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7月27日 ―18―

「あらー、じゃあ今日、郎ちゃんと会えたのは亮ちゃんのおかげねー」

 佐橋さんと出会ったときのことを話して、その後に今日あったこと、きっかけを佐橋さんが作ったことを麗華さんに話した。

「そう、ですね。俺も、良かった、と、思い、ます。それに、事故の、ことは、許せません、けど、佐橋さん、と話せるように、なった、こと、だけは、良かったと、思ってます」

「そうだなー。でも、兄ちゃん。りょーりょーはたぶん、兄ちゃんと知り合いじゃなくても今日みたいなことはやったと思うよ。カラオケって部屋から結構、声漏れるし。兄ちゃん実は前から目を付けられてたんじゃないかな?」

「あり得るわね。アリアが亮さんに相談したのって、太郎さんと仲良くなるより前の話よね。あの人、さっきは知り合いの自分が説得するのはとか言っていたけど。たぶん、太郎さんと仲良くなくても私達にやらせたわね」

「それはー、アリアちゃんのことだものー。自分でお願いするのが当然じゃないのー?」

「そうだけど、『彩』の問題でもあるよ? りょーりょーだって『彩』の一員なのに?」

「でもー、亮ちゃんにいきなり、新人連れて来られても困る人がー、いるじゃない?」

 そう言って、麗華さんは彩さんに視線を送る。

「何で、私を見るのよ。困らないわよ、別に」

「でもー、アリアちゃんにお話は全部任せて、私は必要以上に関わりませんーって、やりそうよねー」

 さすが母親ですね。今日まさにその状況だった。確か、あの時には勧誘の話も佐橋さんから軽く出ていたはずだ。それであの態度という……。まあ、アリアちゃんが彩さんに勧誘を頼んだ辺りからは違っていたけど。

「そんなこと、ないわよ。必要以上の話だって、その、……ねえ、太郎さん?」

「えと、そう、だね。その、とても、魅力的、な、笑顔で、脅して、くれる、くらいには」

「太郎さん! それは謝ったじゃない! 魅力的とか言われたって、後の言葉で台無しよ!」

「あらー、彩ちゃんがその日にあった人と仲良くなっているのはいいことよー。亮ちゃんの時だって結構かかったじゃない」

 それは初耳だ。あの佐橋さんが仲良くなるのに手こずるなんて。

「でも、仲良くとゆーか、兄ちゃんは彩ねえにかなりビビってたけどなー」

 それにしても麗華さん、俺は脅されたって言ったんだけど? それで仲がいいってどういう関係ですか? まあ、あの後から少し彩さんと接しやすくなったかな、とは思うけれど。でも、アリアちゃんに言われたからとかは、本当は関係なくて――。

「彩さん、は、きっと、誰とでも、その、すぐ仲良く、なれたかな、と思う。思い、ます」

 俺と違って気遣いも出来るし口下手な訳でもない。それに怖いけど、素の彩さんは親しみやすいと思う。

「あらー、そうかしらー。郎ちゃんがそう言うのなら、そういうことでいいわー」

「そんなことより、麗華。そろそろ、お腹空いてきたよ」

 そろそろ? 確かに、空腹を覚えてきたが。

 そう思い外を見るとだいぶ暗くなってきていた。随分と話すのに時間がかかっていたようだ。それも仕方のないことかもしれない。話の内容を考えれば一時間とかからないものだった。

 しかし、アリアちゃんが茶々を入れて、麗華さんが奔放に話を逸らし、彩さんが激昂したり苦労したりしながら話を戻す。それだけでも多くの時間が取られた。その上、俺は口下手ときたものだ。特にアリアちゃんと麗華さんによって話が脱線した回数を数えるには、両手足じゃ足りない程だった。

「あらあら、本当ねー。郎ちゃんが、こんな時間になってしまったのは、私とアリアちゃんのせいだーって顔してるわねー」

「し、して、ないです」

「じゃあ、お詫びに晩ご飯でも食べってもらおうかしらー」

「え? い、いや、そんな」

「そうね。時間取らせちゃったし」

「兄ちゃん、この後は何かあるの?」

「え、いや、えと。夕飯、の、準備を家で――じゃなくて、えと」

「麗華、兄ちゃんが晩ご飯食べてくってー」

 言ってないよね!

 美味しいお茶も出してもらってご飯までは申し訳ない。何でさらっと嘘吐けなかったかな。用事がって言えば良かったのに。

「そうみたいねー。ごめんねー、郎ちゃん。二人で亮ちゃん以外の人を連れて来るの初めてだからー、お姉さん舞い上がっちゃってー。もう少しだけ付き合ってねー」

「えと、……はい。ご馳走に、なります」

「やったー、決まりだなー」

「じゃあ、ご飯はここでね。母さん、手伝うよ」

「あらー、じゃあ、彩ちゃんお願いするわー」

 そう言って二人でカウンターに入っていく。やはり、あそこで料理も出来るようだ。

「あの、お、俺も、何か」

「いいわよー、郎ちゃんは。お客さんだものー。もっと、ウチに入り浸ってくれたらー、そのときは遠慮なくお願いしようかしらー」

「やったね、兄ちゃん! 新しい目標を手に入れたよ」

「何の、こと、かな?」

「ここで、お手伝い出来るようになるまで頑張ってね。あたしはいつでも待ってるよ」

「前、向きに、検討、するよ」

「兄ちゃん、そんな政治家風の返答なんて古いよ! 使い古されてるよ! しかもそれじゃ、やらないってことじゃん。ダメだよ、兄ちゃん」

「じゃあ、どう、すれば」

「えっと、……ニート風、なんてどうかな?」

「……どんなの?」

「やればいつでもできるんだ。本気を出せば、あっという間。だから、今頑張る必要なんてないんだ」

 それも似たようなのが前からありそうだよ。しかもダメって言ったのに、やらない方向に持っていってるよ。あと、世のニートの方は別にそんなこと考えてないから、そういうこと言っちゃ、ダメ。

「あの、それも、やらない、感じが」

「あ、そっか」

「アリア、ご飯できるまで、そうやって太郎さんと遊んでて」

「そうねー、お願いねー。アリアちゃん。そろそろ、譲司さんも帰ってくる頃だと思うわー」

「りょーかいしたよ。じゃあ、兄ちゃん。食いしん坊で熱血なテニスプレイヤー風なんてどうかな? 頑張れ頑張れ出来る出来る! やってやる!」

 もう何の話をしていたのか、わからなくなってきた。

食いしん坊なテニスプレイヤーには、へこんだ時に元気をもらってます。

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