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スーパー新世界:スーパーヒーローが異世界に転移した物語  作者: 佐藤蓮
佐野円香

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第一章9 『新たな敵と味方!』

円香は一歩前へ踏み出した。

するとステラが震える手で、すぐに彼の腕を掴む。


「お、お兄ちゃん……あいつら、私の本当の親じゃないの……!!」


彼女はグレックとアリエルの方を見ることすら怖いのか、円香の背中へしがみついた。

円香は短く頷く。


「わかった。」


グレックは血まみれの手を汚れた布でゆっくり拭い、大声で笑い出した。


「おいおい、聞いたかアリエル? このガキ、俺たちを脅してるぞ! ハッハッハ!!」


だがアリエルは笑わなかった。

彼女の視線は、自分の魔法が直撃した場所へ釘付けになっている。


「馬鹿、油断するな。こいつ、私の攻撃を受けても平然としてた。」


「気にしすぎだって。」


グレックはテーブルの上にあった血塗れのナイフを掴み、退屈そうに指先で回した。


「ただの子供だろ? どうせガキの頃から防御ばっか鍛えてきたんだ。」


円香は黙ったまま二人を見つめていた。

部屋の中には血と肉の臭いが重く漂っている。

テーブルの蝋燭が風で揺れ、壁に映る影が不気味に歪んだ。

ステラはさらに強く彼の腕を握りしめる。


「お兄ちゃん……怖いよ……」


「大丈夫。」


円香はグレックから目を逸らさないまま、一歩前へ出た。


「必ず君をここから連れ出す。」


「う、うん……」


「ここで待ってろ。すぐ終わる。」


「お兄ちゃん……あの人……パパ……じゃなくて、そのおじさん強いよ! 気をつけて……!」


円香はそっと彼女の頭へ手を置いた。


「ありがとう。俺なら大丈夫だ。」


『大丈夫……? いや、気を抜くな。失敗したらステラが死ぬ……!』


「おしゃべりは終わりか?」


グレックはナイフをテーブルへ突き立てた。

鈍い音と共に、机へ深い亀裂が走る。


「アリエル、お前は見てろ。こいつは男同士で片付ける。」


彼は傲慢な笑みを浮かべながら前へ歩き出した。


「グレック!! 本気なの!?」


「こんなチビ相手に俺が負けると思うか? 見ろよ、ステラと同じくらいの背丈じゃねぇか!!」


「だから油断するなって言ってるのよ……!」


「あーもうわかってるって! お前は手を出すな! 今夜は特別な晩餐になるんだからなぁ!!」

重い足音に合わせて床板が不気味に軋む。

やがて円香とグレックは部屋の中央で向かい合った。


「悪いな坊主。お前は運が悪かった。」


「……」


「俺とステラを逃がせ。そうすれば誰も傷つかない。」


『頼む……ここで引け……!!』


「ダメだダメだ!! そんなので済むわけねぇだろ! お前らを殺して食う! あの綺麗な嬢ちゃんも、ただ食うだけじゃなくて――」


その瞬間、円香の目が見開かれた。

床が爆ぜる。


「なっ――!?」


次の瞬間には、円香の姿は消えていた。

ドォン!!

円香はグレックの喉を掴み、そのまま天井を突き破って夜空へ飛び出した。

木片と瓦礫が雨のように降り注ぐ。


「がっ……!!」


グレックは苦しそうに呻きながら、狂ったようにナイフを振り回した。

だが普通の刃では円香の身体に傷一つ付けられない。

二人はさらに高度を上げていく。

やがて下の村は、霧の中に沈むぼやけた光へ変わっていた。


「俺と仲間を脅した……お前だけは許さない。」


円香は片手で彼の首を締め上げる。

グレックはなおも必死にナイフを突き立てようとしていた。


「は、離せぇ……!!」


円香は一瞬だけ動きを止める。


「……そうか。」


『ステラに見せるわけにはいかない。』


円香はさらに前方へ飛び――そのまま指を離した。

グレックの身体は霧の底へ真っ逆さまに落ちていく。


『しまった!! ステラがアリエルと二人きりだ!!』


円香は即座に方向転換した。


「お兄ちゃん!! 助けてぇ!!」


家へ戻ると、アリエルがステラを前に抱え込むように拘束していた。

円香が着地した瞬間、アリエルは少女の頭へ掌を押し当てる。

その顔は恐怖で歪んでいた。


『……俺を怖がってる?』


「近づくな!! 近づけばこの子を殺す!!」


円香はゆっくり両手を上げ、二歩後ろへ下がった。


「アリエルさん……お願いです、落ち着いてください!!」


だが彼女は聞いていない。


「夫はどこ!!」


「……」


彼女の目がさらに大きく見開かれる。


「グレックはどこなのよ!!!」


「お兄ちゃん!!」


アリエルはステラの髪を乱暴に引っ張った。


「ひゃあっ!!」


「黙れ、このゴミが!!」


『この女……!!』


円香が一歩踏み出す。


「来るな!!」


彼が飛び込むと察した瞬間、アリエルはステラを乱暴に突き飛ばし、風の刃を放とうとした――

その時だった。

バァン!!

家の扉が吹き飛ぶ。


「エリオット!!!」


濃霧の中からエリオットが突撃してきた。

その背にはブリアンナが乗っている。

重量のあるペガサスの体当たりが、真正面からアリエルへ炸裂した。


「がぁぁっ!!」


アリエルの身体は部屋の端まで吹き飛び、そのまま壁へ激突した。

円香はその隙を逃さず、一瞬でステラの元へ駆け寄ると、そのまま彼女を抱き上げた。


「お兄ちゃん……? 本当にお兄ちゃんなの……?」


円香は彼女を見つめ、優しく微笑む。


「ああ、ステラ。もう大丈夫だ。全部終わった。」


「お……終わったの……?」


少女の頬を涙が伝い、そのまま彼の胸へ顔を埋めて泣き出した。

その時、エリオットとブリアンナが駆け寄ってくる。


「円香!! 無事!?」


「あ? うん!」


すると瓦礫の下から、アリエルの怒鳴り声が響いた。


「このクソガキどもがぁぁ!!」


崩れた木材の隙間から、血塗れの腕が現れる。


「ブリアンナ! エリオット! ステラを連れて、俺たちが泊まってる家へ行ってくれ!」


「嫌! 私も一緒に残る!」


「ブリアンナ、時間がない!」


『ほんと頑固だな……!』


「エリオット! ステラを連れて家へ戻って! 私は円香と残る!」


円香は慎重にステラをエリオットの背へ乗せた。


「や、やだ……! お兄ちゃん……!」


エリオットは大きく鼻を鳴らし、翼を広げる。

次の瞬間には、霧の中へ一気に飛び去っていた。

ステラは円香へ手を伸ばした。

まるで離れたくないと言うように。

だが、その姿もすぐ濃霧の向こうへ消えていく。

やがて瓦礫の山を押し退けながら、アリエルが姿を現した。

全身は痣と擦り傷だらけで、血まで流れている。

壁へ手をつきながら、荒い息を吐いていた。

その目が狂ったように室内を彷徨う。


「ステラはどこ!?」


円香はゆっくりと腕を下ろし、エリオットが飛び去った方向を塞ぐようにアリエルの前へ立った。


「ステラならここにはいない。」


その声は静かだった。

だが、もう先程までの優しさは残っていない。

アリエルは歯を食いしばりながら一歩踏み出す。


「返せぇぇぇっ!!」


彼女が勢いよく腕を振り上げた瞬間、周囲の空気が震えた。


「言ったはずだ。ここにはいない。」


円香は一歩前へ出る。

家の周囲を覆う霧が、さらに濃くなったように見えた。

アリエルが拳を握ると、空中に再び風の刃が形成される。


「どこにいるの!? 私の娘はどこ!!」


円香は一瞬だけ動きを止めた。


『娘……?』


その瞳が冷たく細められる。


「……あれだけのことをしておいて、まだ“娘”って呼ぶのか。」


アリエルの表情がわずかに揺らいだ。


「黙れぇっ!!」


彼女は叫びながら突進し、同時に複数の風刃を放つ。


円香は瞬時に横へ跳んだ。


ドゴォン!!


背後の家具が粉々に吹き飛ぶ。


次の瞬間には、円香はすでに彼女の目の前へ迫っていた。


「もうやめろ。」


彼はアリエルの手首を掴む。


アリエルは必死にもがいた。

だが、その腕は一ミリも動かない。


「離せぇっ!!」


「お願いです、アリエルさん! もうやめてください! あなたを傷つけたくない!」


アリエルの動きが止まる。


「傷つけたくない……?」


彼女は震える声で呟いた。


「じゃあ教えなさいよ……夫はどこ? ステラはどこなの……?」


「……」


アリエルは悲しそうに笑った。


「もう十分、私を壊したくせに……今さら情けなんて掛けないでよ……!!」


彼女は残った片腕を勢いよく円香の脇腹へ押し当てる。

風魔法を放とうとした――その瞬間。


ぼとり。


アリエルの腕が床へ落ちた。


「――――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


絶叫が村中へ響き渡る。


円香は目を見開き、とっさに後ろへ飛び退いた。


「なっ……!?」


そこへブリアンナが駆け寄ってくる。


「円香! 早く逃げよう!!」


「これ……ブリアンナがやったのか!?」


「今は説明してる場合じゃない!!」


『どうやったんだ……!?』


その時、家の外から大量の足音と話し声が聞こえてきた。


『まずい……!』


「円香、囲まれてる! 逃げ道がないよ!」


外から怒鳴り声が響く。


「計画失敗したのか!?」

「ご馳走を分けるって言ったじゃねぇか!!」

「もう自分たちで捕まえるぞ!!」


円香は咄嗟にブリアンナを抱き上げた。


「えっ……!? 円香……!?」


彼女の顔が一気に赤く染まる。


「飛ぶぞ! エリオットとステラが危ないかもしれない!」


「う、うん……!」


ブリアンナは恥ずかしそうに彼の胸へ顔を埋めた。


次の瞬間、円香は天井の穴から一気に飛び上がる。


その直後、村人たちが家へ雪崩れ込んできた。


彼らの目に映ったのは、両腕を失い、苦痛に呻くアリエルの姿だった。


「奥様!!」


村人たちは慌てて彼女の元へ駆け寄る。


「奥様、大丈夫ですか!?」


アリエルは荒い息を吐きながら顔を上げた。


「……夫は? グレックはどこ……?」


村人たちは顔を見合わせる。


「……申し訳ありません。ご主人は見つけました。すぐこちらへ向かっていたのですが……」


男は言葉を濁した。


「見ない方がいいかと……」


「生きてるの!?」


「…………」


「見せなさい!!」


「ですが奥様――」


アリエルは狂気の宿った目で彼らを睨みつけた。


村人たちは再び顔を見合わせ、やがて観念したように彼女を抱え上げる。


そのまま外へ連れ出されたアリエルは――硬直した。


地面に転がっていたのは、グレックだったもの。


もはや原形すら留めていない肉塊。


「あ……あぁ……」


アリエルの瞳が震える。


そして次の瞬間――


「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!! グレックゥゥゥゥゥ!!!!」


彼女は泣き叫びながら、その残骸へ縋りついた。


「円香ァァァァァァァァァ!!!! 絶対に殺してやるゥゥゥゥゥゥ!!!!」


その怨嗟の叫びは、夜空を飛ぶ円香とブリアンナの耳にまで届いた。


『……ごめん。』


ブリアンナは円香の顔を見つめた。

だが、彼女が想像していたような焦りの表情はどこにもない。

円香は驚くほど落ち着いていた。

二人は夜空を飛びながら、仮住まいへ向かっていた。

その時、突然ブリアンナが頭を押さえる。


「円香っ……!」


「どうした!?」


「エリオットとステラが……移動してる……! 私たちが泊まってた家の周りに、危ない感じの人たちが集まってる……!」


「お、おぉ……どうしてわかったんだ? ……あ、そうか。テレパシーか。」


「うん!」


「どこへ向かえばいい?」


「ちょっと待って……」


彼女はこめかみに手を当て、小さく呻き声を漏らした。


「大丈夫か、ブリ?」


「う、うん……平気……」


だが次の瞬間、彼女はぴたりと固まる。


「……え?」


円香が首を傾げた。


「ん?」


「今……“ブリ”って呼んだ?」


彼女の頬がほんのり赤く染まる。


「えっ……あー……その……なんとなく口から出た。」


円香は気まずそうに視線を逸らした。

ブリアンナは数秒間じっと彼を見つめ――やがて小さく微笑む。


「……これからも、そう呼んで。」


「え?」


「その呼び方、好き。」


円香は少しだけ顔を赤くした。


「そ、そうか……じゃあこれからもブリって呼ぶ。」


「えへへ。」


ブリアンナは嬉しそうに小さく笑った。


そしてすぐ、真剣な表情へ戻る。


「最初に泊まった場所まで戻ろう!」


その言葉を聞いた瞬間、円香の脳裏に悪夢が蘇った。

二本足で立つエリオット。

生気のない目をしたブリアンナ。

まるで死者のようだった姿。


「……焚き火した場所か?」


「うんうん!」


「しかし、本当に賢いなエリオット……ちゃんと覚えてたのか。」


「馬じゃないよ? エリオットはペガサス!」


「はいはい。」


円香はさらに速度を上げる。

そして二人は、霧に包まれたダリウル村を後にした。

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