夢の国
あたちはももか。
名門小学校の一年生で大きなお屋敷に住んでるの。
ウサギさんがだ〜いすき♡
いつものように絵本を読んでいるとママに呼ばれた。
「ももかー!おともだちからお手紙よ」
「は〜い」
ママからかわいい封筒を受け取る。
開くと花とうさぎの描かれた便箋が入ってた。
ももかちゃんへ
今夜8時にお月様を見てね!
夢の国へご案内するよ♩
差出人はウサミと書いてある。
ウサミなんてお友だちはいない。
なにかおもしろいことが起きる予感がした。
夜8時に庭に出る。まんまるお月様がこっちを見ていた。
でも、何も起こらなかった。
「イタズラじゃん。まったくもう」
あたちは唇をとがらせる。
その時、ウサギのマスクを被った女の子が大木の影から現れる。
もしかしてウサミちゃん?
「こんばんは桃華ちゃん。お迎えにきたよ」
「どうしてあたちの名前を知ってるの?」
「月から見てたからね」
ウサミちゃんはあたちを抱き抱えるとジャンプして軽々と壁を乗り越えた。
そこにはかぼちゃの形をした車が待っていてウマのマスクをしたタキシードを着た執事もいる。
「すてき!」
あたちはシンデレラ気分になった。
ウサミちゃんとかぼちゃカーに乗り込む。中もかぼちゃっぽい。
馬の執事が運転手だ。どこかに向かって走る。
「3匹の子豚のうちに飾られてるウィンナーの絵のタイトル知ってる?ファザーだよ」
「えーうそー?こわ〜い!」
ウサミちゃんはグリム童話のこぼれ話をたくさんしてくれる。絵本は大好きだから聞き入ってしまう。
「前の車止まりなさいッ!」
振り返るとパトカーが見えた。ウサミちゃんは左耳を引っ張る。
「カラス。信号を全部青にしな。ウマオぶっ飛ばせ」
「ラジャー」
ウサミちゃんの右耳から声がする。
かぼちゃカーはぐんぐんスピードを上げてパトカーを引き剥がした。
「いやっほ〜!」
あたちは拳を突き上げた。かぼちゃカーはパトカーを置いてきぼりにして前の車を次々にかわしていく。
カーレースみたい!でも、しばらく走って止まった。
おまわりさんが誘導棒を振ってる。
「チッ。検問かよ。奥の手を使うよ」
ウサミちゃんは天井のボタンを押した。
ドンって音がして車が少し浮く。
車輪が縦から横になって高速回転を始める。
かぼちゃカーは空を舞う!
「飛んでる!魔法みたい!」
あたちは窓から地上をのぞく。みんなびっくりしてる。
星の道は空いててとっても快適♩
「車の底に収納可能なジャッキスタンドがあるんだ。車体を浮かせてから車輪を横にしてドローンみたいに飛んでるだけさ」
「?」
ウサミちゃんは説明してくれるけどよくわかんない。
「科学という魔法だよ」
「科学すごい♩」
かぼちゃカーは高層マンションの屋上に降りた。
演劇ルームに案内される。ど真ん中の観覧席に座った。
ネコちゃんのマスクの女の子が現れる。
「桃華ちゃんようこそにゃん♩うちはタマにゃん♩」
タマちゃんは両手を顔の前で広げて振ってくれる。あたちも振り返した。
「これから桃華ちゃんをいっぱい楽しませるにゃん♩まずは歓迎の音楽にゃん!」
舞台にオーケストラが現れた。
ドレスアップしたニワトリのお姉ちゃんが歌う。
パンダのお兄さんはチェロだ。
トラのお兄ちゃんはトランペット、
カッパのお兄ちゃんはファゴット、
コアラののお兄ちゃんはヴァイオリンを弾いてる。
みんなタキシードでとってもおしゃれだ。
歌も演奏もすごい上手で感動した!
あたち好みの童謡っぽい音楽だった。
ネズミの背の低い男の子はマジックショーを見せてくれる。
サルのお兄ちゃんは綱渡りは玉乗りを見せてくれた。
カバのお兄ちゃんは小さなボールの上に大きなボールを乗せて、その上に立ってフラフープする。
サーカスが終わるとミュージカルがはじまった。
ウサミちゃんはかわいいワンピースに着替えてる。
内容はオオカミが村人を食べるのでウサミちゃんが戦ってオオカミに勝つって内容だった。
メルヘンなのにバトルアクションでギャップがおもしろい。
カエルやリスやアヒルの女の子も出てきてみんな歌と踊りが超上手でびっくりした。
ミュージカルが終わったら舞台に上げてもらって用意されたテーブルでチョコレートケーキを食べた。ほっぺが落ちちゃいそうなぐらいおいしい。
背景がお菓子の家でメルヘンの世界に入ってるみたいで楽しかった。
それからタマちゃんたちとお芝居ごっこして遊んだ。
楽しすぎて夢でも見てるみたい。ずっと覚めなきゃいいのに。
でも、楽しい時間はあっという間に終わる。ウサミちゃんに両肩をつかまれる。
「桃華ちゃん。そろそろおうちに帰る時間だよ」
「えっ?」
「いい子にしてたらまた連れてきてあげる♡」
「うん!」
あたちはかぼちゃカーに乗せられる。みんなに見送られてお空の旅に出発した。
幸せに包まれてあたちはいつのまにか眠ってた。
翌朝、目覚めるとパパとママに抱きしめられる。
どうしたんだろう?
あたちは目をぱちくりして首をかしげた。




