#3 ストーカー⁉
ヤバい人達の巣窟を見つけたあの日の翌日、目を覚ませば記憶がリセットされているような感覚に陥った。昨日のあの光景は結局夢だったんだろうか、と思うほど非現実的で、もしもファンタジーのような世界観が広がる異世界が広がっていたとしたら、平凡な日々を送ってきた私からしたら摩訶不思議なものである。
とりあえず学校に行く支度をしておかないと、そう思ってベッドから降りて登校の準備をする。鞄を手にした後、部屋を出て階段を降り、玄関前に鞄を置いてリビングに入った。既に朝食の準備が済まされており、私はテーブルの前に椅子を引いて座り、食べ始める。
つまらなそうなニュースばかりやるなあ、どうせだったら明るい推しのニュースとかやらないかなあ、とぼんやりとテレビを見ながら朝食を食べる。ふと推しのことが気になって頭が浮かんだものの、昨日のヤバい人達の巣窟のことを思い返してしまい、かぶりを振ってしまう。
「あ、そう言えばさ」
母が私に訊いてくる。適当に「んっ、なあに?」と言えば、どうやら帰りにおつかいをしてきて欲しいという頼み事だった。テーブルに置かれた千円札二枚を見ながら、私は「分かったー」と少し大きめな声で、リビングから居なくなった母に向けて言った。
私の家庭は少し複雑……って言う訳ではなく、平凡な家庭だ。母も父も働いていて、それなりの給料を貰って、私や下の弟を養っている。そんな両親に私はいつか恩を返したいと考えているが、まだ計画を寝ることができていない。
なぜなら大学受験を終えてから、将来何に就こうか考えてから計画を練りたいからだ。今から計画を練ったとしても、この先の将来が変化すればきっと自分の家庭にも変化が訪れるはず。だったらまずはしっかりと受験を熟し、その後で自分の将来について、自分の人生について考えていこうじゃないか、と考えている。
朝食を食べ終え、登校の支度を済ませた私は扉を開けて家を出る。目前の光景は見慣れすぎて飽きちゃうな、と思いながら家の門を出て行く。だが少しだけ違和感を覚えていた。なぜ違和感を覚えていたのだろう、どこか変なところがあったのか、と思って振り返れば、家の門から得体の知れない、爛々と輝く青い瞳が私をじっと、じっと見つめていたからだ。
「……あの、何してるんですか?」
怪訝に思いながら、というより不信に思いながら、私は昨日出会った自称異世界人のアレンと呼ばれる男性に声を掛ける。その男はニヤニヤと私のことを見つめながら、「はあい、おはよう、千聖!」と溌剌に声を掛けてきた。
──きっっもいんですけどォ‼
昨日の見つめ行為も今日の行動もそうだけど、どうして私の事を見つめてくるんだ、この人? どういう了見でニヤつきながら私の事を追ってくるんだ? てかなんで私の住所を知ってる? ストーカーか、こいつは?
まあいいか、そのうち警察に突き出して大人しく反省してもらうか。と思いながら、私はアレンという男を一旦無視して学校までの道のりを歩き始める。背後からの気配を感じながらも、振り向いたら終わりだ、きっと何かに拘束されてまたあの巣窟に入れられてしまう。
そうならないためにも、私は早く学校に行かなければ──。
けれど、なぜか背後の気配をどうしても確認したい。なぜこの気持ちを抑えきれないんだ、私は。さっさと学校に行って先生に報告すれば、警察に届けられて、アレンという奴は手錠にかけられるはずだ。そうすればまた私は、平凡な日々を安全に過ごすことができる。
そうとすれば、私はとっとと学校へ向かおう。
歩幅を大きくし、スピードを速める今朝の、そんな私だった。




