第3話 転機
伊右衛門が話している時、「どうして喋っているのか」とみんな思っていたことだろう。みゆというマネージャーも何故かそれが当然ですよと言わんばかりに喋っている。僕らは口には出さずに談笑に混じろうとしていたが、皆動揺が隠せず上手く話せなかった。かくいうこのぶりむさんもすごくびっくりしていてしばらく談笑に混じることができなかった。
疑問は色々あった。「お父さんに殺されるんじゃ?」「おにいちゃんに殴られるんじゃ?」「iPad壊されるのでは?」などなど。
しかし、僕もクズ共も口には出さなかった。この時だけは色々なクランを破壊してきたらるさんもこの空気を破壊しなかった。
そう、1人を除いては。
ひとりだけ、たったひとりだけ、一線を画す最凶最悪の人間がいた。それこそが伊右衛門史上最大の宿敵であり、リーダーであった、あめだった。彼はこのチームで最悪の人間だった。平気で人を裏切るし、女を物のように扱う。そのくせ女たらしだし写真に映る女はだいたいセフレ。今では人間なのかどうか僕らも疑っている程だ。そんな人間がまともなわけもなく、伊右衛門を執拗に追い立てていった。
流石のらるさんもこの時だけは止めていた、ような気がする。
僕は止めなかった、もう諦めていたのだと思う。数々の事件により孤立する伊右衛門を見ていられなかったのかもしれない。伊右衛門へのやつあたりやイチャモン、陰キャいじり、キモオタいじりを見ていられなかったのかもしれない。
―――いや違う。そうじゃないんだ。実は僕も、いや俺も〝そっち側〟の人間だったのだ。
俺らはあめの先導で伊右衛門のことをツイートした。いろいろな人へ広めていった。こんなことが許されていいのか、悪魔のような所業だとキミらは思うだろう。だが、こんな無法地帯だったからこそ今、俺も伊右衛門もクズ共も必死に生きているのだ。ここに存在し、生きているのだ。
それに、この伊右衛門がした行動は俺らに火をつけてしまった。隠れた潜在能力をさらに引き出してしまった。この事件をきっかけにして、伊右衛門からしたら怒涛の、俺らからしたら楽しい毎日がスタートしたのだ。と、いってもこの事件が終わったあとは自慰行為が終わった男のごとく俺らは賢者タイムへ突入し、冷静になり、いつもの仲良しに戻っていた。この時は、これでもう大きな事件は起きないだろう。
そう思っていた。その矢先、彗星の如く現れた1人の男がいた。No6.Tosだ。彼は、M4に何故かすごい自信があり何かと張り合ってくる男だった。そして何より「カワイイ系」を狙っている男だったのだ。
こいつのせいで、この男のせいで、伊右衛門はまた、大事件をおこしてしまう。
これが後の、【ガチのゲイ】事件である。
最初はみんなで楽しく話していた。だが俺らはクラン、チームなのだ。大会に出たり色々していた。人数が多いと出れる人数が決まる。この頃はスクワッドが主流だったため、2人が余ってしまうのだ。この時点で事件の名前、話の流れで察した人は多いだろう。伊右衛門とトスがいつも大会へ出ず、通話していたのだ。それだけではない。
寝落ちはもちろん、鍵垢でも「可愛い」「好き」「付き合いたい」などとツイートしていた。
これには鋼のメンタルな俺らも思わず震えた。
そこへ更に追い打ちをかけるかのようにトスが口を滑らせた。
「エロイプ気持ちよかった」
俺らはこの時初めて「頭が真っ白になる」という感覚を覚えた。これが人生で最初で最後の頭が真っ白状態だった。俺らは伊右衛門がみゆのことを好きだと思っていたのだ。なのにトスに好きって言ったり、付き合ってって言ったり、エロイプしたり。トスが本命だったのだ。流石の俺らも引いてしまった。
これによってまた、更に俺らの関係に溝が入った。もちろんツイートも、晒しもした。
これによって伊右衛門は一時ネットをやめてしまった。
伊右衛門は消化期間でも作ろうとしたのかわからないが、ネットを一時的にではあるがやめてしまったのだ。それが間違いだとも気づかずに。
この行動が引き金になり、もうひとつの事件、いや真相が明かされてしまう。ネット恋愛のゲイだなんて、伊右衛門全盛期だと誰もがそう思った。伊右衛門の全盛期はゲイだと誰もが言っていた。
だがそれをこの真相が、事件が塗り替えてしまうのだ。
伊右衛門史上最大の事件【みゆにカタオナ事件】である。
伊右衛門は、ネットをやめてもやめなくても、地獄を味わう。
ここからどうなるのか、気になりますね。




