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スーパー新世界:スーパーヒーローが異世界に転移した物語  作者: 佐藤蓮
佐野円香

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第一章5 『混沌の吹雪』

正体不明の王国の首都では、メドカの抵抗によって混乱が徐々に増していた。


この少年に、いつか仲間は現れるのだろうか。

それとも、彼の前に立ちはだかるのは敵だけなのだろうか。

円香は壊れた建物の壁にもたれかかり、荒い息を吐いていた。


「お前はもう終わりだ」


頭上から声が降ってくる。

レンナは空中に浮かび、円香を見下ろしていた。その視線は冷たく、怒りに満ちている。

円香の視界は再び揺らいだ――先ほどの一撃の影響がまだ残っている。


『選択肢はない』


足は震え、体は思うように動かない。それでも円香は歯を食いしばり、無理やり立ち上がった。


「……まだ立つの?」


レンナの声に一瞬だけ驚きが混じるが、すぐに苛立ちへと変わる。

彼女はレイピアを真っ直ぐ突き出し、そのまま突進してきた。


「これは都の人々の分よ!!」


『来る!どうする!?くそ……くそ、くそ……考える時間がない!』


レンナは一直線に突っ込んでくる。

あまりにも無防備だった。


怒りが彼女の判断を鈍らせていた。もはや相手の力を測る余裕すらない。

ただ、斬ることしか頭にない。


円香はギリギリのところで体を横にずらし、レイピアの切っ先をかわした。


『今の、危なかった……!』


その瞬間、円香は左腕を前に突き出す。


鈍い衝撃音とともに、レンナの顔がその腕に叩きつけられた。

彼女の体はそのまま地面へと落ちる。


「……ごめん。こうするしかなかった」


『今のうちに……仕留める……? 何を……考えてるんだ……俺が、そんなこと……するはずが……!』


円香は頭を抱え、その場に膝をついた。


『なんだよ……これ……俺は……どうしちまったんだ……こんなこと……考えるなんて……誰の意思だ……?』


上空からペガサスのいななきが響いた。円香はわずかに顔を上げる。


『来たか』


彼は地上を逃げることを選んだ――空では常に視界に入ってしまう。右へ振り向くと、最初に目に入った路地へと駆け出した。

やがて騎乗兵たちが現場へと到着する。

そこに広がっていたのは、無残に倒れた無辜の人々と、地面に横たわる意識を失ったレンナの姿だった。


「……ここで何があったの?」


「隊長、あちらにレンナ様が!」


レンマの部下たちが倒れている人物を指差す。


「姉さん!!」


レンマはすぐさま駆け寄り、ペガサスから飛び降りた。


「姉さん! 姉さん! しっかりして!」


彼女は耳をレンナの胸元へ当てる。


「……生きてる……よかった……」


安堵の涙が、頬を伝った。

そのとき、側近の足音が彼女の意識を引き戻す。


「ヒルディ?」


「はい、隊長。ここに」


「状況を報告しなさい」


「この区域の住民はすでに避難済みのようです。建物はいくつか崩壊。現在、隊員たちが生存者の救出にあたっています」


「犯人は見つかった?」


「アナスタシアとアルビナを追跡に向かわせました」


レンマの表情が曇る。


「……二人だけで?」


「は、はい……あの男の捕縛には十分だと判断しました。それに他の者たちは救助を優先させています。さらに、衛兵たちもすでに捜索を開始しています」


レンマは拳を強く握りしめた。

ゆっくりと立ち上がり、崩壊した区画を見渡す。


死体。

血。

崩れた建物。


その視線が一瞬、レンナに留まる。


「ヒルディ、二人連れて。レンナを安全な場所へ運びなさい。今すぐに」


「はっ!」


「他の者は引き続き住民の救助にあたれ。ただし、警戒は怠るな」


レンマは一瞬、言葉を切った。


「……あの男は、予測不能だ」


「……はい、隊長」


レンマは顔を上げる。


「それと――」


声がさらに冷たくなる。


「次に交戦した場合……生け捕りは考えるな」


ヒルディの動きが止まった。


「隊長……?」


「命令だ」


一瞬、静寂が落ちる。


「……了解しました」


ペガサスたちが、不安げにいなないた。まるで緊張を感じ取ったかのように。


――その頃。


円香は狭い路地を駆けていた。

足をもつれさせ、壁に手をつきながら、それでも前へ進む。


呼吸は乱れ、

心臓は今にも胸を突き破りそうなほど激しく脈打っていた。


『どうして……どうして、こんなことに……』


脳裏に焼き付いて離れない光景。


血。

叫び。

倒れた人々。


『……俺は……望んでなんか……』


円香は足を止め、頭を押さえた。


「やめろ……」


指が髪を強く掴む。


「やめてくれ……考えるな……」


『走れ』


再び、彼は走り出した。


路地から路地へと駆け抜ける。

人の気配はほとんどない。


あるのは遠くから聞こえる衛兵の声と、

不穏に響くペガサスのいななきだけだった。


ブリアンナは落ち着かずにいた。胸の奥で何かがざわつき、あの謎の少年のもとへ引き寄せられるような感覚が消えない。


球状の白い果実をペガサスに与えながら、彼女は重い決断を下そうとしていた。


その頃――円香は石畳の上に腰を下ろし、これからどうするべきか考えていた。


『このクソみたいな結界の外に出ないと……』


「隊長、みんな! いた! あそこにいる!!」


円香ははっと顔を上げる。

路地の上空、建物の隙間から一人の騎乗兵がこちらを見下ろしていた。


彼女はペガサスに何かを囁く。


直後――


ペガサスが高くいななき、仲間たちを呼び寄せた。


『くそ……何度目だよ……!』


円香は一気に空へと飛び上がり、そのまま全速力で離脱する。

騎乗兵たちは間髪入れずに追撃を開始した。


四人の追手が、ぴたりと背後につく。


本能に突き動かされ、円香は下を見る。


次の瞬間、緑色の魔法弾がいくつもこちらへと飛来していた。


回避する。


『今のうちに距離を――』


そう思った矢先――


見えない何かが腹部を強打した。


「ぐっ……!」


痛みとともに息が漏れる。


再びバランスを崩し、円香の体は急降下を始めた。

何かに押さえつけられるように、上昇できない。


「くそ……離せ……!!」


「ははは……」


どこからともなく笑い声が響く。


『……姿が見えない?』


『まさか――透明化か……!?』


だが、気づいたところでどうにもならない。


数秒後、円香は地面へと叩きつけられた。


圧迫感が消える。


彼はすぐに立ち上がり、周囲を見回した。


――誰もいない。


広がるのは無人の都。


衛兵も、住民も、影一つ見えない。


「……どこ行った……?」


『おかしい……さっきまであんなにいたのに……』


突如、強風が吹き荒れる。


巻き上げられた砂塵が視界を覆い尽くす。


円香は腕で顔を庇った。


マントが風に煽られる。


「なんだ……これ……!?」


だが風は長く続かなかった。


不自然なほどに、突然止む。


やがて砂煙が晴れていく――


そして。


円香は息を呑んだ。


周囲を、完全に囲まれていた。


無数の衛兵たちに。


視界はまだぼやけている。

だが、それでも分かる。


『……あり得ない……』


あの風の中で、この数が無音で集まるはずがない。


「右……!」


すでに兵が構えている。


「左……!」


そこにも。


「後ろ……!」


振り返った先にも、逃げ場はない。


「なっ……なんで……なんでだよ……!!」


混乱が一気に押し寄せる。


「驚いたか?」


再び、声。


姿は見えない。


円香の体がびくりと震える。


「だ、誰だ……!?」


背後に気配。


反射的に振り向き、拳を振るう。


空を切る。


「当たらないな」


嘲笑。


その直後――


目の前に、突如として現れた。


歪んだ笑みを描いた仮面の男。


「あ……!?」


円香は反射的に飛び退いた。


「もう捕まえたのか?」


冷たい声が上空から降ってくる。

ペガサス騎兵部隊が到着していた。


「おや、レンマ様ですか。こちらはほぼ終わっていますよ」


円香は視線を彷徨わせる。


誰が先に来る――?


誰が攻撃する――?


「……生け捕りは可能か?」


レンマの問い。

仮面の男がわずかに間を置く。


「相手次第だ。大人しく降伏すれば裁きを受けさせる。だが抵抗するなら――力づくになる」


そして、短く命じた。


「捕らえろ」


その瞬間、仮面の男は消える。

同時に、衛兵たちが一斉に間合いを詰めてきた。


『逃げる!? どこへ!?』


後ずさる。


――失敗だった。


背後の兵が、すぐそこまで迫っていた。


『……詰んだ……?』


『いや……違う……』


『俺は……こんなところで終わらない……』


『俺は……ヒーローだ……!』


『こいつらは……敵だ……!』


円香は構えを取る。

突破するために。


『……行く!』


その瞬間――

突風が吹き荒れた。

兵たちの動きが止まる。

視界が揺らぐ。

そして。

円香の姿が、消えた。


「……どこ行きやがった!?」


「逃げたのか、あのガキ!」


「次は絶対殺す!」


苛立ちの声が飛び交う。

その中、レンマのもとへ一人の騎乗兵が降り立った。


「隊長……今のは……」


レンマは静かに目を細める。


「……ええ」


「今のは――ブリアンナね……」


皆さん、こんにちは。読んでいただきありがとうございます。


もしお時間がありましたら、本文中に矛盾やおかしな点を見つけた場合は、コメントで教えていただけると助かります。

長い文章を扱っていると、どうしても混乱してしまうことがあり、それはできれば避けたいと思っています……


もしこの話を気に入っていただけましたら、評価や感想をいただけると嬉しいです。

どこが良かったか、または気になった点なども教えていただけるとありがたいです。


読んでいただき、本当にありがとうございました。


「佐藤蓮」


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