カンリオ国の道路作りと、お客さん
テムスンさんが来た2日後
また同じ馬車が来た
しかも、今度は商業ギルドマスターのバードンさんと一緒だ
バードン「会議以来だな、元気そうで良かった」
「お久しぶりです。バードンさんもお元気そうで良かったです。ところで今日は視察ですか?」
つい先日、テムスンさんが来たばっかりなんだけどね
バードン「テムスンさんから、道路が凄いという話を聞いて見てみたくなったんだ。噂通り素晴らしい出来だな」
「ありがとうございます」
テムスン「見た目だけじゃないぞ、作り方も非常識だ」
非常識・・・・って褒めてないよね?
バードン「その言い方は少し失礼ではないですか?」
ほら、バードンさんも苦笑いだ
テムスン「いや、それ以外に表現の方法が思い浮かばない」
バードン「語彙力をなくしてしまったんですか?まったく・・・・」
テムスン「まあ、見てみればわかる」
そう言って2人が離れていったので、作業に戻る
いつも通り道路を作って進んでいく
もう慣れたもので、別の事を考えながらでも作れるようになった
今日のお昼ご飯は何を食べようかなー
ガロルド達はまた町に出かけているし、お昼には戻ってこないだろうから
簡単に済ませようかなー
でも、お客さんが来たし、また一緒に食べるかな?
そんな事を考えて黙々と作っていると、2人がまた近づいて来た
バードン「凄いものだな、テムスンさんの言っている事がわかったよ」
テムスン「だろう?」
どうやら非常識で納得してしまったらしい
なんでだ
「そんなに何度も視察に来なくても、ちゃんと真面目に道路を作ってますよ。ご安心ください」
頻繁に来てるし、非常識って言われるし
何だか邪魔されている気分になって、ちょっと遠回しに「邪魔」って言ってみた
バードン「いや、申し訳ない。見に来たのもあるが、ちょっと話をしたくてな」
「話ですか?このまま聞いてもいいですか?時間がもったいないので」
バードン「ああ、そのまま続けてくれて構わない」
「はい、じゃあ、ちょっと離れて下さいね」
邪魔なので、自分の後ろに立ってもらう
私は道路を作りながら前に進む
バードン「話というのは、酒の事だ」
「お酒ですか?ドワーフ秘蔵の?」
バードン「ああ、それの輸出もそうだが、作り方を公開する気はないか?」
「それはドワーフの2人に聞いてみないと・・・・っていうか、ドワーフが公開していないなら2人に聞いても無理じゃないでしょうか?」
テムスン「やっぱりそうか」
バードン「彼らの生計にかかわりますからね、諦めた方が良いかと」
テムスン「わかった・・・ではウメ酒とやらの方はどうだろうか?」
「梅酒ですかー、あれも特別感を出したくて、うちでしか作っていないんですよ」
バードン「それは理解しているんだが、より利益を出すには増産してもっと広めていくのが良いと思うんだ」
「それなんです。利益が第一でやってるわけじゃないので」
バードン「利益が目的じゃない?一体どういうことだ?」
「集めた奴隷の人たちに仕事が必要なので作っているだけです。利益が目的ならもっと高い値段で売りつけてますよ。彼らのお給料と、次の奴隷を買う為の資金が手に入れば問題ないわけで、これ以上事業を拡大するには人員不足ですし、奴隷以外の人を雇ってまで事業を大きくしていこうという気もないです」
テムスン「言っている事はわかるが・・・・もったいなくはないか?」
「もったいないですか?」
テムスン「ああ、もっと上手くやれば一生遊んで暮らせるぞ」
「あははっ、それならもう一生遊んでくらせるほどのお金を持っていますよ。これでもSランク冒険者なので」
テムスン「あ・・・・」
バードン「君を見ているとSランクだという事を忘れそうになるな」
「ふふふっ、これでもダンジョン踏破だってしているんですよ」
テムスン「それは失礼した・・・しかし、もう一度考えてほしいのだ。ウメ酒をもっと広めて欲しい」
「そんなに気に入ったんですか?」
テムスン「・・・・・正直に言おう。妻が気に入ったのだ」
「え?紹介の試飲の為に渡したのに家族にもあげちゃったんだ・・・」
テムスン「・・・・すまない。妻には逆らえなくてな・・・」
バードン「あー・・・・そういう事だったんですね」
どうやらバードンさんは、私の説得の為に駆り出されたらしい
「お酒の普及のために力を貸して欲しい」って
「ちゃんと正規のルートで買いましょうね。奥さんの為に努力するのは素敵だとは思いますが、私利私欲の為にうちの秘密は明かせないです」
テムスン「そんな・・・そこを何とか・・・・」
「そんなに欲しいんですか・・・うーん、困ったなー」
バードン「私からひとつ提案させてもらってもいいか?」
「はい、なんでしょう?」
バードン「増産は人員がいれば可能なのだろう?」
「そうですね、人員と砂糖の輸入が安定すれば増産も可能ですけど、他の事業にも人員が必要で、今は余分な人はいないんです」
新しく入った人も他の場所で働く予定なのだ、梅酒だけに人を割けない
バードン「ならば奴隷を融通するのはどうだ?」
「奴隷と言ってもニクン国でまともに扱ってもらえない人を買っているわけで・・・ここで買った奴隷を連れていく気はないですよ?」
奴隷になるって事はそれなりに理由があるのだ
自業自得の借金の清算に付き合うつもりはない
バードン「わかっている。それでも君がニクン国で奴隷を買い占めれば、他国にいる奴隷たちがあちらに送られていくのだ、こちらにいる獣人亜人奴隷を買っても同じ事だろう?」
「うーん」
同じかなぁ
確かに、ニクン国で奴隷が居なくなれば
奴隷商は他の国から連れて来るだろう
いわば商品補充だ
この国にいる奴隷も、いずれニクン国に送られて行くのかも知れない
それでもなー
「ニクン国は獣人亜人に対する扱いが酷い人がいるんです。そんな所にわざわざ連れて行く気にはなれません」
私が雇うとしても、周りからの目は変わらないのだ
そんな所に自分で連れて行くのは無理
っていうか嫌だ
バードン「なにもわざわざニクン国まで連れていく必要はないだろう。トレールの所でも酒造はしているんだろう?そこで作ればいいじゃないか」
「あー、それなら・・・・出来なくもないかな?」
あんまり乗り気はしないけど
バードン「私は奴隷という言い方はあまり好きじゃないが、奴隷制度自体は理にかなっているとは思っているんだ。君のように奴隷に理解のある人が仕事を与えて、さらに奴隷から解放されたあとも自分で生きていけるように教育するのは素晴らしい事だと思うのだ」
「ありがとうございます」
バードン「だからどうだろうか?こちらで助けが必要そうな奴隷を厳選して君の所へ送りたい。もちろん費用はこちらで持つし、送り届けるまできっちりしよう」
「助けが必要そうな奴隷とは、具体的にどんな人ですか?」
バードン「一概には言えないが、親に売られた子供。それにニクン国へ送られようとしている獣人亜人奴隷などは助けが必要だろう?もう送られる前に買ってしまえばいいのだ」
「なるほど、それはいいかも」
どれだけ買い占めても、他から送られてくるし
どうせパチュリーに送って欲しいとお願いしているので
送る事が決まる時点で買ってしまったほうがいいかもしれない
バードン「獣人亜人奴隷を買い占めてしまえば、あちらに送られる奴隷達は自然と人族のみになるだろう。あとは、君が必要としている人材も確保しよう。計算が得意な者が欲しいとかあるだろう?」
「そうですね、今は冒険者が不足してます。ダンジョンの採取にこれ以上人を回せなくて」
バードン「うんうん、そういうのだ、そこら辺の埋め合わせが出来る人員をこちらで選別して送る。どうだろうか?それでもウメ酒の増産は難しいか?」
「そこまで人員が確保できるのなら、増産は出来ると思います。問題は場所ですね、今作っている所が手狭になってきたので、別の場所を用意する必要があります」
テムスン「それはこちらから連絡をしよう」
「わかりました。その辺が確定したら、梅酒の増産に取り掛かります」
バードン「良かった。ありがとう」
「その代わり、話とは違う人選の奴隷が送られてきた時は、増産の話も、梅酒の輸出の話も白紙にします。こちらも無限に人を雇えるわけではありませんので」
テムスン「もちろんだ、肝に銘じておこう」
バードン「いやいや良かった。上手く話が纏まって」
「奴隷達の居住地も用意しないといけないので、送る前に連絡してもらえますか?」
バードン「ああ、もちろんだ、人数と何が出来るのかなどの経歴も書いて送ろう」
「お願いします」
なんか変な話になっちゃったけど、人員も確保出来そうだし
ニクン国へ送られそうな奴隷も確保出来そうだ
新しい人を迎える為にちょっと急がないといけないけど、まあそれは仕方ないかな
もう話は終わったし、いつ帰るのかなー?と思っていたら
テムスン「昼ごはんはまだ食べないのか?」だって
どうやら、外でご飯が食べたかったらしい
テムスンさんは外交官なのに、その辺は交渉下手なの?
「私のお昼ご飯が食べたかったんですか?」って聞けば
テムスン「・・・・この前のカレーが忘れられなくてな」だって
バードンさんも「話を聞いて食べたくなった」だって
カレーが食べたかったのか
それなら仕方ないかなー
他所では食べれないものだしね
でも、あのカレーはガロルド達に完食されてしまったので、もう無い
そう言えば、とっても悲しそうな顔になった
ちょっと意地悪しすぎたかな?
「でも別のカレーがありますよ」と言えば、笑顔になった
テムスンさんわかりやす
今日はポークカレーだ、ポークっていうかオークだけど・・・・
チキンカレーを食べた時に、「福神漬けがない!」ってまた思ったので
今回は作っておいた
大根、蓮根、きゅうりの福神漬けだ
今日はポークカレーに福神漬けを添えて出したら
テムスン「・・・・今日は揚げ物はないのか?」と聞かれたので
ガーのフライをプラスで乗せてあげた
もー、贅沢なんだからー
結局2人は山盛りのカレーを食べて、満足して帰って行った
福神漬けも凄く気に入ったみたいで「美味い、美味い」って何度も言っていた
ちょっと面倒くさいお客さんだったけど、人員確保に役立ちそうなので良しとしよう
あと、また来そうな予感がしたので
カレーのレシピを渡しておいた
食べたいって理由でまた来そうだったから・・・
道路作りに専念したいのに、しょっちゅう来られるのは困る
あー、疲れた!
ありがとござした!




