教会で起こった事・・・
衛兵さんに「責任者が会いたいと言っている」と言われ
案内に従い教会の中まで入って来た
大きな両開きの扉から中に入ると、荘厳な雰囲気だったんであろう礼拝堂があった
今は、天井に大穴が空き、燃えた後があるし
祭壇があったであろう場所は黒く焦げて、奥にある像らしき物は
黒く焦げて、溶けていた
辛うじて残っているのは、足の形だけだ
それを見るに、かなりの大きさだった事はわかる
像の周りには人がたくさん集まっていて
高そうなローブを纏った人が王城魔導士なんだろう
そして、衛兵さんの案内でひと際存在感のある男の前に連れていかれた
衛兵「お連れしました」
司祭「おお、来たか。君がSランク冒険者か・・・・随分若いな・・・」
ジロジロと品定めをするような視線で、下から上まで見て来る男
聖職者とは思えない豪華な法衣を着て、すべての指には指輪がついているし
金の大きなネックレスまでしている
しかし、一番気になるのはその体だ
丸い・・・・もう転がった方が早いのでは?
そう思うほどには丸い
低身長で、私ともそう変わらない高さなのに・・・・
色々と言いたい事はあるが、今はご機嫌を伺わないと・・・ね
「初めまして。ルラと申します。何かお手伝いを出来ればと思い声をかけさせて頂きました」
司祭「ふむ、若いわりに殊勝な心掛けだ。今、王城から来た魔導士が調べているのだが、何もわからんというのだ・・・この国の魔導士は一体どうなっているんだ。このような神の冒涜は誰かがやったに決まっているだろう!」
大きな声で話すから、魔導士さんにも聞こえているのだろう
無関心そうな顔でこちらをチラッと見ている
高圧的な態度に嫌気がしているって感じかな?
「確かに・・・このような神様を冒涜するような事は許せないですね。しかし、浅学でして・・・ここの教会へ来るのも初めてで、ここに祀られていたのは何と言う神様だったのですか?」
司祭「若いから知らないのか?では教えてやろう、ここにある像は全知全能の神、ガオラン様を模して作られた像があったのだ、それをこのような姿にした奴には天罰が下るだろう!」
「ガオラン様・・・・全知全能の神とは、とても素晴らしい神様なのですね」
司祭「ああ、君も入信するといい。この世の全てを知る事ができるだろう」
「この世の全てを・・・とても素晴らしいですね」
何言ってんだ?入信して何でこの世の全てがわかるんだ・・・・
ちょっと笑いそうになったけど、我慢した
司祭「あの役立たずの魔導士はもういい。君が調べて見てくれないか?犯人が追跡できると聞いた」
「はい、出来ます。では見させて頂きますね」
司祭「ああ、頼んだ」
持ち上げたお陰か、すんなりと像の残骸の前まで行かせてくれた
近くにいた魔導士の人が下がっていくので、会釈しておいた
どうやら離れた所で見学するようだ
「では、少し集中しますので」
焦げた像の足元まで行き、集中して魔力の残滓を探す
本当はフリだけしようと思ったんだけど、本物の王城魔導士が見ているので
フリではなく実際にやっている
それに、あの王城魔導士も同じ事が出来るのだとしたら、魔力の残滓を見て
アルジャンを見た時に気づいてしまうかもしれない
なので、実際に見てどういう魔力の残り方をしているのかを確認する意味合いもある
見てみた結果・・・像にはしっかりと魔力が残っていた
かなりの高魔力だ、さすがアルジャン
そして他にはほとんど何も感じない・・・しかし像から上に向かって
少し・・・ほんの少しだけ魔力を感じる
空中とはいえ、高魔力を放った結果、残像のような物が残っているのだろう
これは都合が良い・・・・
そう思い、何かに気づいたように上をゆっくりと見上げた
顔は驚いた雰囲気にするのも忘れない
「こ、これは・・・・」
信じられない物を見ているかのように、呟いてみた
司祭「ど、どうした・・・上に何があるというのだ」
「空です・・・空から魔法が放たれたようです」
司祭「そ、空だと!?」
「はい、像の上にわずかに・・・本当にわずかですが魔力があります。これは空から放たれた証拠です」
魔導士「失礼します」
離れていた魔導士が近くまで来て、目を瞑り空に向けて手をかざした
しばらくそうした後に
魔導士「本当です・・・・像の上に魔力が伸びている・・・かなりわずかですが・・・これは・・・空から魔法を放った・・・・しか考えられません」
驚いた表情で、言葉を選ぶかのようにゆっくりと告げた
魔導士「こんなかすかな魔力を感じる事が出来るなんて・・・あなたは素晴らしいですね」
「それほどでもあります。エルフの先生からしっかりと学びましたので」
魔導士「エルフの・・・通りで・・・」
司祭「空から魔法とはどういうことだ!そんな・・・そんな事が可能か!?」
「・・・・・神ならば・・・可能かもしれませんね」
司祭「な、なんだと!?」
魔導士「なるほど、彼女の言う事は一理あります。こんな規模の雷を落とせる存在というのは、王城魔導士にも居ません。それを成しえる存在は、神なのかも知れません」
司祭「馬鹿をいうな!ここは神を崇める場所だぞ!」
魔導士「私にも真実はわかりません。しかし、実際に証拠になりえる魔力はそれしかありません。空では辿りようもありません」
司祭「ぐっ、この無能め!!」
衛兵「司祭、落ち着いて下さい。・・・・一応聞いておきますが、何か神の怒りに触れるような事はしていませんか?」
司祭「はあ!?ふざけるな!衛兵の分際で!私は神に仕える司祭だぞ!」
衛兵「失礼を承知で申し上げているんです。とにかく、これ以上は捜査のしようがありませんね」
司祭「こ、ここここ、この能無しどもめーーー!!」
ツバをまき散らし、怒鳴り散らす司祭
見てられないな・・・・
「ちょっと待って下さい・・・・匂いますね」
魔導士「匂い・・・ですか?」
「はい、焦げた匂いが」
魔導士「この像からでしょうか」
「いえ、・・・・木が、木が焦げたような匂いです」
そう言って歩き出す
司祭「ど、どこへ行く」
「匂います。魔力も感じる。こっちです」
魔導士「匂いは、建物の焼けた匂いでは?」
「いえ、こっちです」
早歩きでズンズンと進んで行く
司祭「ちょ、ちょっと待て!勝手に入って行くな!」
早歩きにもついて来れないのか、だんだんと遠くなる司祭の声
やっぱり転がった方が早そうだ
魔導士「魔力を感じるとは、あそこだけでは、ないのですね」
「はい」
魔導士さんは小走りで私について来ているし、その後ろには司祭を置いてきた衛兵さんもいる
角を曲がった所で、私が焼いた扉が見えた
魔導士「あ!焼けていますね!」
「はい、あそこですね」
小走りで向かうと、昨夜のままになっている部屋
衛兵「こ、これは・・・これも昨夜焼けたのか?」
「おそらく・・・そうですね」
魔導士「そうですね、魔力の残り具合からも昨夜、雷が落ちた時とそう変わらないと思います」
衛兵「司祭、これはどういう事でしょうか?どうして報告しなかったんですか?」
ぜえぜえと息を切らした司祭がやっと追い付いて来た
司祭「はぁはぁはぁ」
衛兵「司祭!説明をしてくれ!」
司祭「う、うるさい。聞こえているわ。はぁはぁ・・・ここは元からこうなのだ、昨夜とは関係ない」
魔導士「では、この魔力の残滓はなんなのですか?それに焦げた匂いもしますよ。嘘を言ってもわかる事です」
司祭「う、嘘などついていない。これは手違いで燃えたのだ」
「へえ、こんなキレイに燃える?魔法じゃないとここまで綺麗に丸くは燃えませんよ」
魔導士「ええ、彼女の言う通りですね。普通に火事だとしてもこのようには燃えません」
衛兵「司祭、本当の事を証言してくれないと捜査も出来ない。犯人も見つけられないぞ」
司祭「ううううう、嘘など!つくわけなかろうが!」
かなり焦っているのか、汗がダラダラと流れている
「ここは・・・誰の部屋だったんですか?」
司祭「小間使いの部屋だ・・・」
「小間使い?教会にそんな人が?修行中の方がそう言う事をするのではないのですか?」
司祭「うちでは使用人も雇っている」
「その使用人は何処にいるのでしょうか?」
司祭「別の部屋へ移した」
「その人は人族ですか?」
司祭「そうに決まっているだろう、神聖な教会に人族以外を入れるわけがない!」
「え?人族以外は駄目なんですか?」
わざとそう聞いてみた
司祭「当たり前だろう!人族こそが最上位種族なのだ!!」
「はー、そういった教義なんですね・・・ガオなんちゃらって神様は・・・」
司祭「ガオラン様だ!貴様無礼だぞ!」
「ガオラン・・・そうだったガオラン様。そのガオラン様もお怒りだったんじゃないですか?」
司祭「どうしてそうなる!」
もう顔が真っ赤で、見ていられない
「だって、神の怒りを買ったから雷が落ちたのでは?」
司祭「き、きき貴様!知ったような口をきくな!」
「事実ですよ。この部屋・・・獣人がいたのでは?」
司祭「は?し、知らん!そんなはずは無かろう!」
「ではどうして、毛が落ちているんでしょうね?動物でも飼っているんですか?それにこの鎖は?奴隷を?もしかして獣人奴隷をこの部屋に?」
衛兵「は?教会に奴隷を?しかも獣人奴隷を閉じ込めていたのか!」
司祭「ししし、知らん!知らん!」
魔導士「ではどうして、この扉は焼けているのでしょうか?そして像には雷が空から落ちた。どちらも昨夜に起きた事です。きっとこの部屋にいた奴隷は逃げたのでしょう。神様が逃がしたのかも知れませんね」
衛兵「それも含めて捜査する必要があるな。奴隷が逃げたのならどこかに隠れている可能性が高い」
魔導士「そうですね、早く見つけださないと」
司祭「ち、違う!そんな事は無い!」
衛兵「もういいです。あとはこちらで捜査しますので、上にも報告致します」
司祭「ふ、ふざけるな!私は何も悪い事はしていない!」
衛兵「それも捜査でわかる事なので」
司祭「は、離せ!はなせーーー!!」
衛兵「しっかりと聴取に協力してもらいますから」
司祭は衛兵さんに腕を引かれて行った
魔導士「ご協力ありがとうございました。まさか司祭がそのような事をしているとは・・・」
頭を下げる魔導士さん
「いえいえ、凄く気になったので。自分がしたくてした事です」
魔導士「それでも凄く助かりました。あの悪徳司祭を取り逃がす所でした、それに魔術の腕にも感服いたしました」
「ふふっ、それほどでもありません。あ、少し気になったんですが、右手を浄化しましたか?」
魔力の残滓を探した時に気になっていたのだ
魔導士「・・・・・気付かれましたか・・・・実はあの司祭と挨拶した時に握手したのです。厭らしく撫でられて・・・・浄化せずにはいられませんでした・・・」
「あははっ、それは浄化したくもなりますね」
こうして、司祭を含めた教会関係者は衛兵さんに連れていかれた
がっつりと聴取されるんだろう
教会から出て、行きに寄った屋台に行く
「どうですか?売れていますか?」
「お、嬢ちゃんも教会を見て来たのか?見ての通り全然売れねえよ。みんな教会に興味津々だ」
「そうなんですね・・・実は教会の中を見て来ましたよ」
「なんだって!どうやって中に入ったんだい!」
「まあまあ、声を小さくしてくださいよ」
「あ、ああ」
屋台のおじさんに近づいて、今までのいきさつを話す
「ま、まじかよ・・・」
「へへっ、丸い司祭の顔を見せてあげたかったですよ」
「ははっ、悪い顔してるぞ」
「ま、それは良いとして。ちょっと相談が」
「なんだい?」
「この屋台のお肉を全部買い取るので、ちょっとお仕事を頼まれてくれませんか?」
「は?全部買い取る?」
「はい、良く聞いて下さいね」
屋台のおじさんにやって欲しい事を説明する
真剣に聞いてはいたけど、だんだんと笑顔になるおじさんに笑ってしまった
「なんだいそりゃ・・・めちゃくちゃ面白そうじゃないか」
「でしょ?この町の為にもなるし、良くないですか?」
「乗った!」
「やった!じゃ、これ全部もらって行きますよ!」
「もってけドロボー!」
「いやいや!買いますから!」
そんなやりとりをしつつも、残った肉串を全部買い取った
かなり安くしてくれたので、ありがたい
そして、屋台のおじさんは楽しそうに店じまいを始めた
「じゃあ、お願いしますねー」
「ああ!任せときな!」
笑顔でおじさんとお別れして
宿屋に戻る
「さ、ラジャと移動だ」
森の拠点へ移るので、日が暮れるまでに行かないと!
いつも読んでもらってありがとうございます
誤字脱字報告たいへん助かっております
いつもありがとうございます
感謝!
ありがとござした!




