第三章 シオリ
第三章 シオリ
あれから彼女について少しわかったことがある。彼女の名前は神崎詩織。詩織さんは大学一年生で、凄く偏差値の高い大学の教育学部に通っている。どれくらいの難易度かというと、僕が友達を百人作るほど難しいのである。だが、それだけの高偏差値であるにも関わらず、あの小説をあそこまで評価するのは本当に頭が良いのか疑いたくなる。
詩織さんは見た目だけでなく、中身まで宝石のように輝いている。インスタグラムの投稿とDMでのやり取りでわかった。彼女の投稿は高校、大学の友達との写真や、キラキラとした青春の写真がスクロールしてもスクロールしても出てくる。それは僕には縁遠い類のものだろう。DMでは僕を蹂躙していった。
『今日はありがとねー!読書仲間とか初めてだから嬉しい!』
『僕も楽しい時間でした。ありがとうございます。』
『文章固いなー(笑)それと敬語いらないよ!』
『いいえ、年上なので、敬語で喋らせてもらいます。』
「そっかそっか~君は中々変わってるね(笑)」
グッドマークを押す。この行為には会話を終わらせる力があると聞いたことがある。しかし、彼女には関係なかったようだ。
『ところでさ!今度はいつあの場所にいるのー?また一緒に語り合おぜい!(笑)』
『えーとですね』
返信に困る。平日は毎日いるが、そんなことを言えば、彼女は毎日でも来るだろう。そんな悪寒が僕を襲う。僕のサンクチュアリをこれ以上侵害されては困る。そんなことを思っていたが、よくよく考えれば彼女は忙しく、毎日来られるはずがない。そんなことにも気づけないほど、当時の僕は彼女の異様なテンションに飲まれていたのである。
『毎週水曜です。』
嘘をついた。今日と同じ曜日を伝えることにした。
『そっか!わかったよ~じゃあ毎週水曜に行くね!私は日曜もいるから話したくなったら来るんだぞ~』
どうやら水曜日は彼女のものになったらしい。日曜日に至っては既に彼女の私物だ。
『すみません。日曜はバイトなので行けません。』
『おっけー!でもたには来いよ~(笑)』
今度こそ会話を終え、僕は眠りについた。
そんなことがあり、彼女をサンストーンのようだと形容するには十分な根拠がある。今日は火曜日。明日は何を話すのだろうか。僕は上手く話を合わせられるのだろうか。一抹の不安を抱えながら床に就く。どうやら明日は快晴らしい。神崎詩織というイレギュラーは、僕の世界を振り回すには十分すぎる存在だった。僕が燃え尽きないことを願う。




