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Vチューバー始めてみたけどこれって正解ですか?  作者: あやな
大学生編

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20/21

詩子クロニクル5 果たし状は突然に

謝ろう。お互いに、そう決意した、詩子と蟻宮だったが―――

「何これ?」


帰宅早々、晩御飯も後回しにして、FF14の世界にログインした詩子は、自宅(FF14では自分の家を持つことができる)の庭先で、ポストの周りを鼻歌を歌いながらスキップしていたモーグリ(FF14に出てくる種族の一つで愛らしい動物の姿をしている)を取っ捕まえて、メールを開いた。


Allie Yoshino さんからメールが届きました

「22:00出会いの地で待つ」


「―――果たし状?」


詩子は茫然と呟いた。


果たし状とは、江戸時代の武士が決闘の場へ相手を呼びつけるために送った書状のことで、昭和中期にツッパリと呼ばれた不良少年が、喧嘩を売るときに、様式美として、場所と日時を指定して喧嘩相手に届けたとされる。そろそろ若いとは言えない年齢に差し掛かっているとはいえ、27歳の詩子が、どうして知っているのかは疑問だが。


シュンと音がして、門前にミコッテ(FF14の種族の一つで猫型の獣人)の女性が現れた。


Erinn Sakura>>はやっ! もうログインしてるの?

Akane Miko>>リッカこそ、早かったね


「Erinn」と書いて、なぜ「リッカ」と読ませるのかはわからない。中の人は佐倉(さくら)千佳(ちか)。詩子の同僚であり、数少ないFF14のフレンドの一人だ。千佳は、レガシープレイヤーと言われるFF14サービス開始時からの古参プレイヤーで、詩子にFF14を教えてくれた師匠でもある。なんと、小学生の頃から、父親と共にゲームをしていたらしい。


ピコンと音がした。虹色の蝶が飛んできて、詩子の前で翅を広げた。詩子が蝶に触れると、


Erinn Sakura さんからグループに誘われました。参加しますか?


という一文が表示された。詩子は「はい」を押した。蝶は鱗粉を振り撒きながら霧散(むさん)し、代わりに葉っぱの傘を持った丸っこい生き物が出てきて、葉っぱを上下にピョコピョコと振った。詩子が葉っぱに触れると、今度は、


グループのVCに参加しますか?


という一文が表示された。詩子は、これも「はい」を押した。


「ねえ、なんかあったの?」

聞き慣れた千佳の声が、心配そうに尋ねた。

「―――どうしてそう思うの?表情も見えないのに」

「いや、なんとなく」


長いことエオルゼア(FF14のゲーム世界)に「住んでいる」と、そんなことも可能になるのか。詩子は脅威を感じた。隠すことでもないので、メールの内容を伝えた。


「果たし状じゃんw」

「やっぱ、そう思うよね」


千佳は冗談交じりに笑うが、詩子にとっては、笑いごとではない。芸能人を怒らせて、いいことなんてない。


やっぱり、わたしの態度が悪すぎたか。


悪い想像ばかりが頭をよぎるが、ビビっていても前には進めない。ちょうど、謝ろうと思っていたし、どうやって、こちらから連絡しようかと悩んでもいたので、考えようによってはちょうどいい。詩子は、果たし状?を前向きに捉(とら)えることにした。


「―――行くか」

「おお!頑張って!」

ためらいの後、静かに言った詩子に、千佳は〝応援〟エモートをした。

「―――何、他人事みたいに言ってるのよ。リッカも行くのよ」

「え? なんで? わたし、関係ないじゃん」

千佳は素で驚いた。こいつ―――。

「今、一緒にいるんで、諦めてください」

「ひどっ! 友達を巻き込むなあっ!」

「こういう時、一緒に来るのが友達だと思います」


千佳は、ひとしきりギャアギャア言っていたが、こうしたやり取りは恒例の挨拶みたいなもので、いつも、最後には詩子の「お願い」を聞いてくれた。この日も、千佳は、一緒に行くことを引き受けてくれた。これで、詩子が一人で行くと言おうものなら、無理やりにでも付いてきただろう。


それから二人は、晩御飯を食べるために、キャラを放置して離席し、30分後に集合すると、日課のコンテンツを手際よくこなしながら、予定の時間を待った。




Allie Yoshino>>こんばんは


「ひいっ!」


アーモロートにテレポ(各地に設置されたエーテライトというポイントへ移動すること)すると、目の前にアリーがいて、すかさずtell(一対一のチャット)が飛んできた。


「詩子、急に大声上げないでよ」

「だって―――」


シュンと音がして、詩子の隣に千佳が現れた。


「あー、なるほど」


千佳は、アウラ(FF14の種族の一つで、爬虫類タイプの亜人種)の美少女を目にして、納得したように言った。アウラの眼前に虹色の蝶が現れ、詩子の方に飛んできて、ボムッっという音とともに弾(はじ)けた。


「あ、そっか」


詩子はマウスを操作して、千佳とのパーティを解除した。


詩子は、今さらながらに、アリーの隣に、詩子の知らないルガディン(FF14の種族の一つで、筋肉質の大男)が立っていることに気付いた。アリーとルガディンの頭上には水色の旗が立っており、パーティを組んでいるようだ。蝶は、アリーからパーティに誘われたしるしだが、FF14の仕様上、パーティ同士でパーティを組むことができない。そこで、詩子が自分のパーティを解除したのだ。


再び、蝶が飛んできて、詩子が蝶に触れると、


Allie Yoshino さんからパーティに誘われました。参加しますか?


とメッセージが表示されたので、詩子は迷わず「はい」を押した。もう1匹、今度は、蝶が千佳の方にも飛んで行き、千佳もパーティに加わった。同時にVCのお誘いも飛んできたので、それも承諾した。


「こんばんは。蟻宮吉野です」

柔らかい澄んだ水のような声がした。蟻宮吉野の配信は止まったままだったが、アーカイブはどれも100万回以上再生されていた。聴いただけで誰かわかる特徴のある声。現在、活動休止中のVチューバーアイドルユニット〝FREESiA〟のメインボーカル、蟻宮吉野その人の声に間違いなかった。

「ルミナスだ。よろしくな」

ルガディンの方も声を発した。Luminous Redford というキャラ名が付いていた。こちらは、聴いたことのない声だ。外見に似合わず、若い女性の声だった。


「みこのフレンドのリッカと申します。よろしくお願いします」

千佳は、卒(そつ)なく挨拶を返した。みこは詩子、リッカは千佳のプレイヤーネームだ。いつ配信されてもいいように、身バレ対策の配慮もバッチリだ。詩子以上に、配信慣れしていた。


「この度は、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

金髪のアウラが深々と頭を下げた。内心、身構えていた詩子は、ぽかんと口を開けた。

「果たし状じゃないの?」

「果たし状?」

詩子が思わず口走った物騒な単語に、アリーは不思議そうに首を傾げた。

「アリー、おまえ、どんなメール送ったんだよ」

ルミナスが言った。

「ただの連絡メールですよ」

「みこさん、メールの内容見せてもらっていい?」

ルミナスは、即座に詩子に頼んだ。

「あ、はい。ちょっと待ってくださいね」

詩子はキーボードを操作して、アリーから来たメールの文面を写し取って、チャットに投下した。


Akane Miko>>22:00出会いの地で待つ


「バカなの?」

ルミナスが呆(あき)れたように言った。

「だ、だって、他に伝えようがないじゃないですか!」

アリーが、慌てて言った。

「足りてねえんだよ! 情報が! いろいろと!」

ルミナスがすかさず突っ込んだ。

「あ、ほら、わたし、フランス人だから、日本語よくわからないっていうか―――」

「都合のいい時だけフランス人になるんじゃねえよ。ありりは、見た目はともかく、中身は日本人だろ。誰がどう見たって」

ルミナスは、つい、リアルでのアリーの愛称を口にしてしまった。まあ、最初にアリーが堂々と「蟻宮吉野です」と名乗っているので何の問題もないが。


「まあ、こいつ、バカだけど、悪い奴じゃねえんだ。みこさんの配信に顔出して、ぶち壊すつもりなんてなかったんだ。信じてくれるかどうか、わかんねえけど、ありりは、最後に、パーティメンバーが〝蟻宮吉野〟の名前を口にするまで、バレてるって思ってなかったんだよ」

「えっ? そうなんですか?」

「ルミナス、ひどい。わたし、バカじゃないもん」

「あの状況でバレてないって思うのが、おかしいでしょって話をしてるんだよ!」

アリーが抗議の声をあげ、ルミナスに一刀両断された。


「ううん。アリーさんは悪くないよ。わたし、5年も活動してるけど、同接(同時接続者数:リアルタイムで配信を視聴してるリスナー数のこと)いつも10人ぐらいで。それが11万人なんて、嘘みたいな数字だったから、勝手に舞い上がっちゃって。バカなのはわたしだよ」

詩子は、沈んだ声で言った。

「みこさん―――」

アリーは何かを言いかけ、声に出せなかった。

「ありりは、2年も経たないうちに配信止めちまったからな。5年も続いているなんて、すごいと思うぞ」

ルミナスが漢(おとこ)気(ぎ)たっぷりに詩子のことを称賛した。


配信者の寿命は長くても2年程度と言われていた。誰でも始められるが、続けることは難しい。例え週1回の配信だとしても、ネタを考え、台本を書き、共演者がいるならスケジュール調整し、配信画面を作り、事前告知をする。それだけ準備して見に来たのは、たった10人。広告収入は、よくて月数千円。自分と同じような配信者は星の数ほどいて、次から次へと後輩に追い越されていく。心が折れ、心を病み、人知れず消えて行く配信者の何と多いことか。ルミナスの称賛は、お世辞ではないのだ。


「―――ルミナスさん、ありがとう」

詩子は逡巡の後、感謝の言葉を口にした。


ルミナスも配信者なのだろうか。アリーの知り合いだし、有名な配信者であっても不思議ではない。


ルミナスが本気で詩子を褒めてくれたことは、詩子にも伝わった。「どうせ、わたしなんか」は詩子の口癖だが、この時だけは、5年続けてきたことを誇りたい気持ちだった。


「今後の配信をどうしようって思っていました。ルミナスさんの言葉で続けられそうです。また、同接は10人ぐらいに戻ると思うけど、これからも頑張りますね」


この時、詩子は、本心からそう思っていたのだが、同接10万人の配信者には違う未来が見えていた。詩子が考えなしだったというより、経験の違いだ。


「みこさん、申し訳ないんだけど、もう、前みたいな配信はできないと思うの」

アリーが遠慮がちに口を開いた。

「? どういうこと?」

詩子は怪訝そうに尋ねた。

「んーと―――」

アリーは説明が苦手だ。ルミナスが、助け船を出した。

「先週のアーカイブが大バズりしてるから、しばらくは、初見さん(初めて見に来たリスナー)が続くし、リピーター(もう一度見に来るリスナー)も多いと思うんだよね。ありりの信者もいるし、フリージアのファンもいる。もちろん、みこさんの固定(毎回見に来るリスナー)もいるだろうし、何も知らないって人もいる。カオス(秩序のない混乱状態)だよ」


うわー。言われてみればそうなる気がする。


詩子は、同接11万人は一時の夢。また、来週からは、味のしないスルメを噛み締めるような日々が続くと思っていた。ネットの仕組みからすれば、ルミナスの予想は、説得力があった。


「そのカオスな状態で、みこさんが、ありりと不仲だって説が流布されたら、そのまま定着しかねないし、にわか(話題に乗じて一時的にファンになったふりをしているリスナー)が騒げば炎上しかねない」


たしかに!


「ど、ど、ど、どうしよう!」

「落ち着けって」

思わず声がひっくり返った詩子を、ルミナスがなだめた。

「だからと言って、リスナーの発言を、ありりやみこさんが否定すると、かえって炎上すると思うのよ。リスナーはライバーが反応してくれるのが一番うれしいんだから、煽(あお)るやつが絶対出てくる」

「―――終わった」

「諦めるの、はやっ!」

詩子が魂の抜けた声でぼそっと言い、千佳が間髪入れずにツッこんだ。

「大丈夫? みこさん?」

アリーが心配そうに尋ねたが、詩子は返事をするどころではなかった。


「大丈夫だ!」


ルミナスが代わりに力強く返事した。何でっ!?


「噂を否定するんじゃなくて、噂と真逆の姿を見せつけてやればいい。ありりが、みこさんと仲睦(むつ)まじく遊んでいる動画を配信すれば、不仲説なんてひとたまりもなく消えるってわけさ」

「おおー! なるほど!」

詩子は復活した。

「さすが、フリージアの最古参、あかりだよ! 言うことが違う!」

「―――おい、ありり」

「あ」

ルミナスがアリーを窘(たしな)めた時にはもう遅い。VCの怖いところだ。

「―――もしかして、真行寺(しんぎょうじ)あかりさんですか? フリージアのメインダンサーの」

普段はクールな千佳にしては珍しく、上(うわ)擦(ず)った声で尋ねた。

「ああ、バレちまったからにはしょうがねえ。フリージアのダンス担当、真行寺あかりとは、俺のことよ」

ルミナスが漢(おとこ)気(ぎ)いっぱいに名乗りを上げた。

「わたし、あかりさんの大ファンなんです! フリージア以前から、天才ダンサーとして動画配信してた頃から見てました!」

「お、おう。ありがとな」

あかりは、千佳の勢いに押されて、珍しく戸惑ったように言った。

「ご、ごべんなざいぃ~。罰として、わたしもルガディンで配信しますぅ~」

アリーが涙声で言った。普段から、メンバーの身バレには気を付けるよう、マネージャーの依木(よりき)さんからキツく言われているのだ。

「おい! 見た目でありりってわからんかったら意味ねえだろ! てか、ルガディンを罰ゲームにすんじゃねえぇ!」

ルミナスが絶叫した。


その後も、やり取りが、あれやこれやあり、やっと落ち着いたところで、コラボ配信の打ち合わせに入った。


「でも、大丈夫なんですか? アリーさん―――蟻宮さんって引退したんですよね?」

「引退はしていない。諸事情で活動休止してただけだ。来月から、ちょっとずつ復帰していくんで、今は、もろもろ調整中だ」

ルミナス―――あかりが答えた。

「復帰―――。それは、おめでとうございます。でも、わたしなんかの配信に出て大丈夫なんですか?」

「わたしなんか―――」

千佳が、ボソッと指摘し、詩子は慌てて口を噤(つぐ)んだ。千佳は、この詩子の口癖が好きではないのだ。

「問題ない。むしろ、円満解決のために、こちらからお願いしたい」

あかりは、自信満々に答えた。


あかりは、フリージアの活動を実質的に仕切っていた。リーダーは、蟻宮とツインボーカルを務める周防(すおう)すももだが、蟻宮にせよ、すももにせよ、スケジュール調整や打ち合わせといった事務になると、全く役に立たないのだ。そこで、最古参のあかりが外部との連絡調整を進めるうちに、まとめ役となっていった。


現在は、蟻宮の復帰に向けて、マネージャーの依木と共に、今後のフリージアの方向性を含めてプランを練っているところだった。そこに降って湧いた今回の炎上騒ぎだ。蟻宮があかりに相談したのは、FF14絡みのトラブルだからという理由だったが、マネジメント的には正解だった。頭の痛い問題だったが、この問題に、うまく対応できるかどうかが、フリージアの今後にも影響してくる。話を聞いたあかりは、みこのことを、たかが草の根配信者と軽く見るのではなく、きちんと社長まで話を通した上で、今後の方針を決定していた。


あかりは、「ゴリ押し」が口癖で、口が悪く、一見すると粗野に見えるが、その行いは堅実で、真の漢(おとこ)気(ぎ)あふれる、有能なマネジメントプレイヤー(実務を行うプレイヤーとまとめ役としてのマネージャーを同時に行う人)なのだ。


「今回、一緒に遊ぶコンテンツは〝極(ごく)エヌオー〟だ」

ルミナスが言った。

「極エヌオー!?」

「現行極(極は高難易度コンテンツと呼ばれる難しいボス戦で、現行極は、その中でも最新のものを指す)じゃん」

詩子と千佳が驚きの声をあげた。


「あのう―――わたし、やったことないんですけど―――」

蟻宮が、恐る恐るという感じで言った。

「大丈夫だ」

あかりは、漢気たっぷりに言い放った。

「高難易度コンテンツだから、難しいっちゃ難しいが、何度も練習すれば、クリアできないほどじゃねえ。そもそも、簡単に終わっちまったら、配信にならねえだろ」


それはそうだ。


「俺はクリア済みだからコール(状況に応じて声で指示を出すこと)ができる。ありりとみこさんは、初見未予習(事前に下調べせずに初めてのコンテンツに行くこと)で入ってくれ。えっと、リッカさんは―――」

「わたしもクリア済みだから大丈夫。ナイト(片手剣と盾を使う防御専門のジョブ)でよければ」

「タンク職か。助かる。ありりは、ヴァイパーだよな」

「えっ!アリーさん、ヴァイパーなの?」

あかりの言葉に詩子は驚いて言った。

「うん」

蟻宮は当然のように頷いた。

「どのジョブでも一通りできるけど、一番得意なのはヴァイパーだから、今回はヴァイパーで行く」


ヴァイパーというのは、2本の剣を操って接近戦で戦うジョブで、敵を切り刻む激しい動きが多く、なんというか、血の気の多そうなイメージがある。お姫様然とした、アリーの外見からは想像がつかない。くだんの配信でも、確かヒーラー職を使っていたし。


「わたし、格闘技やってるから」

さらに蟻宮が意外な情報を告げた。まあ、アバターの見た目は中身と関係ないからな。詩子は深く考えるのは止めにしようと思った。MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)において、リアル(キャラを操る現実世界でのプレイヤー)を探るのはマナー違反だ。


「みこさんは、ジョブ、何にする?」

「わたしは忍者で」

「オーケーだ。じゃあ、ありりとペアだな。ちょうどいい」

忍者はヴァイパーと同じく近接戦闘のジョブなので、ペアになる場面があるのだろう。配信は、詩子が蟻宮と仲が良いことを見せつける目的なのだから、願ったり叶ったりだ。


「ルミナスさんは、何のジョブ(職業)なんですか?」

詩子は、疑問に思って尋ねた。

「俺か? 占星術師だ」

詩子と千佳は、思わず仰け反った。


占星術師は、カードを使って星占いをするジョブだ。ロール(役割)はピュアヒーラー(回復をメインとする職業)。FF14では、ジョブクエストといって、それぞれのジョブに対応したストーリーが用意されている。占星術師のジョブクエストでは、ゴスロリ系の少女が主人公として出てくる。スキル発動のエフェクトも、星占いを連想させる繊細なものが多く―――まあ、なんというか―――ういうイメージなのだ。


同じ神話でも、アルテミス(ギリシャ神話の代表的な女神)というより、ミノタウロス(同じくギリシャ神話に出てくる牛頭のモンスター)っていうか―――。


詩子は、頭を振った。FF14では、種族による能力値の差は雀の涙ほどしかなく、どんな種族で、何の職業をやろうが、それは個人の自由というものだ。種族でジョブを決めつけるのは偏見でしかない。とはいえ、皆、だいたいは同じイメージを持っているので、ルガディンの占星術師というのは見たことがない。長年染みついたイメージというものは、簡単には消えてくれないものだ。


「残りのメンバーは、こちらで事情を知っている人を集めておこうと思うけどいいか?」

あかりが詩子に尋ねた。極エヌオーは8人で攻略するコンテンツだ。本来は無関係の千佳も当然のように数に組み込まれている。詩子が言うところの、「その場にいたから」というやつだ。蟻宮、詩子、あかり、千佳で4人なので、残りの4人を集める必要がある。

「はい。お願いします」

詩子は迷わず返事した。友達が少ないので、高難易度コンテンツに一緒に行けるような人には心当たりがない。前回の配信のようなことになれば、たまったものではないので、事情を知っている人が参加してくれるのなら安心だ。


「む? ずいぶん遅くなってしまったな。すまない。今日は、これで、お開きにしよう。後で、メールでFN(フラクタルネットワーク:汎用型SNSアプリ)の連絡先を送っておく。ゲーム外からは、それで連絡してくれ。送信されて困る時間帯はないが、すぐには返事できないこともあるから、それは、了承してほしい。あと、いちおう、プライベート回線なので、取扱は気を付けてほしい」

芸能人のFN! なんだか緊張するが、詩子だって、四六時中、FF14をプレイしているわけではないので、ゲーム外からも連絡できるのは、とてもありがたい。

「じゃあ、またね、みこさん、リッカさん」


ルガディンとアウラの少女が手を振り、空中に生まれた光の渦のに包まれるようにして姿を消した。


普段と同じ静寂に包まれた夜のアーモロート。夢を見ていた気分で、詩子と千佳は顔を見合わせたのだった。

近未来という設定上、FF14というゲーム内の時系列をどうしようかとも思ったのですが、現実世界に合わせることにしました。とはいえ、データーセンターを越えた交流が可能だったり、着信時の派手な演出があったりと、現実にはない機能を先取りで搭載しています。実際にFF14を遊んでいる人は、「あー、なるほどー」と思いながら、にやにやして楽しんでもらえたらと思います。遊んだことない人は、公式ホームページからフリートライアルがダウンロードできますので、無料で遊べます。アウラは選べませんが、ルガディンは選べますので、ぜひ!w

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