ブルーグラス・ブリューと弟子の選択
第3章で、ハルキは異星の修道院で目を覚ます。そこで彼はグル・ヨゼイとその弟子レンジに出会い、温かいブルーグラス・ティーを振る舞われる。タオル一枚の姿で未知の惑星を歩き回る危険を悟ったハルキは、その場にとどまり、修行を始めることを決意する。著者のあとがきでは、ハルキの最初の拠点構築について触れられており、今後の章で展開される修行編への伏線も示唆されている。
異星の朝が訪れ、松平春希は人生最大の決断を迫られます。見知らぬ天井、見知らぬ人々、そして奇妙な飲み物。すべてが手探りの中で、春希は己の力で生き抜くための第一歩を踏み出すことになります。
翌朝、春希が目を覚ますと、部屋の窓からは地球のものとは明らかに色合いの異なる、どこか神秘的な淡い紫色の朝焼けが差し込んでいた。戸惑いながらも起き上がると、部屋の入り口に老師ヨウゼイと、もう一人の人物が立っていた。それはヨウゼイの筆頭弟子であり、春希の案内役となる青年、**レンジ(Renji)**だった。二人は春希を温かく迎え入れ、レンジの手から一つの陶器の器が手渡された。
器の中には、この幻想的な惑星に特有の珍しい植物から淹れられた、温かいブルーグラス(碧草)の茶が注がれていた。口に含むと、大地の清々しい香りと、体中の細胞がじんわりと目覚めるような不思議な温かさが広がっていく。春希がホッと一息ついたのを見計らい、ヨウゼイが穏やかに問いかけた。
「さて、異界の若者よ。まずはお前の名を聞かせてくれ」
「……松平、春希です」
ヨウゼイは頷き、本題を切り出した。
「ハルキよ。お前に二つの道を示そう。この修道院のコミュニティに留まり、私の弟子となって新たな技術や生きる術を学ぶか。それとも、ここを出て、ただ一人の放浪者としてこの広大な未知の国々を彷徨うか。選ぶのはお前自身だ」
春希は器を見つめながら、深く思考を巡らせた。バスタオル一枚で、靴すらなく、言葉もろくに通じない。この状態で外に出れば、一日と持たずに野垂れ死ぬのは目に見えていた。何より、昨日の裏切りの痛みを抱えたまま、ただ宛てもなく彷徨う気力はなかった。ここで力を蓄え、この世界のことを知るのが最善の策だ。
「……ここに残ります。ここで、戦うための、生きるための何かを学ばせてください」
こうして、春希の修道院での新たな生活が正式に幕を開けた。
落ち着いたところで、春希はずっと気になっていた疑問を口にした。
「あの、ここはどこなんです? この町や村の名前は……それに、この世界にはどんな国や地理があるんですか?」
ヨウゼイは白髭をなでながら、意味深な笑みを浮かべた。
「焦るな、ハルキ。広大な宇宙を越えてきたお前にとって、この世界のすべては一日にして語り尽くせるものではない。この世界の地理も、国の名も、お前はこれからの日々の中で嫌というほど知ることになるだろう」
老師のその言葉は、春希の前に広がる果てしない冒険と、これから出会うであろう数々の異文化や強者たちの存在を予感させるものだった。




