力は人を変えてしまう
卒業式の後
「あの…オンブラさん!!」1人の男子生徒がオンブラに話しかけてきた。
「どうした?」
「勇者になったら、パーティーを組まなきゃいけないじゃないですか?…その、出来れば僕とパーティー組みませんか?」男子生徒は勇気を振り絞ってオンブラに頼んだ。
この世界には、勇者になった後、パーティーを組まなければ、魔獣と戦うことが許されないと言う法律があるのだ。
「僕…幼い頃に両親と姉を魔獣に殺されて、それで仇を取りたいんです!ですからお願いしま…」
「嫌だ」
オンブラは、食い気味に答えた。
「な、なんでですか…オンブラさんといれば、家族の仇が…」少年は泣きそうな顔になっていた。
「なんで俺が、弱いお前と組まなきゃいけないんだ?」オンブラは、急に辛辣な事を言い出した。
「え…?」あまりにも思っていた人物像と違かったので、男子生徒はショックを通り越して、困惑していた。
「だから、なんで俺が、あの程度の魔獣に苦戦する、お前の様な雑魚とパーティーを組まなきゃいかんのか?って聞いてるんだよ」
「あの程度って…半分以上が殺されたんですよ?」男子生徒は動揺を隠せなかった、
彼は先程の卒業試験で数人の友人を失っていた。
「ただの実力不足だろ?お前はテストで赤点を取った時、テストのせいにするのか?自分の実力不足のせいだろ?それと同じだよ」
「ひ、酷い…!!」男子生徒は思わず声が出た。
「そうだよ、現実ってのは酷いもんさ、どこの世界もな…」
「オンブラさん…僕の事、覚えてますか?」
どうやらこの男子生徒は、オンブラの知り合いらしい。
「お前とは初対面のはずだが?」
だがオンブラは、その事を覚えてなどいなかった。
「1年ぐらい前、オンブラさんが転入してきた時、僕が不良に絡まれてて…その時に助けてくれたじゃないですか…あの時は心の優しい人だと思いました、あの時のオンブラさんの目には、不良への憎しみこそありましたけど、心の底にはしっかりと、優しさがあったはずです…」
どうやらこの男子生徒は、1年前にオンブラがDQNから助けた、あの男子生徒のようだ。
「お前になにが分かるんだよ?心が読めるとでも言うのか?大層な能力だな」
「恥ずかしながら僕は、オンブラさんが助けてくれたあの時まで、友達がいませんでした…でもずっと欲しいと思ってた、だから人をよく観察するようになったんです …なので観察する力だけは、人一倍優れてます」
それゆえに、人の心を読む事が得意なのだ。
「なら良い事を教えてやろう、力だよ、力があれば人は変わる事ができる、力さえあればなんでも思い通りにできる!!」
(もう昔の…醜い俺とは違う、誰にも相手にされず無様だった俺は…もう居ない!!)
田中順一は死んだ、彼が自分の持つ力に気づいたその時に…、周りとの劣等感を覚えつつも奥底には優しい心を持ってたあの順一は、もうどこにも存在しない、ここに居るのは、ネロ・オンブラなのだから。
そしてオンブラは、その男子生徒の横を通り過ぎた。
オンブラが横切る瞬間に、男子生徒は言った。「人は、力に溺れる生き物なんですね…」




