が映し出される。

怪盗キッズと印刷された名刺にはウサギの顔が描かれていた。欲しがる人も多いって話だ。

「街の声を聞いてみましょう

老若男女がインタビューに答えてる。

「怪盗キッズ最高ッ!!」

「あの子らは義賊じゃ」

「富の偏在を解消する存在だ」

「どんな顔してるのか気になる」

「かわいいから許す」

好意的な意見ばかりだ。うちは笑みをこぼす。

うちらがやっているのは正義なんだ。

お金持ちから富を奪ってまずしいひとに再分配してる

超格差を放置しているのはいじめだ。

まずしい家の子は一生まずしいままで格差の固定も起きてる。

まずしい若者は恋や結婚もできない。ゲームもまんがも買えない。

お金持ちは株や不動産所得で寝ててもお金が入ってくる。

大人の社会でいじめを放置してるから子供の社会でもいじめがなくならない。

ビンボーで歯医者や皮膚科に通えない子だっているのにさ。

怪盗キッズを応援する声は多いし、もっと盗んでどんどんまずしい人にお金を配って富を平等にするべきなんだ。うちはそのためにウサミへの協力を惜しまない。

ピンポーン♩

チャイムの鳴る音がした。夜遅いのに来客か?親父が対応している。

「タマミー!」

「あ〜い」

うちは階段を降りた。玄関には背広姿のおっさんがふたりいた。

「警察のものです。ちょっとお話しを聞かせてもらっていいかな?」

「!?」

サツだ!やべえ。うちは階段を駆け上がり窓に足をあけた。

強いライトで照らされる。

下で大勢のサツが待ち伏せしていた。

こりゃ逃げらんねぇわ。うちは観念して笑みを浮かべた。

パトカーに乗せられて留置所に放り込まれる。

目つきの悪い少年と大柄な少年がいた。

「もしかしてキンローとくまどんかい?」

「おう。もしかして姉御ですか?」

「ちげーよ。うちはタマ」

「タマ?ぜんぜんキャラちげーじゃん。猫かぶってやがったな」

「マスクしてる時は歌のお姉さんみたいだったね〜」

「別にいいだろ。おまえらもうちにサツが来たのか?」

「オイラはカラオケで女をはべらせてる時にサツに乗り込まれて捕まっちまった」

「ぼかぁ、商店街で食べ歩きしてたらおまわりさんにかこまれてたよ~」

「こりゃ、ほかのメンバーも捕まってそうだね」

うちはあぐらをかいた。

チビのオーバーオールを着た少年とおしゃれな美少年がサツに連れて来られる。

「ドジったっち」

「フッ。一寸先は闇だな」

おそらくチューベエとウマオだな。

うちらは自己紹介して身の上話した。

「捕まったのは金遣いが荒かったからにちがいねぇ。姉御に注意されてたのに調子に乗っちまったぜ」

キンローは頭を抱える。みんな気持ちは同じで反省している。

ウサミもどこかで捕まっているんだろうか。

うちは窓の外の夜空を見上げる。曇りのせいで星はひとつもない。

雨が降ってきて気分はさらにブルーになった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ