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第222話 赤金の噂は、白い霧へ人を呼ぶ

 王都南区の外れに、薬瓶だけを扱う小さな店があった。


 回復薬を売る店ではない。


 毒薬も、薬草も置いていない。


 売っているのは、薬を入れるための瓶。


 魔力を逃がさない瓶。


 呪いを外へ漏らさない瓶。


 生きた素材を眠らせたまま保存する瓶。


 普通の薬師が一生使わないような、特殊な容器を作る店だった。


 その店に、老錬金術師オルバ・レントが注文を出していた。


「生命反応を完全に閉じ込めるものを三つ」


 店主は眉をひそめた。


「中身は?」


「聞くな」


「大きさは」


「林檎より少し小さい」


「果実か?」


「聞くなと言った」


「香りは?」


「強い」


「魔力の種類は」


「命脈系だ」


 そこまで答えてから、オルバは舌打ちした。


「これ以上は聞くな」


 店主は肩をすくめた。


 長い付き合いだった。


 オルバが秘密を抱えていることなど珍しくない。


 金も先に払われている。


 なら、注文通りに作るだけだった。


 問題は、店主ではなかった。


 作業場の隅で、若い助手が話を聞いていた。


 オルバが持ち込んだ包み布。


 その布には、ほんのわずかに甘い香りが残っていた。


 助手は、オルバが帰った後、作業台を拭いた。


 布が置かれていた場所に、小さな赤金色の跡がある。


 果汁か。


 樹脂か。


 何かは分からない。


 助手は指先で触れた。


 その瞬間、数日前に刃物で切った指の傷が、薄く光った。


「……え?」


 傷が閉じた。


 完全ではない。


 だが、確かに痛みが消えた。


 助手は息を呑んだ。


 誰にも言うな。


 そう思った。


 だが、その夜。


 酒場で一杯だけ飲んだ後、彼は親しい薬売りへ話してしまった。


 名前は言わなかった。


 オルバの名も。


 何を保管するかも。


 ただ、


王都のどこかに、赤金色の果実らしき高位素材が持ち込まれた。


 そう話した。


 小さな話だった。


 本来なら、酒場の夜に消える程度の噂。


 だが、同じ時期に、別の場所から別の噂が流れていた。


王国南東部の白い封鎖迷宮に、赤金色の回復果実があるらしい。


 二つの噂は、別々に生まれた。


 一方は、王都へ持ち込まれた果実。


 もう一方は、白いSランク相当迷宮。


 それを、裏の薬材商が結びつけた。


白い迷宮から、赤金の果実が持ち出されたのではないか。


 根拠はない。


 証拠もない。


 だが、噂にはそれで十分だった。


    ◇


 黒冠軍第七牙との戦いから、十日が経った。


 霧灰白庭迷宮むかいはくていめいきゅうは、少しずつ日常を取り戻していた。


 マネは、もう何度も自分の声を確かめなくなった。


 まだ時々、余を呼ぶ。


「ロード」


「ここにいる」


 それでも、一日に何十回ではなくなった。


 霧喰いきりくいばゴブリンたちも、再び訓練へ出るようになった。


 赤金果守あかがねかもりゴブリンたちは、エリラの実を数える時に少しずつ騒がしくなっている。


 今日も一体が途中で数を忘れた。


「百八十……百八十一……ギ?」


「百八十二」


 フィルエが教える。


「ギギッ」


「最初からじゃなくていい」


 以前の日常に近い。


 完全に同じではない。


 だが、それでいい。


 戻るとは、何もなかった頃へ戻ることではない。


 傷を抱えたまま、また声を出せるようになることだ。


「管理音声」


《はい》


「今日のエリラの実は」


《現在結実数:百八十七個》


「また増えたな」


《増加傾向が続いています》


 ルオが来るようになってから、実の数は少しずつ増えている。


 フィルエの管理も安定している。


 今日は四十八個を採取する予定だった。


 保存用。


 治療用。


 配下の訓練後補給。


 ルオが来た時の分。


 熟しすぎて落ちそうな実もあるため、採らない方が木に負担になるものもある。


 もう、一個だけなどという制限はない。


 全部取らない。


 木に十分な実を残す。


 フィルエが状態を見て決める。


 それでいい。


 余が今日の保存量を確認しようとした時だった。


 白い部屋に、一枚の黒い紙が落ちてきた。


 ぱさり。


「新聞か」


《はい》


「嫌な予感がする」


 ダンジョン新聞を拾う。


 見出しを見た瞬間、嫌な予感は確信に変わった。



《噂速報》


《赤金の奇跡果、人間社会で話題に》


現在、人間側の闇市場、薬材商、冒険者酒場、一部貴族家の間で、赤金色の回復果実に関する噂が広がっています。


噂の内容:


・重傷を短時間で治す。

・欠損すら回復させる可能性がある。

・神薬またはエリクサーの素材候補。

・王都へ実物が持ち込まれたとの未確認情報あり。

・王国南東部の白い封鎖迷宮と関係があるとの説あり。


注意:


出所の異なる複数の噂が、現在一つに結びつきつつあります。


真偽不明。

正式名称不明。

所有者不明。

採取地不明。


しかし、人間は不明な宝ほど欲しがります。



「……王都へ持ち込まれた?」


《そのように記されています》


 余は紙面を睨んだ。


 天蓋の猟犬は、エリラの実を二つ持ち出した。


 一つは、眠る仲間のため。


 もう一つは偶然拾ったもの。


 その後、誰の手へ渡ったかは知らない。


 どこで使われたかも。


 誰が調べたかも。


「天蓋の猟犬から漏れたのか」


《断定不能》


「ゼルヴァンか」


《断定不能》


「別の誰かか」


《断定不能》


「何も分からんではないか!」


《はい》


 だが、出所が分からなくても、結果は分かる。


 噂が広がった。


 赤金の奇跡果。


 それが、白い封鎖迷宮にあるかもしれない。


 人間たちは、そう考え始めている。


 フィルエが静かに聞いた。


「たくさん来る?」


「来るだろう」


「エリラを取りに?」


「ああ」


 余は、エリラの木を見た。


 実は百八十七個。


 少し採られても、翌日には戻る。


 問題は数ではない。


 全部取られれば木が枯れる。


 木の存在を知られれば、噂はさらに大きくなる。


 そして、エリラの実だけを狙って来る者は、浅層の宝に釣られない。


 天蓋の猟犬がそうだった。


「管理音声」


《はい》


「侵入者数の変化は」


《直近三日間で上昇》


「どの程度だ」


《三日前:九名》


《二日前:十七名》


《昨日:二十八名》


《本日、外縁接近反応:現在三十一名》


「三十一!?」


 余は壁面を切り替えた。


    ◇


 迷宮の外。


 白い霧の周囲に、いくつもの人影があった。


 一つの集団ではない。


 互いに距離を取っている。


 七人の冒険者。


 五人の素材狩り。


 十人ほどの武装集団。


 薬瓶を抱えた三人。


 さらに、森の奥に六人。


 許可証を持つ者はいない。


 持っていたとしても、正規の入口は使っていない。


 白い霧を遠巻きにしながら、互いを警戒している。


 会話が拾える。


「赤金の果実は奥だ」


「本当にあるのか?」


「王都に持ち込まれたって話だ」


「誰が持ち帰った」


「知らねえ」


「なら嘘かもしれん」


「嘘でも、Sランク迷宮の素材は売れる」


「全部取れば一生遊べるぞ」


 全部。


 その言葉に、余の意識が冷えた。


「全部は取らせん」


 声が低くなる。


 フィルエも、木の前で実を見上げていた。


「ロード」


「何だ」


「非戦闘の子たちは下げる」


「ああ。赤金果守と補修係を避難路へ」


「分かった」


「戦える者は配置につけ」


 マネが余の声を広げる。


「戦える者は配置につけ。非戦闘員は深部避難路へ」


 今回は偽声ではない。


 本物の命令。


 霧喰い刃ゴブリンたちが刃を取る。


 グズの黒泥が通路へ流れる。


 ハイハネが羽を広げる。


 カゲヌイの影糸が床を走る。


 湿骨王列しつこつおうれつが、骨槍を並べた。


 ガルザヴェインは覇王練兵窟で立ち上がった。


「ロード」


「まだ出るな」


「ワカッタ」


「まずは皆に戦わせる」


 ガルザヴェインの金色の目が、配下たちを見る。


 以前なら、自分が前に出ようとしただろう。


 だが、今は違う。


 自分だけが強くなるのではない。


 迷宮全体を軍にする。


「ミンナ、タタカウ」


「ああ」


「オレ、ミル」


「ああ。危険なら支えろ」


「ワカッタ」


    ◇


 最初に白い霧へ入ったのは、九人の混成隊だった。


 冒険者らしい装備だが、胸章は外している。


 先頭に大剣使い。


 その後ろに盾持ち二人。


 弓使い。


 火術師。


 治癒術師。


 残り三人は採取具と保存箱を背負っていた。


「赤金の奇跡果が見つかるまでは、余計な素材に触るな」


 大剣使いが言った。


「見つけたら?」


「全部採る」


 余は、白い部屋で静かに命じた。


「殺せ」


 白い霧が動いた。


 ハイハネの灰霧が、九人を包む。


「霧だ!」


「風で払え!」


 火術師が炎を横へ走らせる。


 以前のハイハネなら、霧を焼かれていた。


 だが、今は一つの霧ではない。


 視界をずらす霧。


 距離を狂わせる霧。


 匂いを偽る霧。


 三つの層が別々に動く。


 炎が焼いたのは、視界の霧だけ。


 距離の霧は残った。


 盾持ちが、一歩前へ出る。


 その一歩は、本人が感じた距離より深かった。


 足が黒泥へ沈む。


「なっ――」


 グズの泥が、膝まで絡む。


「引け!」


 後ろの仲間が手を伸ばす。


 その影を、カゲヌイが縫った。


 伸ばした腕が止まる。


「影だ! 光を!」


 火術師が床へ炎を落とす。


 影が薄くなる。


 だが、その瞬間、湿骨王列の骨槍が壁から突き出した。


 盾持ちが受ける。


 白い骨槍と鉄盾が激突した。


 一本は止める。


 二本目も。


 三本目が盾の縁を滑り、肩へ刺さる。


「ぐあっ!」


 治癒術師が動こうとする。


 マネが、大剣使いの声を真似た。


「治癒は後だ! 前を守れ!」


 治癒術師の動きが一瞬止まる。


 すぐに偽物と気づいた。


「違う! 今のは隊長じゃない!」


 だが、その一瞬で十分だった。


 霧喰い刃ゴブリンたちが走る。


 灰霧の中から現れ、治癒術師の杖を狙う。


 刃が留め具を切る。


 杖が床へ落ちる。


 別のゴブリンが回復薬の袋を裂く。


 瓶が白い床に散る。


「小物から潰せ!」


 大剣使いが剣を振るった。


 一体のゴブリンへ刃が迫る。


 ゴブリンの体が固まった。


 黒冠に操られた時の恐怖が、まだ残っている。


 だが、ガルザヴェインの声が奥から届いた。


「タテ」


 覇王威。


 強制ではない。


 背中を支える重い気配。


 ゴブリンは身を沈めた。


 大剣を避ける。


 そして、相手の膝裏へ刃を滑らせた。


「ギギッ!」


 大剣使いの足が崩れる。


 湿骨王列の骨鎖が、その腕を取る。


 カゲヌイの影糸が剣の影を縫う。


 グズの泥が足を固める。


 一つ一つは、大剣使いより弱い。


 だが、全員で動く。


 大剣使いは剣を持ち上げられない。


「離せ!」


 怒鳴る。


 その口へ、ハイハネの灰霧が入る。


 咳き込む。


 霧喰い刃ゴブリンが首筋へ刃を入れた。


 今度は装備ではない。


 肉を切った。


 血が噴く。


 大剣使いが倒れる。


《侵入者一名、死亡》


《ソウル獲得:34,000》


「次だ!」


 余が命じる。


 マネが広げる。


「次だ!」


 配下たちが動いた。


 盾持ちはグズの泥で分断される。


 弓使いはハイハネの霧で標的を失う。


 火術師は湿骨王列の骨壁に炎を遮られる。


 治癒術師はカゲヌイに影を縫われる。


 保存箱を背負った三人は逃げようとした。


 だが、出口だと思った道はグズの偽通路だった。


「こっちじゃない!」


「戻れ!」


 戻ろうとした時、骨門が閉じる。


 霧喰い刃ゴブリンたちが、両側から現れた。


 今度は震えていない。


 自分たちの意思で刃を構えている。


    ◇


 戦闘は、十五分も続かなかった。


 九人全員が死んだ。


 最後まで生きていた治癒術師は、傷ついた仲間を治そうとした。


 だが、マネの偽声に惑わされ、カゲヌイに動きを止められ、湿骨王列の骨槍に胸を貫かれた。


《侵入者九名、全滅》


《総獲得ソウル:286,000》


 大きくはない。


 だが、九人分としては濃い。


 中にAランク相当が一人。


 Bランク相当が四人。


 残りも、無許可でSランク迷宮へ入るだけの腕はあった。


 配下たちは、死体の前で立っている。


 霧喰い刃ゴブリンの一体が、自分の刃を見た。


 今回は、仲間の血ではない。


 敵の血だ。


 それでも、少し震えた。


 ガルザヴェインが近づく。


「コワイカ」


「ギ……」


「デモ、マモッタ」


「ギ」


「ヨシ」


 ゴブリンは、ゆっくり刃を下ろした。


 余は白い部屋で言った。


「全員、よくやった」


 マネが、その声を迷宮へ広げる。


「全員、よくやった」


 ハイハネの羽が揺れる。


 グズの泥が誇らしげに盛り上がる。


 カゲヌイの影が細く伸びる。


 湿骨王列の骨が鳴る。


 戻った配下たちは、もうただ守られるだけではない。


 戦った。


 自分の意思で。


    ◇


 だが、休む時間はなかった。


《外縁接近反応、増加》


「何人だ」


《現在、四十六名》


「増えた!?」


 先ほどは三十一だった。


 九人が入っている間に、新しい集団が到着していた。


 白い霧の外で、互いに情報を交換している。


「先に入った奴らが戻らない」


「なら本物があるんだ」


「なぜそうなる!」


 余は思わず叫んだ。


 戻らないなら危険だと思え。


 普通は帰るべきだ。


 だが、欲に取りつかれた人間は、都合よく考える。


 先に入った者が帰らない。


 なら、宝を見つけて独占しているのかもしれない。


 あるいは、本物の場所に着いたのかもしれない。


 危険が、逆に証拠として扱われている。


 ダンジョン新聞の言葉が蘇る。


人間は、不明な宝ほど欲しがる。


「ロード」


 フィルエが言った。


「このまま全部、同じ場所で戦う?」


「いや」


 余は迷宮図を見る。


 同じ防衛を見せ続ければ、対策される。


 それに、噂を信じて来た者を浅層で全員殺せば、本物が深部にあると思われる可能性もある。


 ならば、偽物を見せる。


白灰薬果林はくかいやっかりんを作る」


《新規区画形成ですか》


「ああ」


 白磁花。


 戻り水。


 赤錆核の薄片。


 エリラの実の果皮を洗った後に残る、ごく微かな香り。


 それらを使い、赤金に似た実を生らせる偽の薬果林を作る。


 完全な偽物ではない。


 食べれば軽い傷が治る。


 毒も少し抜ける。


 価値はある。


 だが、エリラの実ではない。


 そして、食べすぎれば強烈な眠気が来る。


「形成費用は」


《基礎区画:240,000ソウル》


《偽薬樹生成:180,000ソウル》


《香り偽装:80,000ソウル》


《合計:500,000ソウル》


「使え」


《承認》


 先ほど得たソウルだけでは足りない。


 だが、この十日で無許可侵入者から得た分がある。


 黒冠軍戦後に残したソウルもある。


 必要経費だ。


 白い迷宮の中層外側に、新しい林が生まれ始める。


 白灰色の幹。


 赤い葉。


 金色に近い裏葉。


 赤金色の小さな果実。


 本物より小さい。


 香りも薄い。


 だが、噂だけを追ってきた者なら、飛びつく。


「フィルエ」


「うん」


「本物の木の状態に影響は」


「今の作り方なら大丈夫。果皮の残り香だけなら、木も嫌がってない」


「よし」


「偽の実も、全部取られたら枯れる?」


「いや。偽薬樹は迷宮構造だ。ソウルがあれば作り直せる」


「じゃあ、取らせてもいいんだ」


「ああ」


 余は考える。


 持ち帰らせるか。


 殺すか。


 全員殺せば、偽情報は外へ出ない。


 だが、一部に偽物を持ち帰らせれば、


赤金の奇跡果は、軽い回復と眠気を与える程度の実だった。


 という情報が広がる。


 本物の価値を薄められる。


 問題は、逃がすことだ。


 天蓋の猟犬のように、本物へ近づく者を増やす危険もある。


「まずは殺す」


 余は決めた。


「偽薬果林で欲を止め、そこを殺し場にする。持ち帰らせるかは、相手を見て決める」


《承知》


    ◇


 入口の外で、三つの集団が動き始めた。


 十二人の冒険者隊。


 十六人の私兵らしき集団。


 七人の薬師護衛隊。


 残りは、互いの後を追うつもりらしい。


 合わせて三十五人が、ほぼ同時に白い霧へ入る。


《侵入者、三十五名》


 ガルザヴェインが拳を握った。


「ロード」


「今度は大きい」


「オレ、デル?」


 余は少し考えた。


 新しい迷宮軍の初めての大規模戦闘。


 配下だけでも戦わせたい。


 だが、黒冠軍戦の傷はまだ残っている。


 三十五人の中には、Aランク相当の反応が複数ある。


「前半は皆で受ける」


「ウン」


「崩れたら、お前が出ろ」


「ワカッタ」


「ただし、一人で全部殺すな」


 ガルザヴェインが少し首を傾げる。


「ミンナ、タタカウ」


「ああ」


「オレ、ヒキイル」


 率いる。


 ガルザヴェイン自身が、その言葉を選んだ。


 余は静かに答えた。


「そうだ。率いろ」


 マネが余の声を広げる。


「全戦闘配下、白灰薬果林へ配置」


 グズの泥が動く。


 ハイハネの霧が林を包む。


 カゲヌイの影が木々の下へ伸びる。


 湿骨王列が、地中で骨槍を並べる。


 霧喰い刃ゴブリンたちが、果樹の間へ散る。


 ガルザヴェインは最後方に立ち、全員を見た。


 魔神覇王の重い気配が、怯える配下たちの背中を支える。


 白い霧の向こうから、人間たちの声が近づく。


「光だ!」


「赤金の実がある!」


「本物だ!」


 まだ偽物とも知らず。


 三十五人の侵入者が、白灰薬果林へ雪崩れ込んだ。


 余は、白い部屋で静かに命じた。


「始めろ」


 白い林が、牙を剥いた。

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