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第186話 フィルエの一日は、甘い匂いで始まる

 スタンピードから、一カ月が過ぎた。


 王都は、灰白庭をSランク相当迷宮として指定した。


 人間側での呼び名は、まだ揺れている。


 灰白庭。


 白箱迷宮。


 銀刻帰らず。


 白庭化した旧迷靄洞。


 だが、扱いは決まった。


 Aランク以上の冒険者であっても、王国とギルドの許可証がなければ侵入禁止。


 Bランク以下は、そもそも論外。


 素材商も、闇市関係者も、未許可探索者も、封鎖線から先へ入ることは禁じられた。


 もっとも。


 禁じられたからといって、人間が来なくなるわけではない。


 むしろ、増えた。


 Sランク迷宮。


 その言葉は、恐怖であると同時に、欲の匂いでもある。


 Sランク迷宮には、良い素材がある。


 良い宝がある。


 十万の魔物の残骸があるかもしれない。


 魔神ゴブリンの痕跡があるかもしれない。


 Aランク二組と再査定調査隊が残した装備があるかもしれない。


 そう考える者は、いくらでもいた。


 そして、ロードにとって、侵入者が来ること自体は悪いことではない。


 殺せばソウルになる。


 装備は素材になる。


 恐怖は噂になる。


 欲は、次の獲物を呼ぶ。


 だから、来るなとは思わない。


 むしろ来い。


 ただし、余の都合のよい場所で死ね。


 深部を見るな。


 最奥を見るな。


 見たなら、帰すわけがない。


    ◇


 朝。


 森灰観測室しんかいかんそくしつで、フィルエは目を開けた。


 迷宮の中に朝日は差さない。


 でも、フィルエには外の朝が分かる。


 森から流れてくるマナが軽くなる。


 土の下の虫が動き始める。


 葉の裏から水滴が落ちる。


 封鎖線の騎士たちが、眠そうな足音で交代する。


 そういう音が、森灰観測室には薄く届く。


 フィルエは、白灰色の柔らかい床に座ったまま、壁に背を預けた。


 肩の命脈紋めいみゃくもんは、もう痛まない。


 ロードとの繋がりは、以前よりずっと自然になっていた。


 迷宮の音は近い。


 でも、慣れた。


 ゴブリンが変なところで小便した音まで拾うのは、まだ慣れない。


「ロード」


《何だ》


「外縁に三人。無許可」


《ランクは》


「たぶんCランク二人、Dランク一人。偽造許可証なし。採取袋だけ大きい」


《餌だな》


「うん」


《深部へ向かう気配は?》


「ない。浅層で魔物素材を探すつもり。魔神素材って言ってる」


《出るわけがないだろう》


「でも、人間は“あるかも”で来る」


《便利な言葉だな、“あるかも”》


「ロードの“餌”と似てる」


《似ていない》


「似てる」


 フィルエは、目を閉じたまま浅層の霧を動かした。


 三人の無許可冒険者が、白い霧へ足を踏み入れる。


 彼らは怯えていた。


 けれど、袋は大きい。


 手には採取器具。


 腰には銀の小瓶。


 黒い血でも拾うつもりなのだろう。


 もちろん、拾わせるわけがない。


《浅層で処理するか?》


「一人は帰す?」


《なぜ》


「噂用。Sランク指定後でも、浅層で骨片くらいは拾えるって話を流せば、また来る」


《悪くない》


「残り二人は?」


《霧を見ても戻らないなら沈めろ》


「うん」


 灰霧が少し濃くなる。


 白磁片の反射が、浅層の奥に小さな光を作る。


 それは魔神素材ではない。


 ただの灰白採取物だ。


 でも、人間の目には何か高価な欠片に見える。


 三人のうち、一人が止まった。


「やめよう」と言った。


 残り二人は進んだ。


 欲が強い。


 フィルエは戻り水を動かした。


 進んだ二人の足元が、ぬるりと沈む。


 悲鳴。


 短い戦闘音。


 骨が鳴る。


 かた。


 それで終わり。


 戻ろうとした一人は、尻餅をついて逃げた。


 袋には、白磁花片が一つだけ入っている。


 安い。


 でも、外では話になる。


「二人死亡。一人帰る」


《獲得ソウルは》


《無許可侵入者二名死亡。獲得ソウル:2,800》


《白磁花片一つ、外部流出予定》


《浅層恐怖噂、微増見込み》


《よし》


 ロードの声は、満足そうだった。


 人間が入ってくる。


 死ぬ。


 ソウルになる。


 時々、一人だけ帰って噂を運ぶ。


 Sランク迷宮になっても、迷宮の基本は変わらない。


 ただ、腹が大きくなっただけだ。


    ◇


 フィルエの朝の仕事は、外縁観測から始まる。


 封鎖線。


 無許可侵入者。


 偽造許可証持ち。


 闇市素材狩り。


 貴族の私兵らしき者。


 迷宮素材の匂いに釣られた野良魔物。


 それらを、森灰観測網で見る。


 次に、浅層。


 白灰匣はくかいばこの配置。


 灰白採取物の残量。


 宝匣運びゴブリンが箱を噛んでいないか。


 霧走りゴブリンが外へ出ようとしていないか。


 泥門補助ゴブリンが、グズの泥に埋まって遊んでいないか。


 今日も二匹、埋まっていた。


「グズ」


 フィルエが呼ぶと、中層から低い返事が来る。


「グ……ズ……」


「泥門補助の二番と六番、吐き出して」


「グズ」


 ぽん。


 ぽん。


 泥の中から、ゴブリンが二匹吐き出された。


「ギャッ」


「ギギッ」


 泥まみれで転がる二匹。


 その瞬間、魔神練兵窟まじんれんぺいくつから、低い声が響いた。


「ドロ、アソブナ」


 二匹のゴブリンは、即座に地面へ伏せた。


 フィルエは少し笑った。


 魔神戦王ゴブリン・ガルザヴェイン。


 彼は完全に回復していた。


 アレク・ヴァイスとの戦いで受けた白銀の傷は、もう傷ではない。


 戦歴として残っているだけだ。


 胸の白銀痕。


 腕の斬撃痕。


 脇腹に刻まれた帰天一閃の跡。


 それらは、闘傷成長とうしょうせいちょうによって彼の力の一部になっている。


 魔神練兵窟も安定した。


 災厄秘匿膜さいやくひとくまくも馴染んだ。


 ガルザヴェインの魔神性は、外へ漏れていない。


 彼はもう、隠すために慌てる存在ではない。


 深部の強敵迎撃役。


 ゴブリン系統の戦王。


 ロードの許可で戦う、Sランク迷宮の契約戦力。


 そういう役割に落ち着いていた。


 ただし、ゴブリンへの命令は今でも効きすぎる。


「ハコ、クウナ。ナメルナ。カジルナ。モテ。マモレ」


 この命令のおかげで、宝箱食害は激減した。


 ロードはそのことだけで、ガルザヴェインを契約してよかったと思っている節がある。


    ◇


 昼前、フィルエは白骨書記室へ寄った。


 白骨書記は、今日も骨筆を走らせていた。


 台帳が増えた。


 戦争台帳。


 Sランク到達記録台帳。


 ゴブリン育成台帳。


 宝箱食害記録。


 無許可侵入者処理記録。


 浅層報酬流通記録。


 最近は、Sランク化後のソウル効率記録も増えている。


「白骨書記」


 かた、と顎が鳴る。


「一カ月のソウル収支、まとまった?」


 白骨書記が、少し誇らしげに骨板を差し出した。


 フィルエはそれを白い部屋へ転送する。


 すぐに、ロードの声が響いた。


《出せ》


 壁面に表示が浮かぶ。



《Sランク迷宮特性:魂魄捕集域こんぱくほしゅういき


Sランク到達により、迷宮内で死亡した存在のソウル回収効率が上昇。


低位存在:微増

中位存在:大幅上昇

高位存在:技、執念、記憶片を含めて回収可能


Aランク以上の存在は、死亡時の精神状態、到達深度、戦闘内容により獲得ソウル量が大きく変動。



《一カ月間の侵入者処理記録》


無許可低中ランク冒険者:

死亡:三百十八名

獲得ソウル:572,400


C〜Bランク混成素材狩り:

死亡:百四十六名

獲得ソウル:876,000


闇市系素材狩り団:

死亡:七十四名

獲得ソウル:444,000


Aランク冒険者・Aランク相当護衛:

死亡:九名

獲得ソウル:1,215,000


野良魔物、封鎖線から流入した外部魔物、迷宮内残留魔物処理:

獲得ソウル:290,600


一カ月追加獲得ソウル合計:3,398,000



《一カ月間のソウル消費》


浅層再整備:280,000

白灰匣、浅層報酬補充:160,000

魔神練兵窟維持:220,000

深部重要区画整備:300,000

深部秘匿維持:260,000

配下修復、通常維持:410,000


一カ月消費ソウル合計:1,630,000


差し引き増加ソウル:1,768,000


前回時点の保有ソウル:9,615,480

現在保有ソウル:11,383,480



《……よし》


 ロードは満足そうだった。


《よく死んだな、人間ども》


「嬉しそう」


《嬉しいに決まっているだろう。Sランク迷宮になってから、魂魄捕集域の効率が良い。低ランクはともかく、Bランク以上はかなり美味い》


「Aランク九名も来てたんだ」


《正式なAランク冒険者ばかりではない。闇市護衛、偽造許可証持ち、元Aランク、Aランク相当の傭兵などだ》


「みんな死んだ?」


《深部手前に来た者は全員殺した。浅層で使えそうな噂を持たせる者だけは帰した》


「運営してるね」


《当然だ。来る者は餌だ。ただし、餌に厨房を覗かせるな》


 フィルエは少し笑った。


 厨房。


 ロードは最近、その表現を気に入っている。


 浅層は食堂。


 中層は罠場。


 深部は厨房。


 最奥は、絶対に見せてはいけない貯蔵庫。


 分かりやすいような、分かりにくいような。


    ◇


 午後、フィルエは魔神練兵窟へ向かった。


 ガルザヴェインは、中央広場にいた。


 完全回復した彼は、以前よりも落ち着いて見える。


 もちろん、見えるだけだ。


 強い者が来ればすぐ戦いたがる。


 でも、勝手に出ない。


 ロードの許可を待つ。


 待てば戦える、と覚えたからだ。


 その周囲では、ゴブリンたちが訓練していた。


 泥門補助ゴブリン。


 霧走りゴブリン。


 影罠補助ゴブリン。


 宝匣運びゴブリン。


 魔神練兵窟候補生。


 一カ月で、かなり形になった。


 まだ転ぶ。


 まだ喧嘩する。


 まだ箱を見て一瞬だけ口を開ける個体がいる。


 だが、噛まない。


 舐めない。


 食わない。


 それだけで進歩だった。


「ガルザヴェイン」


「フィルエ」


「今日、Aランク相当の侵入者はいない」


「ツマラナイ」


「昨日いたでしょ」


「ヨワカッタ」


「Aランク相当だよ」


「ヨワカッタ」


 フィルエは首を傾げた。


「アレクと比べてる?」


 ガルザヴェインは、胸の白銀傷を見た。


「アレク、ツヨカッタ」


「うん」


「キロク、マモッタ。カエロウ、シタ。ツヨカッタ」


「まだ覚えてるんだ」


「オレ、オボエル」


 ガルザヴェインは、少しだけ静かになった。


 以前の彼なら、強い敵を倒した記憶は、ただ戦いの興奮として残っただろう。


 今は違う。


 アレクが何を守ろうとしたか。


 なぜ帰ろうとしたか。


 それを、まだ考えている。


 フィルエはそれを見るのが嫌いではなかった。


 怖い魔神が、少しずつ迷宮の形に馴染んでいる。


 それは危険だけれど、どこか面白い。


「今日のゴブリンは?」


「ドロ、ヨワイ。キリ、マアマア。ハコ、ヨイ」


「宝匣運び、褒めてる?」


「ハコ、クワナイ。エライ」


「うん。偉い」


 近くで宝匣運びゴブリンが、白灰匣を頭に乗せて歩いていた。


 誇らしげだった。


 フィルエは少し笑った。


    ◇


 夕方近く。


 フィルエは、深部へ向かった。


 魔神練兵窟からさらに奥。


 コア前防衛区画よりは外側だが、浅層や中層の侵入者が偶然来られる場所ではない。


 魔神契約跡まじんけいやくあと


 ガルザヴェインが最初にロードと契約した場所。


 そこは、今では重要区画になっていた。


 白磁の床には、うっすら金色の線が残っている。


 灰霧は薄く、戻り水も静か。


 壁には、あの戦いの時についた亀裂がまだ少しだけ残っている。


 その中央に、木が生えていた。


 三日前に、芽が出た。


 誰も植えていない。


 最初は、白磁床のひびから赤い小さな芽が出ていただけだった。


 それが三日で3mほどの高さになった。


 幹は赤みを帯びた金色。


 葉は表が深い赤、裏が淡い金。


 枝には、赤と金が混ざったような丸い実が生っている。


 甘い香りがした。


 ただの果実の匂いではない。


 命そのものが蜜になったような匂い。


 フィルエは、その木の前で足を止めた。


「今日も甘い」


《匂い漏れは?》


「深部内だけ。外には漏れてない」


《よし》


 ロードの声は、落ち着いている。


 最初に見つけた時はかなり騒いだ。


 けれど、三日経って、封鎖もできた。


 周囲には影軍縫いカゲヌイの影糸。


 グズの遠隔泥門。


 白骨書記の監視札。


 ハイハネの匂い隠し霧。


 ガルザヴェインの戦王圧によるゴブリン接近禁止。


 深部重要区画として、しっかり守られている。


 ここまで来る侵入者がいれば、全力で殺せばいい。


 それだけだ。


《管理音声、再確認》


《名称:エリラの実》


《分類:神級素材しんきゅうそざい


《用途:エリクサー調合素材の一つ》


《完全なエリクサー作成には、五つの神級素材が必要》


《エリラの実は、その一つです》


《通常摂食も可能》


《味覚的価値:極めて高》


《摂食許可:非推奨》


「非推奨って書き方、弱い」


《では、摂食禁止に変更します》


《摂食許可:禁止》


 フィルエは少し笑った。


「ロード、食べたい?」


《価値確認のために一つくらい、とは思った》


「それ、食べたいってこと」


《違う》


「違わない」


 白骨書記が、いつの間にか横にいた。


 骨板を見せる。



エリラの実管理記録:


実の数:七個

成熟中:三個

未成熟:四個

落果:なし

鳥害:なし

虫害:なし

ゴブリン接近:なし

ガルザヴェイン接近:許可範囲内

ロード試食未遂:警戒継続



《最後の項目を消せ!》


 白骨書記は、かた、と顎を鳴らした。


 消さなかった。


 フィルエはまた笑った。


 ガルザヴェインも来た。


 彼は完全回復した巨体で、エリラの木の前に膝をつく。


 以前のように食べたそうに見ているわけではない。


 見張っている。


 守っている。


「キ、ダイジョウブ」


「うん」


「アマイ」


「食べないでね」


「タベナイ」


「偉い」


「オレ、マモル」


 ガルザヴェインの声は真面目だった。


 この木は、魔神契約跡に生えた。


 彼にとっても、何か意味があるのかもしれない。


 フィルエは、木へ手をかざした。


 触れない距離で。


 温かい。


 エリラの木の内側には、いろいろなものが混じっている。


 十万の命。


 ガルザヴェインの魔神性。


 ロードとの契約線。


 迷宮のSランク化。


 アレクの帰りたいという願い。


 マルクの記録。


 オルフェンの祈り。


 エリシアの氷。


 死んだ者たちの残滓。


 それらが、なぜか甘い実になっている。


「この木、治すために生えてるんだね」


《推定ではありますが、生命回復、状態復元、魂魄安定に関する高位素材反応を確認しています》


「エリクサーって、すごい?」


《完成品であれば、どんな怪我や状態異常でも完治させるとされています》


「死んだ人は?」


《死者蘇生は確認されていません》


「そっか」


 フィルエは少しだけ、アレクのことを思い出した。


 帰れなかった人。


 記録を守った人。


 ガルザヴェインに傷を残した人。


 彼は戻らない。


 でも、彼の何かは迷宮に残った。


 そして、その残ったものが、この木に少しだけ混じっている気がする。


「ロード」


《何だ》


「この実、いつか使う?」


《使う時が来ない方がよい》


「でも、あると安心?」


《……そうだな》


 ロードは少しだけ黙った。


《フィルエ》


「うん」


《お前に何かあった時、これは使えるかもしれん》


「私?」


《命脈契約者だからな。余の損失だ》


「損失」


《そうだ。損失だ》


 フィルエは笑った。


「便利な言葉」


《便利な言葉で何が悪い》


「悪くない」


 ガルザヴェインが横から言った。


「フィルエ、シナナイ。ロード、コマル」


《その通りだ》


「私も困る」


 三者の答えが、少しだけ重なった。


 エリラの実が、枝の上で静かに揺れた。


 赤と金の光。


 甘い匂い。


 Sランク迷宮の深部に生えた、神級素材の木。


 それは恐ろしく貴重で、外に知られれば間違いなく争いを呼ぶ。


 でも、今は静かだった。


 ただ、フィルエの一日の終わりに、甘く香っているだけだった。


    ◇


 夜。


 フィルエは森灰観測室へ戻った。


 外では、また一組の無許可冒険者が封鎖線の遠くをうろついている。


 浅層では、昼に逃げ帰った冒険者が落とした銀の小瓶を、白骨書記が分類している。


 グズは泥門を閉じている。


 ハイハネは羽を畳んで眠っている。


 ガルザヴェインは、エリラの木の見張りを終えて魔神練兵窟へ戻った。


 ロードは、エリラの実をどう保管するか、まだ管理音声と話している。


 フィルエは、柔らかい床に横になった。


 今日もいろいろあった。


 無許可冒険者が来た。


 二人死んで、一人逃げた。


 一カ月のソウル収支を確認した。


 ゴブリンが泥から吐き出された。


 ガルザヴェインは完全に元気だった。


 エリラの実は、今日も甘かった。


「ロード」


《何だ》


「明日も、冒険者来るかな」


《来るだろう》


「嬉しい?」


《当然だ。ソウルになる》


「うん」


《ただし、エリラの木まで来たら殺す》


「そこまで来られたらね」


《来させん》


「うん」


 フィルエは目を閉じた。


 森の音。


 迷宮の音。


 骨の音。


 泥の音。


 霧の音。


 遠くで、エリラの実が熟していく音。


 Sランク迷宮になっても、日々は続く。


 恐ろしい戦いの後にも、こういう一日がある。


 人間は欲で来る。


 迷宮は喰う。


 配下は育つ。


 木は実る。


 フィルエは、そのことを少しだけ嬉しく思った。


 白い霧の奥で、エリラの実が一つ、赤金色に光った。

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