閑話 他視点 『魔寄せ』探し マーダルの町 3
彼女・・・・ルラちゃんが言うには
町を守れる人に強い武器を持って欲しい
できればワイバーンを倒せる実力がある人に
そうすれば、自分がここに来れない時でも対処できる
先ほどの戦いでもそうだけど
ワイバーンとの戦いで大きな怪我もなく、戦い続けられていたのは
うちだけだった
あれだけ傷をつけられるのなら、倒せる武器を持てば十分狩れるだろう
と、言うのがルラちゃんの見立てだ
さっきまで「ミスリル武器があればなー」なんて話をしていた所に
こんな都合の良い話が来るなんて予想外も予想外だ
しかも、相場の半額で良いという
最初こそ、そのまま渡そうとしていたから、ちゃんと支払うと言った
半額で譲ってくれるというのなら、断る理由なんて無い
ルラちゃんが見せてくれた宝箱はダンジョンで見つけた物らしく
大きく、人が一人入れる大きさだった
その宝箱にパンパンに入っていたらしいから、とんでもない量だ
すでに他のパーティにいくから譲ったらしいが、それでもまだまだある
斧2本分ほどを譲り受けて、金は振り込む事を約束した
こういう時の為にしっかりと貯金してきたので、一括で払えるはずだ
受け取ったミスリル鉱石を大事にしまって
冒険者ギルドまで戻って来た
パーティ仲間は先に宿に戻らせて、ギルマスの部屋までルラちゃんと一緒に来た
ノックをして部屋に入り
ルラちゃんの紹介と、『魔寄せ』を回収してきた事を報告した
もちろんワイバーンも討伐した事も報告
ルラちゃんが一撃だったと話をすると「まあーーー!」って驚いていた
実際に目で見ていたらもっと驚いていただろうな
討伐の報告と、ルラちゃんのツレが残って残党狩りをしてくれている事を言えば
もう報告はいいだろう
疲れているから、俺は先に休ませてくれと言って部屋を出た
明日の朝から、続きを手伝う事にして
みんなが待っている宿に向かった
報告が終わった事と、明日の朝にまた森に行く事を伝えて
自分は家に帰る
俺は帰る家があるからな
生まれも、育ちもこの町で
幼なじみと結婚した
だから一生この町で生きるつもりだ
今回の事は、人生で一番の事件だった
冒険者を続ける限り、いつかはある事だろうとは思って、覚悟してたつもりだったが
実際に町が襲われるかもしれないと考えると、身がすくんだ
Aランクにまでなれて、これ以上強くはなれないだろうと勝手に思い
特に努力する事なく、毎日を過ごしていた
家族を養えるだけの稼ぎと、任務を安全にこなせるだけの実力があれば
それでいいと安心していた
だが、実際はどうだ
町の危機に
ワイバーンの襲来に対処できなかった
ルラちゃんが来なければ、どうなっていたのか・・・・・
体力の限界が来て
いつかワイバーンに喰われていただろう
そうなればどうなっていた?
町は?家族は?
誰かが守ってくれるか?
俺がいなくなった後、家族は暮らしていけるのか?
現実と不安が目の前にあった
危機に面するまで、その事に気づけなかった
気付けて良かった
これから、より一層腕を磨こう
もっと長時間戦えるように、誰も失わないように
新しい武器も手に入る
もっと強くなれるはずだ
全てとは言わない、手が届く範囲を
守りたい
家について、ドアをノックする
バルトラ「帰ったぞー」
パタパタと走ってドアを開けに来てくれる音がする
「おかえりなさい」
「おかえりなさーーい」
ドアが開いてすぐに、娘が飛びついてくる
家の中は明るく
嫁さんは笑顔で迎えてくれる
バルトラ「ああ、ただいま」
「どうだった?もう終わったの?」
心配そうな顔でそう聞いて来る
大規模な討伐があるから何日も帰れないと、伝えていたのだ
バルトラ「ああ、さっき終わったんだ・・・・明日、片付けをして終わりのはずだ」
「そう、良かったわ・・・・無事で」
「パパ頑張ったねー!」
バルトラ「ああ、良かった」
娘を抱っこして、嫁さんを抱きしめた
ああ、温かいな
無事で良かった
家に帰って来れた
生きてて良かった
しばらくそのまま、家に帰ってこれた事を噛みしめた
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ギルドマスター ソラリス視点
ワイバーンが襲来した報告を受けてから、王都に応援要請をしたが
ここに来るまでに5日はかかる事を理由に断られた
『町での防衛戦に切り替えろ、対ワイバーンにバリスタがいくつかあるはずだ』
そんな返事が返ってきたのだ
ソラリス「馬鹿な事を・・・・」
バリスタがワイバーンに簡単に当てられると思っているのか
刺さるかどうかもわからないものに頼れとは・・・・阿呆としか言いようがない
こんな阿呆に頼るくらいなら、カンリンからの応援が着くのを待った方がいいだろう
今日が3日目で、日が暮れるまでには着くだろうと思っていたが
まだ到着の連絡はない
ソラリス「どうしたものか・・・・・」
バルトラ達がいつまで持つものか、日が暮れてもワイバーンが山に帰ってくれるかもわからない
答えが出ないまま、数時間経ち
冒険者たちが半数ほど町に戻って来たと報告が入る
ソラリス「どういう事?」
「ワイバーンの襲撃での怪我人と、休憩の冒険者が先に帰って来たようです。どうやらワイバーンは討伐済み、しかし、『黒戦斧』は森に入っていったらしく、残った冒険者たちはそれを待っているようで・・・・」
ソラリス「ワイバーンを討伐?バルトラ達が?」
そこまでの実力があったのかしら?驚きだ
「いえ、冒険者たちは『空から天使が来た』と言っていました・・・・・おそらく例のカンリンからの応援だとは思うんですけど。空からやって来たんだと、誰もがそう言っていました」
ソラリス「空から・・・・それは天使に見えるでしょうね・・・」
魔法かしら?そんな上級の魔法が使える人がこちらに応援に来てくれたのだろうか
とにかく、問題のワイバーンはもう討伐されたらしい
間近の脅威は去った
しかし、『魔寄せ』が見つかるまでは安心できない
またワイバーンが来るかもしれないのだ
バルトラ達が無事に戻って来る事を祈った
そして、王都には連絡を
『カンリンからの応援によってワイバーンは討伐完了しました。バリスタでワイバーンを倒せると考えておられるようですが、実際にやってみてから言って下さい。痛い目を見るのはあなたです』
そう書いてやった
うちのAランク冒険者が傷しかつけれないのに、バリスタが効く訳がないだろう
老い先短い人生だ、怖いものなどない
言いたい事は言わせてもらうわ
この手紙を受け取ってどんな顔をするのか見てやれないのが残念ね
完全に日が落ちて、しばらく
バルトラが部屋にやって来た、可愛らしいお嬢さんを連れて
そこで、報告を受ける
カンリンからの応援、ルラさん
そして、『魔寄せ』の回収と
ワイバーンの討伐
なんとワイバーンを一撃で倒したと
バルトラが嬉しそうに話をしてくれた
そんな事が可能なのか、信じられない気持ちだったけど
バルトラが言うのなら本当なのだろう
疲れているバルトラが先に帰り
ルラさんと2人で話をする
改めて自己紹介をして、今回の事のお礼を言う
感謝してもしきれない、彼女がいなければ町も危なかった
しかも、バルトラ達がミスリルの武器を持てるように
ミスリル鉱石を譲ってくれたらしい
次からはバルトラがワイバーンを倒せるようにとの配慮かららしい
確かに、ミスリル武器ならば倒せるかもしれない
今後の話をして、ルラさんは森の手前で仲間が待っているから戻ると言って行ってしまった
同じパーティメンバーが残った魔物の対処をしてくれているらしいので
明日から残った冒険者で掃除をしないといけないな
一時はどうなるかと思ったが、何とかなった・・・幸運だった
彼女がもう少し遅かったら
バルトラが倒れていたら
今のようにはなっていなかっただろう
報告によれば
今回の討伐で死者はゼロ
怪我人は多数出たが、どれもポーションで対応できた
町が襲われる事も無かった
カンリンから、先に連絡が来た事も良かった
対応が早くできた
魔物が増えている事に気づかずに、森から魔物が溢れた状態からの対処では
もっと怪我人増えていたに違いない
全てが運命のように上手く嚙み合った
一時は、最後の時をここで・・・・とも思ったが
ソラリス「空から来るとはね・・・・・本当に天使なのかもね・・・・・ふふふっ」
歳は取ったけど
天使と出会えるとは
ソラリス「長生きするものだわ・・・ふふっ」
その後、王都から返事はなく
嫌味を言われるものかとも思ったのに、張り合いがない
そろそろ引退を考えていたけども、どうやらまだ早いと言われているようだ
ソラリス「良い死に場所を用意してもらわないとね」
ひとり呟く
この町を守る為に、まだ立っていよう
次のギルドマスターが決まるまで、もしくは死に場所が見つかるまで・・・・・ね
ありがとござした!




