閑話 他視点 『魔寄せ』探し マーダルの町 2
俺達が何時間も戦っていたワイバーンが目の前に倒れている
空を飛んでいたヤツも地に落ちて来た
目の前の彼女がやったのだ、たった一撃で
走り寄って話かけられる
「こんにちは、カンリンから来たルラです。状況説明をお願いします」
バルトラは目の前に彼女が来て初めて、幼い顔だという事に気が付いた
驚きつつも現状を説明して、森が発生源だと言った
「なるほど・・・・じゃああの森が一番魔物が多いんですね?」
バルトラ「そうだ、今も増えすぎないように戦っているが・・・・もうじき日が沈む・・・だが、怪我人も多く出ちまって、どうしたもんか・・・・」
ワイバーンとの戦いで高ランクは半数まで数が減った
しかも日が沈む
俺と彼女の目線は怪我人が集められた場所に向いている
ポーションにも限りがある、命に関わるような怪我に優先して使われているが
さっきのワイバーンにやられた足が千切れかけている奴は、もう助からないかもしれない
足を切って、上級ポーションで傷を塞ぐくらいしかできない
しかし、それでも血が流れ過ぎている
助かるかどうか・・・・
そう思って見ていたが、彼女が歩み寄り
ポーションを渡した「これを使ってください」
これでなんとか血が止まればいい、そんな気持ちで見ていた
治療に当たっていた奴がポーションを受け取って、患部にかけた
その瞬間光があふれ、みるみる骨や肉が再生していく
そこには元の形に戻った足があった
呆然と眺める、まさか特級ポーションを渡した?
この効き目はそれ以外ないだろう
しかし、こんな簡単に渡すものでもない
「良かった、治りましたね。残りは飲ませてくださいね」
当然の事のようにそう言う彼女は追加で、たくさんのポーションが入ったカゴを渡した
「これを預けておきます。残りの負傷者に使ってください」
そして、俺の傍に来て
「行きましょう。森に・・・・援護をお願いします」
バルトラ「は?今から森に!?日が沈むぞ」
何を言い出すんだ
「だからです。明日にはまたワイバーンが来ますよ!急いで!」
彼女の言う通りだ、ぐうの音もでねえ
バルトラ「グッ、くそっわかったよ!いくぞお前ら!」
「「「ええ!?」」」
もうやるしかねえ、森へ向かって走った
彼女は森に入った瞬間にライトをいくつも浮かべて、辺りを明るくした
これなら戦えそうだ
しばらく走って、止まり
「今から『魔寄せ』を探します。しばらく無防備になるので警護をお願いします」
バルトラ「わ、わかった!」
そして彼女が背中のカバンを開けると、黒い獣が飛びだしてきた
「アスターとアンディーもよろしくね」
「きゅう!」「みゃう!」
いつの間にか彼女の肩には白い小さな毛玉も乗っていた
いままでそこにいたのか?
どうやら戦う気らしく、彼女の傍で周囲を警戒している
「こっちに行きます」
彼女が進む方へついて行き、襲ってくる魔物を倒した
白い方は雷の魔法、黒い方は風の魔法を使い、簡単に魔物を倒していく
もしかして、さっきのワイバーンを倒した魔法はこの小さな白い毛か?
何かふわふわ浮いてるし、ただの動物じゃない
黒い方も猫っぽく見えるが、少し白い模様も入っている
どっちも見た事もない生き物だ・・・・
最初こそそんな事が気になっていたが、彼女が移動する先には
だんだんと魔物が増えてきた
何とか倒しつつついて行く
途中でさらにライトの数を増やしてくれて、さらに広範囲が見えるようになったが
見えるのは魔物と木ばかりだ
バルトラ「まだ、こんなにいやがる」
小さく呟く
ワイバーンとの戦いで体力もだいぶ使ったし、斧を握る手も震える
疲れから来るものだ
今、全力で振れば斧が飛んでいくだろう
それぐらいには限界が近い
パーティメンバーも汗みずくになって、頑張ってはいる
しかし、あいつらも限界が近い
ここまで来たが、彼女に限界を言おうか迷った時
「たぶんこの辺です!もうちょっと頑張って!」
そう言われて反射的に答えていた
「「「おう!!」」」
俺だけじゃない、他のやつらもまだヤル気だ
やってやろうじゃねえか、限界ってのは超えるもんだ
ここで超えなきゃいつ超えるってんだ!
力を振り絞って斧で魔物を殴る
ドスドスドスドスドスドスッ、ドスドスドスドスドスドスッ
押し寄せる魔物を彼女が弓で倒していく
一気に戦いやすくなった
ここら辺にあるのは間違いないんだろう、彼女が辺りを探しまわっている
時間を稼げば何とかなる、そう信じて戦い続けた
「見つけました!後は任せて!」
そう聞こえた次の瞬間、魔物が次々倒れていく
見えるのは赤い斜線、ザシュッ、ドシュッ、ズバッ、聞こえる魔物を切る音
対峙していた魔物たちは倒れ、首が切られている
何が起こっている?
ライトで照らされたよりも遠く、闇のなかでもわかる
紅い斜線
しばらくして、音もなくなり
闇から彼女が歩いてきた、両手に持つ剣からは紅い光がにじんでいる
剣を振り血を飛ばして、納刀した
その軌跡は紅くたなびいていた
そうか、あの紅い斜線は彼女が戦っていたのか、そう理解した
「お疲れ様でした。『魔寄せ』を回収したので戻りましょう」
やっと助かった実感が出て来た
ニトは泣き出してしまった
一番若いのだ、無理もない
限界まで頑張った事を、後で褒めておこう
「援護してもらって助かりました。町に一度戻りましょう。これどうぞ」
ふらふらの俺達にポーションを渡してくれる
まだ持っていたのか・・・だが、正直ありがたい
本当にいいのか確認を取ったが
「手作りなのでほぼタダですよ。遠慮なくどうぞ」だそうだ
大量のポーションを持っているのも頷ける
しかも美味しいポーションらしい
俺達全員で、嬉々として飲んで
疲れた体に沁みる甘い味に癒された
これが通常のポーションになればいいのに・・・・
「さあ、帰りましょう。帰りの魔物は私が倒しますから」
少し元気になったが、お言葉に甘えて戦闘は任せた
歩いて帰る道中は彼女が弓で簡単に倒していくのを見ながらだった
矢を放つスピードが尋常じゃないし、1本の矢じゃなく2本にも3本にもなる
矢も普通じゃない、どうやら魔力で矢を作っているみたいだ
『魔弓』ってやつだろうか、初めて見る
次元の違う戦いを見て
彼女があの時森に入ろうとした判断は間違いなかったと思った
明日来るかもしれないワイバーンは町に行くかもしれない
ここで『魔寄せ』を回収していなかったら・・・・そう考えただけで恐ろしい
森を出ると、たくさんのかがり火を焚いて、冒険者たちが待っていてくれた
「無事だったか!」
「生きてた!」
俺達が戻って来た事をみんなが喜んでくれて、ちょっと泣きそうだったが・・・・我慢した
生きている実感が湧いてきて、何とも言えない気分だ
「兄ちゃんの言っていた通りだったぜ!」
「やるなあ!」
そう話をしている冒険者の声が聞こえた
「お疲れ様。さっきついた所なんだ、『魔寄せ』はあったか?」
彼女に話しかけている、背の高い男
「ガロ?」
驚いた様子で見つめている
すると彼女めがけて白い物体が飛んで来た
彼女が受け止めた物は、小さなドラゴンだった
「アルジャン・・・・元気だった?」
きゅぃきゅぃ鳴いて彼女にすり寄っている
ドラゴンまで使役しているのか?
彼女は本当に天の使いなのかもしれないな・・・・
背の高い男と、エルフと親しげに話をしているから
同じパーティメンバーなのかもしれない
話を聞いていると
どうやら彼らがここを守ってくれるらしい
残った魔物も彼らが対処すると言っていた
怪我人も町に戻ったらしいし、俺達も一度町に戻る事にした
彼女も報告をするので、一緒に町まで歩いていく
バルトラ「さっきの兄ちゃんがパーティメンバーなのか?」
気になった事を聞いた
「はい、私達は『アルラド』っていうSランクパーティです」
なんと、彼女たちが噂のSランクパーティだった
通りで強いはずだ、間近で見れてラッキーだった
ここで、今さらだが自己紹介をした
彼女に『戦斧』がカッコイイと言われて、照れちまったが
ワイバーンを倒せないんじゃ話にならない
ミスリルの斧でも持てないかと冗談で話をしていたら
「あの、『黒戦斧』の皆さんは地元密着のパーティなんですか?」と聞かれ
素直に地元民だけだと話をした
町を離れるのは護衛依頼くらいだ、俺は家族もいるしな
そんな事を話すと、「そうなんですね!」と、なぜか嬉しそうで
「あの・・・・提案なんですけど・・・」
提案とはなんだろうか?
命の恩人の言う事なら出来るだけ聞いてやりたい
そんな事を答えると
「良かった!ミスリル武器を持ちませんか?ミスリル鉱石をたくさん持っているんです」
「「「「は?」」」」
完全に時が止まった
言っている事はわかるが
理解が追い付かない
ミスリル武器が欲しいとは言ったが
「持ちませんか?」「ミスリル鉱石をたくさん持っているんです」
は予想外すぎる
返事ができずにいると、彼女が考えている事を話し始めた
どうやら天使様は俺たちの考えのはるか高い位置にいらっしゃるらしい
彼女の説明を聞いてそんな事を思った・・・・
ありがとござした!




