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湯上がりに滑ったら7尺4寸の魔王の夫になりました。魔力ゼロの傭兵がハイテク冷戦を歩む方法  作者: Isuzu Toyota
始まり

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修道士たちと異邦人の印

【日本語】

見知らぬ異世界へと突然放り出された松平春希。言葉も通じない広大な緑の平原で、彼は自らの置かれた過酷な現実を突きつけられることになります。しかし、そこで出会ったのは地球の存在を知る謎めいた老人でした。春希の果てしない宇宙の旅路が、ここから本格的に動き出します。

冷涼な風が、春樹の肌を鋭く刺した。彼はその場に凍りつき、信じられないという思いで頭の中が叫び声を上げていた。身にまとっているのは、腰に心許なく巻きつけた白い綿のタオル一枚だけ。首からは、家族の集合写真が入った思い出のキーホルダーが下がっており、その金属の冷たさが鎖骨に触れていた。足元は完全に裸足――あの境界を越えたとき、彼は浴室用のスリッパさえ履いていなかったのだ。

あまりに現実味を帯びた悪夢から覚めようと、春樹はぎゅっと目を閉じ、二度こすってみた。しかし目を開けても、そこには果てしない草原が広がっているだけだった。彼はしゃがみ込み、地面に手を伸ばした。ざらついた土、湿った朝露、指先をかすめる小さな草の感触――それらが、全身に戦慄とも言える衝撃を走らせた。

現実だ。夢ではない。彼は本当に、見知らぬ荒野に取り残されてしまったのだ。

その時、広大な静寂を破るように、何かが擦れる微かな音が響いた。高校時代に培った運動神経が反射的に働き、春樹は即座に周囲を見渡し、辺りを鋭く観察した。背の高い草の向こう、細い土の道を、僧侶のような二人組が歩いてくるのが見えた。彼らは鮮やかな深紅の衣をまとい、黒髪はすっきりとまとめられ、小さな髷(まげ)になっていた。驚いたことに、彼らは完全に人間そのものだった。京都で知っている人々となんら変わりない姿をしていたのだ。

相手に顔を見られる前に、春樹はパニックに陥り、とっさに駆け出して近くの大きな岩の陰に身を隠した。タオルをしっかりと押さえながら。

だが、その突然の動きは彼らの目に留まってしまった。二人の僧侶は足を止めた。武器を抜いたり大声を上げたりするのではなく、彼らはそのまま岩の方へと歩み寄ってきた。

「どうか、恐れないでください」と、一人の僧侶が穏やかで丁寧な声で呼びかけた。「私たちはあなたを傷つけるつもりはありません。出てきても大丈夫ですよ」

優しく促され、タオル一枚のまま隠れ続けるわけにもいかないと悟った春樹は、警戒心を解かぬまま、渋々岩の陰から姿を現した。彼はプライドを捨て、ぎこちない様子で自分の状況を説明した。京都の自宅の浴室で入浴していたはずが、そこから出た途端、ここにいたのだと。彼がどのようにしてこの場所に「やって来た」のか、その奇妙な話を聞いた瞬間、僧侶たちは目を見開いた。彼らは顔を見合わせ、ひそひそと激しく言葉を交わし始めた。

「まさか……」一人の僧侶が、ハルキの奇妙な服装と裸足の様子に目を留め、小声でつぶやいた。「魔力の気配が全くない……『異邦人(アウトランダー)』かもしれない」

もう一人の僧侶は深刻な面持ちで頷くと、ハルキに向き直り、敬意を込めて一礼した。「若者よ、あなたの到来は常軌を逸しています。どうか、私たちに同行していただけませんか。この尾根の向こうに私たちの修道院があります。長老ならば、あなたの旅の経緯を解き明かしてくれるはずです」


春希は、バスタオル一枚に家族のキーホルダーというあまりにも奇妙な姿のまま、二人の僧侶の後に続いた。しかし、すぐに大きな壁にぶつかることになる。彼らの言葉が、自分の知るどの言語とも違っていたのだ。春希は必死に身振り手振りを交え、なんとか己の窮地を伝え、相手の意図をかろうじて汲み取った。歩きながらふと後ろを振り返ったが、そこにはただ青々とした大地が広がるばかりで、自宅の浴室の面影は微塵もなかった。彼は覚悟を決め、前を向いた。


やがて視界が開け、巨大な修道院の建造物群が姿を現した。敷地内に足を踏み入れた春希は、その光景に圧倒される。そこには、赤真紅の法衣をまとった何千人もの門下生たちがいた。ある者は立ったまま、またある者は座って静かに瞑想にふけり、またある者は一糸乱れぬ動きで武術の型を繰り出していた。二人の僧侶は春希を連れ、冷気の一際張り詰めた奥の一室へと案内する。そこには、木製の頑丈な床几(しょうぎ)の上に腰を下ろした、筋骨隆々とした一人の逞しい老人が静かに佇んでいた。


老人は春希の姿を見つめると、驚くべきことに、流暢な日本語で口を開いた。

「質問をする前に、まずは私の話を聞きなさい。私の名は老師ヨウゼイ(Guru Yozei)。私は『来訪者(アウトランダー)』の存在、そしてお前のいた世界の文化や習慣のすべてを知っている。かつて、そちらの世界の者たちと形而上学的な精神接触を果たしたことがあるのだ。だからこそ、お前の言葉も話せる」


「お前は『来訪者(アウトランダー)』だ」ヨウゼイは春希の絶望を受け止めるように言った。「この世界の長い歴史において、お前の世界からランダムに発生するワームホールや銀河の歪みに吸い込まれ、この地に辿り着いた者がごく稀に存在する。ある者は過酷な環境に耐えかねて命を落とし、またある者は生き延びて、この世界の歴史を大きく塗り替えた。お前がここへ来たのも、純粋な偶然の悪戯だ」

老人は話を締めくくると、春希の緊張を解くように穏やかに微笑んだ。

「語り合いはここまでとしよう。まずは温かい食事をとり、身体を休めなさい。明日、これからどうすべきかを共に考えよう」

春希は出された食事を前に、異郷での果てしない旅路の始まりを予感していた。



【日本語】

第2話をお読みいただき、本当にありがとうございました!

ようやく世界観のスケールが見えてきました。ただの魔法世界ではなく、地球と同じ宇宙の数兆マイルも彼方にあるリアルな異星という設定は、私の物語の核となるこだわりの部分です。バスタオル一枚の春希が、この壮大な歴史を持つ修道院でどう生きていくのか。第3話では、いよいよ彼の本格的な異世界生活と修行(?)が始まります。ぜひお楽しみに!

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