王都公演は順調です・・・・・・か?
王都公演の休みの日は息抜きをして、2日ごとに公演内容を少し変えつつ
連日満員で順調に公演を続けていた
どこかのタイミングで国王が来るらしいのだが、まだ連絡はないので
まだ来ていないらしい
6回目の公演が終わり、先の公演のVIP席が完売したと連絡が来た
「わぁー、それは嬉しいなぁ。かなり口コミも広まっているのかな?」
スタッフ「ええ、一般席は多少は空きはありますがかなり売れています。明日はもう完売してますしね」
「ええ!凄い!嬉しいー」
スタッフ「前代未聞ですよ。私もお客としてゆっくりと見たかったくらいです」
「ふふふ、パチュリーまで見に来て下さいね」
スタッフ「いつか見に行きたいものです。あと、次の公演で国王夫妻が見に来られるようです」
「ついにか・・・・まあ、いつも通りやるつもりだけど」
スタッフ「ええ、それでよろしいかと思います。国王夫妻は3階の真ん中のお部屋に案内します。当日は挨拶しますか?」
「したいんだけど、到着時間によっては難しいかな?公演終わりとかならしっかり時間を取れると思うんだけど」
スタッフ「確かに・・・ルラさんは演者ですし、到着時間によっては難しいですね。では、公演終了後に挨拶を打診する形でよろしいでしょうか?」
「はい、もしお忙しいようだったら、後日ご挨拶に向かいますと言ってもらえればと思います」
どうせ話し合いの場を設けてもらうつもりなのだ
ここで挨拶しなくてもいいだろう
スタッフ「かしこまりました」
次の公演で国王が来る
気合を入れたい所だけど、他の演者には言わないでおこう
余計なプレッシャーをわざわざかけなくていい
明日は休みだし、また町の外で料理してもいいなー
そんな事を思いつつ屋敷に帰って行った
しかし、翌日の朝
朝ごはんを食べていたらメイドさんが手紙を持って来た
メイド「急ぎで読んで欲しいと従者の方が持って来まして・・・」
「え?誰だろう?」
手紙を見ても、差出人がわからない
封をしてある封蝋の模様も見た事がない
メイド「子爵家の方のようです」
「子爵家?子爵には知り合いはいないけどなー」
そういえばこの前、劇場に難癖付けてきたのは子爵家だったか・・・・
苦情は公爵家にって言ったはずだけど、直接文句を言いたくなったんだろうか?
封蝋を外し、中身を確認すると
バルテッラ子爵家からの手紙だった
この前の苦情を言ってきた子爵家の名前を聞いていないので、同一人物かどうかもわからない
手紙を読み進めていくと「今日の昼にお伺いしたい」と書かれていた
「ええー?今日?せっかくの休みなのに・・・」
メイド「今日来られるのですか?」
「うん、お昼に来たいだって。迷惑な話だよね、内容も『話がある』としか書かれてないし」
メイド「それは・・・とても下に見られていますね。公爵様へ使いを送りましょう」
「やっぱり言っておいた方がいいかな?」
メイド「そうですね。何か揉め事になってからでは遅いので、先に連絡を入れておいた方がいいかと」
「わかりました。連絡をお願いします。とりあえず会って話を聞いてからの対処になるとは思いますが」
メイド「はい、リーヴァさんに同席をお願いしておきます。返事に困った場合は『公爵家に確認を取ります』で通せばいいかと」
「なるほど、わかりました。とりあえずお客様をお迎えする準備をお願いしますね」
メイド「はい、お任せ下さい」
さすが公爵家のメイドさんだ、急な来客の要望にも慌てず騒がずだ
ガロルド「何だ、客が来るのか・・・」
「うん、ちょっと面倒だけど、相手しないといけなくなったから今日は散歩にいけないや」
ガロルド「そうか、俺だけでも散歩してこようか?」
「お願いしていい?アンディーは行きたいだろうし」
最近のアンディーは元気が有り余っているのか、走りたい欲求がすごい
今も外の庭を走って蝶々を追いかけている
ガロルド「ああ、夕方には戻る」
「うん、よろしくね」
お昼の来客に備えて、屋敷に残る人達には連絡しておく
お客様が来るので、応接室には近づかない事
なるべく静かに過ごしてもらう事などだ
そして、お昼ご飯を食べた少し後に、その人物は来た
「急にごめんなさい。急ぎでお話がしたくてね」
扇で口元を隠しつつ、会った瞬間にそう告げられる
自己紹介も無くだ
どこかで見た事があるような気もするが・・・どこだっただろうか?
返事もせずに凝視していると、リーヴァさんが耳打ちしてくれる
リーヴァ「王都の歌姫ポチェータ嬢ですね。差出人に名前を書いていなかった所を見るに、家名を前面に出して交渉したい事があるのかと・・・・」
「なるほど・・・・」
小声で会話して、ポチェータさんに向き直る
「急なお手紙でしたので何の準備もしておりませんが、私がここの責任者のルラです。申し訳ありませんが、貴族家の事には疎くてバルテッラ子爵家も存じ上げませんで、あなたが誰かも知りません。教えて頂けると助かります」
「なっ!?あなた私を知らないというの!?」
急に怒り出す女性
まあリーヴァさんから聞いたから知っているけど、一応様式美というやつだ
実際遠目にしか見た事ないし、名乗りも受けてない
「はい、バルテッラ子爵家のどちら様でしょうか?」
「くっ、王都劇場で公演をしておきながら私を知らないなんて無礼にもほどがあるわ!」
「あ、もしかして劇場の責任者のご親族でしたか?」
「違うわ!私は王都の歌姫と呼ばれているポチェータよ!王都劇場で公演をするのならそれぐらい知っておきなさい!!」
随分と偉そうにそう名乗られて、ちょっとイラッとした
「それは失礼しました。それならば手紙に書いていただければわかったのですが、家名しか書かれてなかったので、伏せておかなければならないような方だと思ってしまいました」
ポチェータ「私を犯罪者呼ばわりするつもり!?」
顔を赤くして怒っている
どうやら怒りやすいらしい
「なにも犯罪者とは言っていませんし、こちらは想像するしかありませんでしたので。とにかく次からは当日ではなく、前もって名前を書いてから手紙をよこして欲しいですね。断る事も出来ませんので」
ポチェータ「断る!?そんな事が出来ると思っているの?」
「え?ダメなんですか?会うかどうかは私の予定もありますので・・・・」
どんだけ自己中なのだ、私の休みにわざわざ来て
ギャーギャー喚くために来たのか?
リーヴァ「ここでは込み入った話はできませんので、とりあえず応接室に行きませんか?ポチェータ嬢もこのままでは話も聞いてもらえませんよ?」
リーヴァさんが仲介してくれる
このまま帰そうとしたのがバレたか・・・・
会った瞬間から面倒になっちゃったんだよね
急に来て、名乗りもせず、キレるばっかりなんだもん
「・・・・じゃあ移動しますか?このまま帰って頂いてもかまいませんが」
ポチェータ「お邪魔するわ!」
ぷりぷりと怒って屋敷に入っていく
全然帰ってくれていいのに・・・
仕方なく応接室に移動して、対面で座る
メイドさん達がお茶を入れてくれて、やっと一息付けた
リーヴァ「ポチェータ嬢は今日はどういった事でいらっしゃったのでしょうか?当日に来るのは、貴族としてあまり褒められたものではないと思うのですが」
オブラートに包みつつも、『無礼ですよ』と言外に言っている
代弁助かります
ポチェータ「急に来たのは早くお話したかったからですわ。実は先日あなた方の公演を拝見させていただいたの」
「はあ」
ポチェータ「過去最高の人気と謳われていたから、どんなものなのかと気になってね・・・・蓋を開けてみれば、見世物の域を出ないものでしたけども・・・・」
嘲笑うかのようにそういう彼女
「へえ」
そう言われた所で何とも思わない
それに金を払って見に来たのは彼女だしね
何より、彼女の公演の売り上げをとっくに超えている『自分は見世物以下』と言っているようなものだ
ポチェータ「その見世物の中にも良い物がいたから買い取りに来たのよ。あなたの所にいるのはもったいないわ」
「は?」
話が変わって来た『買い取りに来た』そういったか?
リーヴァ「買い取りに来た、とは?何も売りに出してはいませんが」
きっぱりとリーヴァさんが言ってくれる
ポチェータ「何を今さら・・・・彼らは奴隷でしょう?それを買ってあげると言っているの」
くすくすと笑っている
何がそんなに可笑しいのだろうか
「彼らは奴隷ではありません」
真顔でそう返す
ポチェータ「嘘をおっしゃい。獣人奴隷を買って集めていると聞いたわ、まだ若いのに良い趣味をしているのね・・・・言い値でいいわ。ロコという獣人を買わせて。あなたにはもったいないわ、私が愛でてあげる」
「「は?」」
リーヴァさんと一緒に間抜けな声が出てしまった
私達の説明を聞いていたのか?奴隷ではないと説明したではないか
リーヴァ「話を聞いていましたか?彼らは奴隷ではありません。売り買いの対象ではない」
ポチェータ「言い値で買うと言っているのよ?光栄だと思いなさいよ」
少しも悪びれる様子も無くそういい放つ
王都一と言われた歌姫は、中身がクズすぎる
初対面なのに印象は最悪だ
「光栄どころか迷惑です。何度も言いますが、彼は奴隷ではありませんし、あなたの所に行くとは思いません」
ポチェータ「奴隷でもない獣人をどうして傍に置くのよ・・・・理解できないわ」
「私達の公演を見ていたんですよね?彼らの才能は本物です。民衆の興味は今彼らに向いています。あなたの公演よりも客の入りがいいのがその証拠です」
ポチェータ「なにを!私が獣人よりも劣るというの!?」
立ち上がりそうな勢いで激昂している
「はい、あなたよりもお客さんから愛されているのは彼らです。間違いなく」
はっきりきっぱりと、目を見ながらそういうと
わなわなと震えて怒っている
ポチェータ「なっっんて無礼な!私は王都一の歌姫よ!」
「そうらしいですね、私も一度聴かせて頂いた事がありますが退屈でした。歌はお上手なのにもったいないですね」
ポチェータ「こっの!愚民風情が!私の歌の素晴らしさもわからないのでしょう!」
ついには立ち上がり怒っている
「はい、私にはあなたの価値はわかりません。うちの演者の方が良いです。なのであなたに売れといわれても無理ですし、彼らもあなたの所に行きたいというはずがありません。それでも納得できないのでしたら本人の口から聞いてみますか?」
ポチェータ「いいわ!呼んできなさいよ!あなたじゃ話にならないわ!!」
怒鳴り散らす彼女を側近が止めているけど、怒りは収まらない様子だ
「今日はロコくん居ましたか?」
メイド「いらっしゃったかと思います。呼んで来ます」
「はい、お願いします」
呼びに行ってくれたメイドさん
呼びに行っている間も、ぶつぶつと文句が止まらない
あまりにうるさいので、リーヴァさんが「黙っていられないのでしたら、このまま帰って頂きますよ?」と怒っていた
それでやっと静かになったものの、顔は怒ったままだ
リーヴァさんを怒らしたら大したもんだ、とか思っていたけど
さすがにここまでうるさいと怒るか
ロコ「どうしましたか?」
メイドさんに連れられてきたロコくん
ポチェータ「まあまあ、普段着も可愛らしいわね、こちらにいらっしゃい」
急に猫なで声になり、ロコくんに話かけるけど
ロコくんはチラッと見て、こちらに歩いてきた
ロコ「誰ですか?怖いんですが・・・」
そりゃ知らない人に急に呼ばれたら怖いだろう
不満そうな顔のポチェータ嬢を無視して、これまでの事を説明
ロコ「僕を買いたい?この人が?」
ポチェータ「昨日花束を渡したでしょう?私が何不自由のない生活を保障してあげるわ。私の元へいらっしゃい?」
さっきまで激昂していたのに、猫なで声に変わって気持ち悪い
ロコ「僕はもう奴隷ではありませんし、今もなにも不自由してません。僕を買おうとするような人と暮らしたくありません」
きっぱりと言い切ったロコくん、いいぞー
ポチェータ「な、何を言っているの?私は王都一の歌姫で、子爵家の者なのよ?そこでならもっといい暮らしができるし、私の傍でだけ歌っていればいいのよ?」
ロコ「あなたの傍で歌う?どうして?僕は色んな人に聴いて欲しいのに。あなたが何を言っているのかわかりません。僕をいいようにしたいだけでは?不快です」
ポチェータ「なっ」
ショックを受けた顔で固まってしまった
ロコ「いつか誰かの為に歌うとしたら僕のつがいにだけです。おかえり下さい」
真っ直ぐそう言い放つロコくんは、もう大人だ
奴隷の子供ではないのだ
「そういう事です。おかえり下さい」
リーヴァ「この事はパチュリー公爵家を通して、正式にバルテッラ子爵家へ抗議致します。おかえり下さい」
リーヴァさんにまで釘を刺されて、ポチェータ嬢は帰って行った
最後にこちらを睨んでいたので、まだ何か言いたそうだったけど
ロコ「断ってくれてありがとうございました」
「何言っているの!私は誰も売ったりしないよ!!」
ロコ「ふふふ、嬉しいです」
ロコくんの尻尾が左右に揺れている、可愛い
こんな事もあるかと予想していたけど、まさか歌姫が来るとはね
しかもあんな性悪とは思わなかった
きっと、蝶よ花よと育てられたのだろう
人を物のように考えている所は救いようがないな・・・・
なにはともあれ、あとは公爵様にお任せだ
もう、あんな人達が来ませんように!!
ありがとござした!




