第4話 この世界について
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〜ダファナディール王国 王都ユラニレーミン〜
裂け目から出ると、一日中探し回っても辿り着かなかった街に来てしまった。到着した街は19世紀後期から20世紀初頭の面影を感じる。なんでって言ったら、建物がレンガとか石とか、木材じゃなくてコンクリートを使ってる。道だってアスファルトっぽい。異世界と聞いてたから中世の木造建築とかだと思っていたが、意外と文明が進んでいるらしい。あと、街の人々が皆幸せそうな顔をしている。和気藹々としていて街全体が明るい。働いているであろう人たちは笑顔を見せ、子供たちも遊び回り、男たちはスーツを着こなしている。街の雰囲気的に、まるで遊園地に来たみたいだ。
「で、何から聞きたい? なんでも答えてあげる」
ニトさんに連れられレストランみたいな店に入店。この国の名物、煌目鯛のスープとデカイパンを食べてるとそう聞かれた。んー、ひとまず目標の魔王の事からにしよう。相手がどんなやつかも分からずに突撃するバカはいないし。
「じゃあ魔王の事から教えてくれ」
「魔王からね。魔王はククラロゥトカって名前でね、突然この世界に現れた怪物で、魔物の軍勢を率いて人間界と天界を侵略してきたのよ」
The魔王って感じの魔王だ。しかし言いづらい名前だ、名付け親はセンスがない。
「んで、その侵略を止めるために人間界と天界は手を組んで戦った。それが所謂《《魔導戦争》》と呼ばれる戦争ね。魔導戦争は人間界にものすごい被害を出したからククラロゥトカは魔王と呼ばれて忌み嫌われるようになったわ」
魔導戦争から忌み嫌われる、まさに悪役だな。
「あと魔王関連で言ったら、魔王親衛六騎士って言う6人の幹部がいるくらいかな」
「魔王親衛六騎士?」
「魔王親衛六騎士ってのはククラロゥトカに仕える騎士の事ね。ククラロゥトカの側近で、魔導戦争じゃ各地の戦場で多大な被害を出した奴ら。ククラロゥトカと同じくらい嫌われてるね」
「その魔王親衛六騎士にはどんな奴らがいるんだ?」
「全部で六人いてね、《《審問のメフェリン》》、《《幻翼のネフィ》》、《《炎熱のラズリウス》》、《《成り代わりのイェンクスナ》》、《《躁蟲のローゼンアリア》》、《《服従のカトリーナ》》。こいつらが魔王親衛六騎士ね」
いちいち二つ名が厨二心をくすぐる。いやしかし六人か、魔王までの道は随分大変になりそうだな。
「じゃあ次、特異能力ってのを教えてくれ」
「特異能力ってのは、個人に宿るオーラを使った特殊能力の事。基本的に同じ能力は無くて、世界に一つの能力が得られるのよ」
「オーラ?」
「オーラってのは、人、天使、魔物や動物達の持つ生命エネルギー的な物ね。個々によって持つオーラ量は変わるし、自分のオーラ量で特異能力の強さは決まるわ」
あれだな、気って奴だな。そういうことにしておこう。
「んで、ニトさんも持ってんのか? その特異能力っての」
「勿論。あたしは二つ持ってるの、牽制用の天弩。もうひとつは秘密。秘密の方は外したことがないくらい強いよ」
はえー、なんだか強そうだ。そういえば、俺の能力はどんな……あぁクソみたいな能力だわ。思い出したくもない。
「次、あんたもそうだが、天使ってこの世界じゃどんな立ち位置なんだ? あと、天使がいるって事は天界とかあるの?」
さっきは流したが、天使も天使で気になる。
「天使ってのは神様の従者で、世界の監視者よ。人間を監視して時に守り、時に裁く。まぁ正義のヒーローってことよ」
あんま、あれだな。想像通りだな。
「天界の説明は、そうね。ちょっと難しいんだけど簡単にするわ。天界ってのは神が支配する上位世界ね」
上位世界、なんかかっこいいな。
「人間界のものすごい遠くの真上にある凄いでかい浮島みたいな感じ。めっちゃ頑張れば行けなくもないわね」
「天界は3つの層で別れてて、雲界層、浮島大陸層、神域の3つ。雲界層で下からの部外者から天界を守る。浮島大陸層で天使たちは生活してて、神域が神様の居住区ね。詳しいことはいつか話すわ」
なるほどね、雲の海で迷わせるとかそんな感じなのかね。
「あ、そうそう。さっきのテレポートみたいなやつは?」
「でさっき聖音っての。天使と神様が使える能力で、全部で77個あるわ。さっき使った裂け目は聖音 裂間ってやつ。裂け目を開いて移動する目的の聖音ね」
「ニトさんは77個全部使えるのか?」
「んいやー、50までしか使えないわ。50以降は力が強すぎて制限がかかってるのよ」
なるほど、でも50は使えるのか。それはそれですごいんだけど。
「で、あなたの特異能力は? どんなの?」
あ、忘れてた。確か――――
「えっと、食べた虫の能力を得る能力、です……」
「え? …んー、え?」
「えっと、虫を生きたまま食べて、その虫が持つ能力を得る能力です…」
「きも」
俺も同じ気持ちだ。何よりも、俺が1番思っている。《《キモい》》と。どうしてこんな力にしたんだ。名も知らぬ、ゴミカスドブ腐れ女神よ。
「それって、本当にできんの? 疑わしいんだけど」
「……知るかよ」
知りたくないけど。俺が絶望してると、少女は言う。
「んー気になるし試してみよう、ちょっと来て」
ニトさんはそのまま会計を済まし、俺を連れて森に向かった。俺は、絶望している。
第4話 この世界について 完。




