閑話 他視点 『魔寄せ』探し バシールの町
バシールの町
冒険者ギルドマスターウジョーラは『緊急連絡』を読んでうんざりしていた
ウジョーラ「なんでこんな事に・・・・」
大陸の各地に『魔寄せ』があるかもしれないなんて
どうして俺がギルドマスターをやっている時にこんな面倒な事が起こるんだ
ぶつぶつと文句を言いながらも、冒険者たちを町の方々へ派遣して調査を行った結果
町から北にある渓谷に魔物が増えているとの報告があった
ウジョーラ「嘘だろう・・・・」
絶望的な報告に天を仰いだ
『魔寄せ』を隠すのなら町から近くて、人があまり来ない所
森や渓谷だろうと思っていたが、ビンゴだ
こんな時に当たって欲しくない予想が当たるとは・・・・・
ウジョーラ「本当にツイてない」
文句をタレつつも、冒険者たちを渓谷に向かわせて、間引きのみを依頼した
どうせ見つけるなんて不可能に近いだろう
連絡があった通り、『魔寄せ』を探せる者を待つしかない
到着までは時間がかかるだろうし、長期戦を見越しておく
冒険者たちを派遣したあとは、物資の運搬と、倒した魔物の回収もさせる
しかし一番困ったのは、ポーション類だ
小さな町では用意できる数が限られている
増産を急いでもらうとして、特級ポーションなんてない
大怪我をすれば命を失いかねない、冒険者たちにもちゃんと伝えておく
どれだけ気を付けていても怪我をするのが冒険者だ
寝る間も惜しんで、近くの町からもポーション類をかき集めて
なんとか安心できそうな量が確保できた・・・・が、これも何日持つかはわからない
不安なまま2日が過ぎた
毎日出る怪我人
戦っていて、怪我をするななんて無茶な話だ
追加で頼んではいるが他の町も全てを吐き出す訳にはいかないだろう
材料になる薬草を採りに行かせていても、それから加工もしなければならない
それを考えるとため息が出た
ウジョーラ「なんでこんな事に・・・・」
頭を抱えて『魔寄せ』なんて物を置いた奴を恨んだ
この町が魔物に襲われるなんて事になったら絶対に許さない
この現状になった原因のヤツを恨みだしたが、どこのどいつとも知れない
ウジョーラ「ああ、早く来てくれ・・・・」
そう祈ったが、カンリンからは何日もかかる
それは理解していた
絶望した次の日に彼女は来た
まさかこんなに早く来てくれるとは思わなかったが、素直にありがたかった
3徹夜目に見た彼女は若く見えた、だがそんな事も気にならないくらい疲れていた
軽く自己紹介をして、現状を話す
「なるほど?じゃあ私が単独で行って『魔寄せ』を回収して来いって話ですね?」
ウジョーラ「誰かつけて欲しいならつけるが」
「いえ、結構です。行ってきます」
彼女は淡々と話しをして、もう行こうとする
ウジョーラ「それでいいのか?」
もっと質問とかないのか?
疲れすぎて回らない頭で疑問を投げかけると
「それでいいもなにも、作戦もクソもないんでしょう?勝手に行って回収してきますよ」
そう吐き捨てられた
ウジョーラ「いや、そうなんだが・・・・」
「ちょっと言いたい事がわかりませんね。だいたいの場所がわかれば一人で行ってきます。地図のどのへんですか?」
ウジョーラ「ああ、だいたいこの辺だ、渓谷の一番深い所が魔物が多いらしい」
「一番深い所・・・・だから間引きで対処してるんですね」
どうやら彼女が欲しかった情報がこれだったらしい
なんとかたどりつけた・・・・
ウジョーラ「そうだ、冒険者たちはこのへんで野営をしつつこっちに来ないように間引いてくれている」
「なるほど・・・・理解しました。見つけたらすぐに戻って来ます」
ウジョーラ「ああ、頼んだ」
彼女はさっさと部屋を出て行ってしまった
ウジョーラ「あー、なんか怒らせたかも・・・・・ダメだ頭が回らない・・・」
どうやら限界が近いらしい、そろそろ少しは寝ないと・・・・
最後の力を振り絞って物資の手配を済ませて、ソファで仮眠をとる
横になったらすぐに意識を手放した
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一方その頃、渓谷の冒険者たち
『魔寄せ』により魔物が増えて、渓谷の魔物の間引きを依頼されて数日
渓谷の入り口に野営をして、毎日狩りをする
『魔寄せ』がどこにあるのか探せる人物が派遣されてくるらしいが
一体いつになるのかはわからない
長期戦になる事を見越して、対処するようにギルドマスターからは言われているが
毎日狩りばかりで、正直疲れた
保存食ばかりだし、狩った魔物の肉を焼くくらいしかできない
「ああー、町の食堂で飯が食べたい」
「おい、そういう事言うなよ」
「そうだぞ、ここを守らないと町が危ないんだ」
「わかってる」
理解はしていても、欲望は収まらない
渓谷の入り口付近にいても魔物が来るって事は奥はもっと魔物がいる
高ランクが討伐しているはずだが、ここまで魔物が来るんだ
放っておけば、魔物が溢れるのは明確だ
うんざりしながらも戦う
しかし3日目に彼女は現れた
「こんにちは」
声をかけられて驚く
「ここに『魔寄せ』を回収しにきたルラです。魔物が一番多い所を探してまして」
「はあ!?こんな若い子が?」
「ギルマスがここに来いって?」
「あのアホギルマスめ!」
だらしないし、ヤル気がないように見えるギルドマスターに不信感が出る
こんな若い子を派遣するなんて、そう思ったが
「まあ、そうなんですけど。私はSランクなので心配しなくていいですよ?それよりも・・・」
返ってきた返事にまた驚く、噂のSランクだ
「聞いて!早く『魔寄せ』を回収しないといけないの!!魔物が多い場所を教えて!」
「うおっ、そんな怒るなよ。あっちだ、あの先はかなり増えている」
「わかった!ありがと!」
すぐに走り出した彼女に「ついていこうか?」なんて声をかけたけど
早すぎる・・・・ついて行ける気がしない・・・・
「はや・・・・」
「あれはついていけない・・・」
「俺達は俺達の仕事をしよう」
「そうだな、彼女が『魔寄せ』を見つけてくれたらこれも終わるだろう」
「そうだな!ヤル気でてきた!」
「頑張ろう!」
そこからいつもより精力的に討伐を頑張った
だって終わりが見えてきた
彼女が希望だ
頑張って討伐を進めていると、彼女が走って戻ってきた
「こんにちは、お兄さんたち今夜もここで野営しますよね?」
「あ、ああ。そのつもりだ」
「『魔寄せ』を回収できたので、あとは魔物の殲滅だけなのであと少し頑張って下さい。これは差し入れなので野営している冒険者さん達で分けて下さいね」
そう言って、カゴに入ったポーションをくれた
正直かなりありがたい、ポーションはもうほぼ無い
追加のポーションも期待できそうもないし・・・・
しかも『魔寄せ』の回収も終わったとは・・・・こんなに早いとは・・・
「みなさんそろそろ物資も厳しいのでは?他に困っている事はありませんか?」
「あ、ああ。ポーションは残り少ないし。食料もそろそろ尽きるパーティもいそうだ。まあ魔物を狩って食えば大丈夫だ」
素直に現状を伝えると
「やっぱり・・・ポーションはケガ人にあげて下さいね。あと魔法カバンは持ってますか?」
「あるけど・・・・」そう答えると
カゴに入ったサンドイッチを取り出した
かなり美味そうだ・・・・今の自分たちにとってはご馳走でしかない
「空きがある分に入れて下さい。まだ入りますか?」
「入る!はいる!」
そう答えると、次々と出してくる
どうやら野営をしている冒険者たちすべてに渡すつもりらしい
魔法カバンがぱんぱんになるまで受け取って
「ちゃんと分けてあげて下さいね?受け取ってくれた特権として、美味しいジャーキーをあげますんで」
そう言って、何切れかのジャーキーを取り出して、人数分配った
毎日干し肉を齧っていた自分たちには、ジャーキーなんて・・・・って気持ちがあったが
匂いを嗅いで・・・・気持ちが変わった
少しちぎって食べて・・・・目が見開かれて
「これをこのパーティに特別にあげますんで。しっかり配ってあげてくださいね!約束ですよ!破ったら剣百本飲ましますからね!」
「わかった!絶対やり遂げる!!」
「任せとけ!」
「うんうん!」
ヤル気がみなぎった、これが食えるのなら何でも受けよう
それぐらい美味い
頷きまくる俺達にもう一枚ずつ配り
「信じますね。あと少し頑張って下さい。ギルマスに物資を頼んでおくので」
最後まで優しい彼女は爽やかに笑って走って行った
大きく手を振って見送ると
「やるか・・・」
「そうだな・・・」
「彼女の為だ!」
さらにヤル気が出た!
日が沈むまで殲滅を頑張り、戻ってきた冒険者たちに労いの言葉をかけながら
『魔寄せ』が回収された事を伝えて、サンドイッチとポーションを配った
普通の食事に飢えていた冒険者たちは喜んで食べて
「うまい!」「うめえ!」「美味すぎる!」と絶叫していた
配った俺達にお礼を言ってくれる冒険者たちが多かったが、彼女の名前を言った
「ルラっていう女の子がくれたんだ」
「ああ、Sランクだぜ」
「可愛いし、走るのも早い」
「メシも美味い!」
「ルラちゃんかー」
「会いたかったなー」
「サンドイッチありがとうっていいたいぜ」
口々に冒険者たちが言う、気持ちはわかる
そして完全に日が沈むころに物資を乗せた馬車が到着して
サンドイッチを頬張る冒険者たちを見て「どういう事だ?」と首をかしげていた
笑って、現状を説明
『魔寄せ』が回収された事も報告してやると、大喜びだ
せっかく持ってきてくれた物資も配り、今夜は豪勢な夜ごはんだ
ポーションが足りなくて、怪我を治せなかった人も治癒できた
彼女が来て風が吹いた
良い風だ
久しぶりに渓谷に笑い声が響いた
ありがとござした!




