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そのダンジョンシェルパは龍をも導く  作者: 坂門
その恩返しはリーダーのいない時に

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その恩返しはリーダーのいない時に Ⅳ

 カシュッ! カシュッ! 

 ヴィヴィのハンドボウガンが乾いた音が坑道に響いた。グリアムが後ろへと跳ねるのを合図に放たれた短矢は、前方に揺らめいていた初見殺し(モノアイ)を瞬殺、風船のように破裂させる。

 11階へと下りた瞬間の初見殺しとの遭遇(エンカウント)に、ヴィヴィは冷静な対応を見せた。


「おほぅ! ヴィヴィちゃん、やるねえ」

「ふっふ~ん」


 自分より早い対応を見せたヴィヴィに、ラウラは投げナイフを構えたまま、素直に感嘆の声を上げた。だがグリアムは、ドヤ顔で胸を張るヴィヴィに対して、冷ややかに釘を刺す。


「調子に乗り過ぎるなよ」

「ちょっとくらい褒めてよ」

「はいはいはい、よくやった、よくやった」

「グリアム、雑」


 グリアムは不貞腐れているヴィヴィを一瞥して、すぐにモノアイのドロップを漁る。


 やっぱりねえか。


 前回の時と同様、【ミスリル】が混じっていないかと、イレギュラーを期待したが、落ちているのはいつもの通り【アイヴァンミストル】だけだった。

 グリアムがドロップを漁っている横で、ラウラはカロルとアリーチェに、初見殺し(モノアイ)の危険性について、身振り手振りを交えながら講義(レクチャー)を始める。ふたりとも先程とは打って変わり、真剣な表情でラウラの言葉に耳を傾けていた。


 これだけでも手練れと一緒に潜る意味はあるよな。


 ラウラ達を見つめながら、先程ラウラから聞いた【ノーヴァアザリア(新星ノアザリア)】の方針を、グリアムは思い出す。

 そしてラウラの隣でカロルとアリーチェにドヤ顔を見せているヴィヴィを見て、また深い溜め息をついた。


 しかし、ヴィヴィのやつ、ラウラより速かったな。


 遭遇の経験があるとはいえ、反射的に撃てるようになるには、それ相応の経験を必要とする。経験の浅いヴィヴィが、A(クラス)のラウラより速い反応を見せた事に、グリアムも内心驚いていた。


 目立ってはいないが、サーラも躊躇なく飛び出していたな。


 ふたりの姿から、今までの経験がしっかり蓄積されている確認が出来て、その成長の早さに、グリアムの口元は思わず綻んでしまう。


「あれれ? グリアムさん、なに笑ってるの?」


 講義(レクチャー)を終えたラウラが、物珍し気にグリアムを見つめる。


「笑ってねえよ」

「あれれぇ~?」


 追い打ちを掛けるように覗き込むラウラの表情は、いたずらっ子のような悪い笑みを見せていた。


■□


 しかし、こうも出ないか?


 今回の目的は、急造パーティーの昇級(クラスアップ)。C級への昇級に必要なアイテムは、一角兎(アルミラージ)が落とす【アルミラージの一角】か、屍人(グール)の落とす【グールの歯(グールティース)】。

 アルミラージもグールもレアモンスターではない。だが、先程から遭遇(エンカウント)するのは、ホブゴブリンの群れやトロール系ばかりだった。

 時折、出現する(トラップ)を避けつつ、パーティーの足が止まる事はない。だが、順調な歩みは緊張を徐々に削いでいき、パーティーの集中は否応なしに途切れていった。


『『ギャアギャアギャアギャアギャア!』』


 だが、次の瞬間、耳にまとわりつく気持ちの悪い哭き声(ノイズ)が届いた。だが、聞きなれた哭き声(ノイズ)に、パーティーの集中は上がっていかない。


「またホブゴブ(リン)~。いい加減飽きたよ」

「カロル、集中を切らさない」

「でもラウ様、またですよ」


 グダグダとくさるカロルの横で、アリーチェは前を見据える。


「ラウラさん、これ私にやらせて」

「アリーチェ、行ける?」


 アリーチェはパーティーに向かって大きく頷くと、グリアムはどうぞと言わんばかりに一歩下がった。

 アリーチェは腰に付けている小さな革のポーチから何かを取り出すと、モゾモゾと手元を動かしながら、向かって来るホブゴブリンの群れへ走り出す。

 アリーチェは、ホブゴブリンの群れとの距離を測りながら、手元から何かを地面に滑らせていった。

 サーラはアリーチェの動きを見つめていると、記憶の中のラウラとダブっていく。


「ラウラさん、アリーチェさんのあれってこの間ラウラさんが使った盗賊(ヴォルーズ)の罠ですか?」


 ラウラも同じようにアリーチェを見つめながら、サーラに頷いた。


「そうだよ。この間はシビレキノコの罠を使ったけど、アリーチェは多分爆発系⋯⋯」


 ドゴォオオオオン!!


 ラウラの言葉を遮るかのように、洞内を震わすほどの爆発音が、サーラの体を震わせた。ラウラの言った通り、洞内に炎柱が上がり熱の波がパーティーへ届いた。

 爆炎に巻かれ、爆散したホブゴブリンが地面にいくつも転がっていく。その爆発の勢いは凄まじく、初めて見る光景にサーラは思わず見入ってしまった。


「⋯⋯甘いなぁ」

「え?」


 ラウラが厳しい顔で呟く。呟きの意味が分からず戸惑うサーラを余所に、爆煙の中から同胞の躯を踏みつけながら迫るホブゴブリンの影がゆらりと浮かび上がった。

数は減れど、勢いは落ちる事なく、気色の悪い敵意と欲をパーティーに向け続けている。

 カロルは揺らめく影へ飛び込むと、サーラも負けじとカロルの後に続いた。

 爆煙の中に揺らめく、ホブゴブリンの影。その影にふたりは、躊躇なく飛び込んだ。

 爆煙の収束と共に、姿を現すホブゴブリンの残党から爆発に怯む姿など微塵も見えない。耳障りな足音(ノイズ)を奏でながら、パーティーへ欲のままに襲い掛かった。

 ヴィヴィのハンドボウガンは乾いた音を鳴らし続け、カロルの切っ先はホブゴブリンの首を刎ね続ける。サーラの拳によってホブゴブリンの首はあらぬ方向へと折れていき、浮かない顔のアリーチェもホブゴブリンの残党の中へ飛び込んで行った。


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