63.大人しくしていられない団長とは私のこと
はい今緊急で説明をしているんですけども、ちょっと今副団長からお説教をくらっております。二十分くらい…
「はぁ…仕方ありませんね、分かりました。確かに騎士団とはいえこれほど夜遅い時間となると現状では危険を見逃すことに繋がるかもしれません。確かに助かることではあるのですが…」
額に手を当ててため息をつく副団長の姿だけをみると私がなんかやらかしたんだろうなって思われるかもしれませんが、が!!!!!今回副団長に話をした私はいたって真面目です。大真面目です!
「私としてはやはりこの眠ることが必要ではなく、なおかつ暗闇にも視界を奪われることがない身体を持て余したくないのですよ。それに夜間警備の人員も一人だけでは精神面での負担も増えるでしょう?定期的に誰かと少し話をすることでもそれを和らげることもできるはずです」
「…理には適っているというのはすでに理解してはいるのですが…団長ともあろうものが…」
「そういった面は気にするつもりはありません。騎士団長が直接出向いて夜間警備をしているなんて噂でこの騎士団の品位を下げれるというのならやってみろって話です」
「…書類業務は貯めませんか?」
「貯めません!」
「サボりませんね?」
「サボりません!」
「居眠り」
「出来るわけないですよね」
「…分かりました。後で当番を調整しておきます」
やったぜ副団長!あんたが大将だ!
「で す が。毎日だと部下の者たちがそれに頼りっきりになることはいけませんので不定期に組みます」
「ありがとうございます副団長」
と、いうわけで今日の私は夜間警備の仕事に私も使ってくれないかと副団長に駄々をこねて怒られたということなんですね。やだやだお母さん僕もやる!つまりはそういうこと
いやいやいやいやいや、あのね?ちょっと聞いて欲しいの。散々擦ってきた話なんですけどね?私ってリビングメイル=アンデッドなんですよね。まぁちょっと特殊な進化したのでご飯は必要になったんですが…基本的に生物が生きていく上で必要なことが私には要らないんですよ。
つまり眠らなくていいから夜の間クッソ暇なんですよ。深夜超えて朝まで話すのなんて相手に申し訳ないですし。
一応眠る真似事は出来ますよ?意識を薄くしてぼけーってするだけなんですけど。ただ退屈の苦痛にずっと苦しめられるんですよね。何かしてないと落ち着かないんですよね。時間がもったいなく感じますし
なので思い切って深夜のお仕事に私自身も使ってやろうかと思い立ったわけです。正直心の中ではカイ団長とは別ベクトルで迷惑をかけてしまっているかもしれませんが、私はただお役に立てることがあるならなんでもやりたいという気持ちなので許していただきたい。
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さて、領内の小さな町にやってきました。代理団長になってからというものしばらくは早々に執務に慣れるためにも団長室にこもりっきりだったので落ち着いた頃には領内を回ろうかと計画していました。カイ団長の頃は特に何も考えてなかったけど挨拶ぐらいはしたほうがいいよねって理由でやってたぽいんで、せっかくなんで私もそれを引き継いでしまおうってわけです。
この町の巡回には何度か参加したことはありますが、あのころはただの一般騎士でしたからね。こうして私が周囲に護衛を引き連れてくることになるなんて…
「アルバ団長。次はあちらの雑貨屋になります」
「分かりました」
「あの…我々に敬語は不要ですので」
「あ、すいません。もう今更口調を変えるのも無理そうなので」
そう、今更偉そうなキャラ作りをするのが無理なのである。すっかりこの丁寧語キャラが魂に刻まれちゃったので今更それを変えろと言われてももう出来ないんですよね。だから私は一生このキャラでいくぜ!
部下の一人が雑貨屋のドアを叩く
「失礼する。源流騎士団だ」
「どうぞ中へ」
中から少し年老いた感じの男性の声が聞こえてくる。確かここは…トーマスさんっていうおじさんがやっていたんだったかな。
中に入ると何人かのお客さんとカウンターで人のいい顔をしたおじさんが両手を広げて歓迎していた。
「これはこれは騎士団のみなさん。いつもこの辺りを守ってくれてありがとうございます。本日はどういったご用件でしょうか」
店内の空気が少しピリッとしたものになる。無理もない、いきなりこの大人数の騎士がやってきたら何かあるのではないかと疑うはずだ。
「雑貨屋のトーマスだな。今日は我らが源流騎士団の騎士団長が変わったため挨拶にまいった。アルバ団長」
護衛の人に少し端に避けてもらうと私とトーマスさんが向きあうようになる。
「おや…あなたは…」
「お久しぶりですトーマスさん。元気にやっていましたか?」
「えぇおかげさまで毎日元気に過ごしていますよ。まさかあなたが騎士団長さんだったなんて」
驚きながらも優しい顔に戻るトーマスさんを見ると少なくとも私に対して不信感を持っているわけではなさそうです。あぁ良かった。
「改めまして先日源流騎士団の代理団長となりましたアルバ・ローダンテです。まだまだ団長としての経験が浅く不安に思われるかもしれませんが、皆さまが安全に暮らすことができるよう日々尽力してまいりたいと思いますので皆さまよろしくお願いします」
部下の人たちと共に敬礼する私の姿に、「おぉ…」という感嘆の声と共に拍手が雑貨屋の中に響き渡る。ほっ、どうやら挨拶は上手くいったみたいです。日本人の言い回しに感謝しないとね。
「そういえば前の騎士団長さんはどうしたんだい?元気な娘さんだったと記憶にあるんだけど」
「カイ団長は現在魔界での遠征の任を任されております。その間に団長の席が空いているというのはよろしくないということになり、私が任命されました」
「なるほどぉ…そういうことだったんですね。貴方には以前から頑張っている姿を見ていますよ。きっと騎士団長になっても頑張ってくれると信じています」
「暖かいお言葉に感謝いたします」
…へへへ、そういってもらえるとほんとにうれしい。やっぱり人間、頑張ったことをほめてもらうと救われたっている気持ちになるよね。まぁ死んでるようなもんだけど私
「おぉそうだ!せっかくなんだからうちからガップルを持っていきなさい。昨日息子の家から食べきれないほど送られてきたんだ」
うおっ!?ガップルですとな!?むむむ…個人的にはそれは非常にありがたい気持ちなんだけどさすがにそんなものを受け取っていいのか…
ガップルというのは…まぁ簡単に言ってしまえば黄色くなったリンゴなんです。日本のリンゴと比べると甘さよりも酸っぱさが少しだけ目立つんですけど逆にそれが病みつきになるっていう…特産品ですね。名前と見た目に少し既視感があるのがあれですけど…とても良い果実です。
「い、いえいえ。そこまでお気をつかわれては…」
「何を言ってるんですか、私一人では腐らせてしまうんです。それにどうせならいつも頑張ってくれている騎士さんたちに感謝の気持ちに何かお渡ししたかったんですよ」
うぅ~っ…そこまで言われると断るわけにはいかないよね…でもやっぱこういうの受け取ったりしてたら賄賂とか疑われそうだし…
平然を装いつつも色々悩んでいるうちにトーマスさんは果物が結構ぎっしりと詰まった木の籠を持ってきていた。うん、もう考えるのはめんどくさい
「…では、受け取らせていただきます」
結局断ることもできずに多めのガップルを受け取ってしまった。まぁ…異世界だし私が考えすぎッてことにしてありがたくいただいておこう。
帰るときにはしっかりと部下に交代で籠を持つこととつまみぐい禁止を言い渡しておいた。
雑貨屋を後にすると、何件か他の店舗を訪問させていただいた。まぁ内容としてはコピペ構文みたいな内容だったんですけどね(あっでもさすがに行く先々で物をもらったとかではないですよ!?この時にもらったのは結局トーマスさんからだけです)
やはりどこに行っても最初は団長が変わって…正確に言うと変わってはいないんだけど、まぁ変わって不安に思われるんですけど結局は信頼している。頼りにしていますと言われて円滑に終えることができました。ふむ、こうしていざ自分があちこちを回ってみますと騎士団と領民の仲は良いようですね。
私の知っている話だと騎士団とは仲が悪いなんてのも聞きますけど、ここだと良好な関係を築けているのでいざというときにも円滑に進みそうです。
避難を指示したときにゴタゴタになるってことがあれば死人が出てもおかしくないのでひとまずは安心していいかと
それだけレギルス様が慕われているってことなんでしょうか。…まぁこうやって辺りを見渡すとね
部下たちと町を歩きながら町の様子を見ると子供たちが元気に走り回り、店を構える者が大きな声で呼び掛け、住人らしきものたちが笑いながら話すなど、町の小ささには似合わないほどの活気が感じられる。
…生きているころにふと考えたことがあるんですよね。今日とか明日とか昨日とか、毎日ってきっと誰かの誕生日だし、誰かが亡くなる日なんだろうなって。だから…今日私の知っている町はこうやって笑顔に包まれているけど、私の知らないどこかだとそれとは真逆なのかもしれない。…まぁそれっぽいこと考えたところで私がそういうところまで救えるようなキャラじゃありませんし、私にできることと言ったら、私の知る所を出来る限りこうやって素晴らしい日を過ごせるようにするぐらいなんでね。
…いいなぁ平和な異世界の日常って、私も元の世界での人生もうちょっとこういう感じに余裕持っておけばよかったなぁ…いや今更後悔するのってダサいか。せっかくこういう機会に恵まれたんだし、改めて楽しく生きていかないとねって決心する私なのでした。(あれなんかこれ打ち切りみたいな…)




