王城魔導士セリーネさんとお話
王城魔導士のセリーネさんから「会いたい」と連絡があった
なので、翌日に冒険者ギルド経由で連絡を取る為に
この日は早めに寝る事にした
それでもすぐには休む気になれないので、1往復だけ王都へ行く事にした
夜の闇に紛れて、いつも通り王都へ侵入して
ラジャの調べでわかっている屋敷に侵入
大人の獣人奴隷が個室に閉じ込められていたので、扉を焼き侵入
気が付いた小部屋の住人が後ずさりするほど驚いていたけど
小声で事情を説明して、連れだす
同じ屋敷の別の部屋にいた、もう一人の奴隷と一緒に王都を脱出した
2人の獣人奴隷は最近王都で起こっている事を知らなかったけど
私がどうしてこんな活動をしているのかを説明すると
「通りでここ数日の食事がまともになったと思った」と言っていた
どうやら獣人奴隷を虐げていた人たちは『天罰』を信じ始めているらしい
作戦は成功と言ってもいいんじゃないだろうか
森の拠点に2人を運び、怪我をしていないか聞いてみたが
どこも怪我はないらしい、良かった
2人曰く、大人の獣人で身体強化が得意な者は主人が暴力を振るっても
よっぽどの事が無い限り怪我はしないそうだ
確かに・・・今さらながら気が付いた
私も父親に殴られても痛みはさほど感じなかったし、痣にもならなかった
身体強化が得意な種族特有の事なのかもしれないが
それが暴力を振るっても良い相手、という風に助長する事に繋がっているのかもしれない
それでも、今までの扱いは酷いものがあり
「連れ出してくれて助かった・・・あそこで一生を終える所だった」と言われた
2人の話曰く、日当は銅貨1枚
日本円でいう所の、10円だ
1年間休まずに働いたとしても、年収4000円もない
奴隷の最低金額が金貨30枚ほどで、高い人なら金貨100枚を超える
それで自分を買い戻すまで働く?
この人が金貨30枚だとしても、70年はかかる
一生奴隷として死なない程度に使う、そういう意図が見え見えだ
今の国王はどう思っているんだ?
話を聞いてみたいものだ・・・
現状を聞いて、王都の奴隷を全員連れて来る事を、改めて決めた
その後、やり切れない気持ちになりつつも寝る
翌朝、少し遅めに起きて朝食を食べてから王都へ出発した
出かける時に、一応3匹はお留守番してもらう事にした
万が一、王城魔導士のセリーネさんがアルジャンの魔力に気づけば困るからだ
教会で魔力の残滓を見てそんなに日が経っていないしね
アンディーは遊びたいみたいなので、丁度良い
あとはガロルドにお任せだ
走って王都まで向かい
冒険者ギルドへまっすぐに向かう
「あの、Sランクのルラです。王城魔導士さんから面会希望が来ていると聞いたんですが」
受付「あら、丁度いいですね。さっきギルドに来られて個室に案内した所なんです」
「そうなんですね、会えますか?」
受付「はい、もちろんです。こちらへどうぞ」
受付さんの案内に従い、2階の応接室へ入ると
教会で会った彼女が座って誰かと話をしていた
受付「失礼します。ルラさんがいらっしゃいましたので、お連れしました」
「失礼します。お久しぶりです」
セリーネ「ルラさん!お会いしたかったです。こんなに早く会えるとは」
「アハハ、どうしたんですか?何か問題でもありましたか?」
セリーネ「お話したい事があるんです。副ギルド長、お話はまた今度お願いします」
「そうですか・・・・では、またよろしくお願いいたします」
残念そうな顔をして出て行く男性と受付さん
扉が閉まると、セリーネさんがため息をついた
セリーネ「ふぅ。ルラさんに会いたいだけなのにあの人に捕まって困っていたんです。再会できて嬉しいです」
「そうだったんですね。ギルドに寄る事が無かったので気づくのに遅れてしまって申し訳ないです」
セリーネ「いえいえ。もう会えないかも知れないと思っていたので、嬉しい限りです。座ってお話を聞いてもらえませんか?」
「はい、もちろんです」
対面のソファに座った
セリーネ「改めて、あの時はありがとうございました。お陰様で教会の悪事を暴く事が出来ました」
「いえ、たまたま通りかかっただけですから」
セリーネ「ふふふっ、そういう事にしておきますね」
含みのある言い方だ、きっと何かに気づいているけど、隠してくれているのだろう
「それで、お話とは?」
セリーネ「ええ、では本題を、あの後の捜査結果をお話したいと思いまして」
「ええ!教えてくれるんですか?」
セリーネ「はい、衛兵からの許可ももらって来ました。事件が解決したのはあなたのお陰ですから」
「解決・・・・したんでしょうか?」
そこは疑問の残る所ではある、雷を落とした犯人は捕まってはいないはずなので
セリーネ「ええ、一応解決した事になりました。『神の天罰が落ちた』という事で」
「おお、凄い。かなり噂にもなってるみたいですね」
セリーネ「はい、あの現場を見た者は全員信じていますね。『天罰』はあると・・・そして王城の上層部にも報告した結果『天罰が下った』という事で処理される事となりました」
「凄い・・・」
本当に天罰が下った事になったんだ・・・
セリーネ「前代未聞の事件ではありますが、おとぎ話では神の怒りで大洪水が起きたとか、一晩で山が消し飛んだなんて話もあるくらいですから。それに天罰が下るには十分すぎる証拠がありましたから」
「証拠というのは、あの焼けた扉の部屋に居たであろう獣人の話ですか?」
セリーネ「はい、あそこに獣人が居たのは司祭以外の聖職者たちの証言で確認が取れました」
「ええ!話をしてくれたんですか?」
それは意外だ・・・自分達の不利になる情報を話すとは思わなかった
セリーネ「ええ、シスター達は司祭に不満が溜まっているようだったので、証言する事で減刑するという話をすればすぐに話をしてくれたそうです。しかし、その証言でわかったのは子供の獣人が3人居たらしいのですが、現在も行方不明でして・・・・本当に神様が連れ去ったのではないかと思うほどです・・・」
「神様が助けた・・・という事なんでしょうかね」
セリーネ「ええ、本当にそうなのかも知れませんね」
「どこかで元気ならいいのですが」
セリーネ「そうですね・・・。引き続き子供達の捜索はするそうです。あと、他のシスター達は全員国外追放で、教皇国へ送り返す事になりました」
「ええ!そんな事も出来るんですね」
それには驚きだ・・・最初っから入れるなよって感じだけど
セリーネ「今回の証言で重罪が一つ確定しまして」
「重罪になるような事が?」
セリーネ「はい、例の獣人の子供3人は元は孤児として引き取った子供だったんです。それを無許可で違法な奴隷として扱いました」
「そんな!」
知っていたが、大げさに驚いて見せる
セリーネ「・・・・信じられませんよね。他の人族の子供達は元気に暮らしているのに、獣人の子供であるという理由だけで、奴隷へと堕としたのです」
「許せないですね」
セリーネ「まったくです。『人族至上主義』か何か知りませんが。何の罪もない子供を奴隷として扱うなど言語道断です」
「奴隷として扱っていたという事は、奴隷紋を刻める人が仲間に居たという事でしょうか」
セリーネ「ええ、おっしゃる通りです。シスターの一人が魔導士でした。なので首謀者の司祭と、実行した魔導士のシスターは犯罪奴隷堕ち、強制労働という事になりました。教会が貯め込んでいた資金も全て没収し、残った関係者は全て強制送還ですね」
「わあ、自業自得ですが、とても素晴らしい対応ですね」
セリーネ「ここまで対処できたのはルラさんのお陰なのです。ですので改めてお礼に参りました。国王も教会を国から追い出す方法をずっと思案してきたので、喜んでおられましたよ」
「追い出す方法は考えていたんですね・・・法整備があまりに緩いのでその辺は考えてもいないのかと思いました」
ちょっとだけ冷たく言い返す
セリーネ「ルラさんの言う事に賛同します。現国王は良く言えば平和主義。悪く言えば逃げ腰。せめて現行の法整備くらいはして欲しい物ですが、教皇国の言いなりに等しいです。お陰で獣人亜人差別が広がりました・・・・この国を教皇国のようにはして欲しくはないのですが」
「ですよね・・・教皇国からの圧力というのは具体的にどういったものなんでしょうか?」
一番気になっている事を聞いてみた
セリーネ「そうですね・・・一番は戦争を盾にされている事でしょうか」
「いう事を飲まないと戦争を仕掛ける・・・という事ですか?」
セリーネ「はい、教皇国としては戦争をしたい・・・という風にも見えますね。この国を昔のように吸収したいのでしょう。そうすれば隣国とも張り合えるのですから」
「なるほど・・・戦争を盾にされたら、断りにくいのはわかりますね」
いう事を聞かなきゃ殴るぞってか
セリーネ「あとは・・・甘味ですね。砂糖の輸入はほとんどが教皇国からの輸入に頼っていて、これが無くなるのは国としてかなりの痛手になります。あと、輸出としてスパイス類を教皇国には買ってもらっていますので、そちらも問題になりますね」
「砂糖とスパイスか・・・」
砂糖と言えばキビ砂糖だ・・・カンリンに行けばかなり安価で買える
しかし、ここまで運ぶとなればかなり時間がかかる
隣国で買えるのならそれが一番安く済むだろう
輸出は・・・・アシタスト国がスパイスは買ってくれそうだけどな・・・
今はニクン国とは反対のカンリオ国から買っているはずだし
思いついた事を話してみる
セリーネ「良くご存じで!おっしゃる通りですね、さすがSランクです。各国の情報にもお詳しい」
「いえ、それほどでも・・・旅で知った事です」
セリーネ「まあ、そう言う事ですね。他国に頼りたくても距離があり現実的ではない。それこそ、馬車で高速移送出来る滑らかな道でも出来れば良いかも知れませんが。それだけの距離の道を舗装するとなれば何年かかり資金もどれほどかかるのでしょうね?」
「いいですね!それ。滑らかな道を作りましょう!」
とても良い話を聞いた、それなら私にも出来そうだ
セリーネ「は?道を作るには莫大なお金がかかりますし、各国とも連携を取る必要があります」
「はい、そうですね。じゃあ私はアシタスト国とカンリオ国と連絡を取ってみますので、セリーネさんに王様との話し合いをお願いしてもいいですか?」
セリーネ「は、はいーーー?」
凄く混乱しているセリーネさん
「時間があれば大陸中に通したいくらいだけどなー」
腕を組んでうんうんと頷く
これなら教皇国に頼らずともニクン国が自立できるかもしれない
そう思うと俄然ヤル気が出て来た!!
ありがとござした!




