第4話:限界集落のクソ煎餅と地方見捨て論
「聖者様、これが村に伝わる最高の供物です……!」
そう言って、村長(推定88歳・シミだらけ)が差し出してきたのは、よく分からん茶色い物体だった。かじってみる。……硬い。そして味がしない。段ボールを10年くらい日干しして、うっすら塩を振ったような、極めて生命への冒涜を感じる味だ。
(なんだこれ。地方の道の駅で『名物!』とか大々的に売られてるのに、絶望的に味がなくて二度と買わないタイプの土産物かよ。令和の日本でもこういう利権だけで回ってるクソ土産あるわ)
「……よし、二度とやるものか」
俺は心の中で固く誓った。結局、資本主義の「し」の字も知らないババアどもに囲まれ、同調圧力に負けて数人の足を揉まされた。固有スキルのせいでババアたちの腰痛は完治し、身体能力が300%になったババアたちが
「畑仕事が捗るわい!」
とウキウキでクワを振り回しているが、俺の精神的ダメージは計り知れない。あの村は、消滅するべくして消滅するのだ。国からの支給される魔力を貪るだけで、若者を搾取し、何のイノベーションも起こさない限界集落の末路など、見捨てられて当然である。
まあ、それはそれとして。唯一の良心であり、至高の御御足を持つマルタだけは、後でこっそり夜逃げさせて連れ出そう。若者の未来を老害の介護で潰させてなるものか。これぞ真のヤングケアラー救済。俺、超いい奴。
「というわけでマルタ、俺をこの辺で一番大きい町まで案内してくれ」
「あ、はい! それなら、馬車で半日のところに『グランセル』という商業都市があります!」
「よし、行こう。資本の匂いがする場所へ!」
こうして俺は、マルタという極上の足ナビゲーションを従え、クソ煎餅の味を口の中で転がしながら、限界集落を後にしたのだった。




