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人は力に溺れる生き物

翌日


「あれ?サーロスは?」


「あぁ、どうやらこの時期になると故郷の街で、台風が来るらしくてさ、急に思い出して出ていったよ」

オンブラはまたも嘘をついた。


朝食を食べ終えた跡、2人はぺスカのおじいちゃんの居る豪華な部屋へと向かった。


「よくぞ四天王の魔女を倒してくれた、あとの3人は…無念だったの…」


パーティに2人しか居ないのを見て、おじいちゃんは察していた。


「あ、いやもう1人は実家に帰っただけだ」


「あぁそうなのか」


「それで、お主が魔女を倒したのか?」

おじいちゃんがオンブラに質問した。


「はい、最後は俺が倒しました、それも一瞬で。

でもそれも、皆も活躍があったからです」

オンブラは心にも思ってないであう事を口にした。


「そうかそうか…そりゃ素晴らしい功績だ、どうだね、うちのかあいい孫娘、もらってはくれんかね?」

おじいちゃんは唐突に婚約の話を持ち出した。


「ちょ、ちょっとおじいちゃん!!!」

ぺスカは顔を赤くして、恥ずかしがっていた。


それを見て、オンブラとおじいちゃんは微笑んでいた。


「ま、冗談よ」


(冗談かよ…クソじじぃが)オンブラは心の中でそう言った。


「それにしても意外よな」

急におじいちゃんがそう言った。


「意外?なんでよ?」

ぺスカが質問した。


「だって、いかにも大人しそうな顔をしているだろ?クラスの端っこにいそうなイメージだ」

おじいちゃんはとんでもなく失礼な事を言った。


「ちょ、ちょっとおじいちゃん!!」

流石にぺスカも焦った。


「なんだとクソジジィ!!!俺に陰キャだって言いたいのかよ!!俺は違う!!もうあの時の俺とは違うんだ!!!田中純一は死んだ、俺はネロ・オンブラだァァァ!!!」

オンブラは急に震えながら逆上し始めた。

その怒りの中には焦りも見えていた。


「もういい、こんなに俺を不快にさせるとはな!俺は出ていく、ぺスカ!お前ともここでさよならだ!」

そう言ってオンブラは、城を出ていった。


「ちょ、ちょっと待ってよ…!!」

ぺスカはオンブラの所へ向かおうとしたが、それをおじいちゃんが止めた。


「待てぺスカ、お前に全てを話そう」


一方、オンブラは、城から出て行ったあと、一人で次の街へ向かうために、森に入っていた。


「クソッ…全然道がわかんねぇ…今までは皆に頼ってたからな、だけどよ、あんな雑魚どもが居なくても俺一人でやって行けるぜ」


オンブラは道に迷っていた。


そして永遠に森を彷徨っていると、気がつけば夜になっていた。


「ったくなんで魔法に千里眼がないんだよ…」

オンブラが嘆いていると、目の前にスライムが現れた。


「ったくスライムごときが、俺の前に現れるじゃねぇよ!」


そしていつものように、炎で焼き殺そうとしたが、なぜか上手く炎が出なかった。


「えっ!?なんで出ないんだ?体調悪いのかな?」


オンブラが焦っていると、後ろから聞いたことのある声が聞こえてきた。


「異世界チート、オマケにハーレム、どうだったかね?」


そこに現れたのは、ぺスカのおじいちゃんだった。


「けどその声、どこかで聞いた事あるような…あっ…」


その声は、オンブラ(田中純一)が交通事故にあったあと、彼を異世界へ転生させた神もどきに似ていた。


「まさかあんた!?」


「あの時、お主を異世界に送ったのは私だよ」


ぺスカのおじいちゃんこそが、田中純一を異世界へ送った張本人だったのだ。


「だったら話が早い、なぜだか能力が発動しないんだ、どうにかしてくれよ!」

オンブラは必死に頼んだ。


「そりゃそうだろうな、その力は私が没収したのだから」


「な、なんで?」

オンブラは今までにない程に、焦った表情をしていた。


「なんで…か、それすらも気づけない程に、力に溺れてしまったか…」


「元はと言えば、あんたが勝手にを渡した能力だろ!!好きに使って何が悪いんだよ!!!」

オンブラは逆上した。


「仕方がない、なぜお前に、この力を与えたのかを説明しよう」


「私は若い頃、フィオーレ家の跡を継いで勇者になってな、その後、魔王の居る街の近くまで着いたんだが、そこで運命の出会いをして、私は勇者より家族を優先してしまった」


「そして子供や孫に囲まれて、気づいた頃にはジジイになっていた、もはや今まで培ってきた能力も、この肉体じゃ扱うことができない、言い換えれば、誰も魔王を倒すことができない」


「そんなある日、私は別世界の存在を発見した、そこには多くの人間が生きていた、その中に、皆から除け者にされながらも懸命に生きて、心の奥に正義感を秘めている青年を発見した、お主…いや田中純一だよ」


「勝手ながら私は、純一君なら私の膨大な力を得ても、力に溺れず、ゆくゆくは魔王を倒してくれると思った、だからお主に力を与えた」


「だがとんだ勘違いだったようだ、お主は力を手に入れたのをいい事に、どんどん力に溺れていき、人を必要以上にいたぶり、自分より弱い者を傷つけて、挙句の果てには、仲間を見殺しにした」


「そんな君を見て、私は失望したよ…だから力を没収した」


「ま、待ってくれよ、その事に関しては本当に申し訳なかった!!急に力を手に入れたもんで調子に乗ってしまったんだ!!だからさ、また力を与えてくれよ…与えてください…あの力がないと、俺は…生きて行けないッ!」

オンブラは泣きながらうずくまった。


「やはり、人は力に溺れる生き物なんですね…」


「その声は…!?」


そこに立っていたのは、昔、オンブラがパーティを組む際に、ボロクソ言って断った男子生徒だった。


「自己紹介がだいぶ遅れましたね、私はイル・ペンシエロと言います、よろしくお願いします」

イルは律儀に自己紹介を始めた。


「なぁイル、今から俺とパーティ組もうぜ?力なんて関係ないよな?だろ?」

オンブラは必死にイルの脚にしがみついた。


「邪魔ですよ…」

するとイルは、しがみついていたオンブラは蹴り飛ばした。


「く、クソッ!…ん?」


暗闇で見えづらかったが、よく見てみると、イルの他に4名が立っていた。


「オンブラ君、久しぶりだね、よくも見殺しにしてくれたね」

そのうちの1人は、死んだはずのアモーレだった。


「このクソがァァァァ!!!」

そう叫びアモーレは、オンブラに殴ったり蹴ったりした。


そして、アモーレに蹴り飛ばされた後、オンブラの近くに足が見えた。


するとその足は、オンブラの顔面に突きつけられた。


「グハッ!」

オンブラは鼻血を流して倒れた。


「おいおい、まだ終わりじゃないよね?よくも私だけじゃなくアモーレも見殺しにして、皆を騙しやがって!!!」

そこに居たのは、またしても死んだはずのレガーレだった。


レガーレは、足に炎を纏わせて、倒れていたオンブラの顔面を何度も踏みつけた。


するとそれを、1人の男が見下ろしていた。

それは、サーロスである。


「た、助けてくれよぉ?なぁサーロス?仲間じゃないか!それに、魔獣を倒した恩を忘れたのか?」


「そうだね、その件については今でも感謝しているよ、だけど君はあの魔獣の正体を見破っていたのにも関わらず、それを教えてはくれなかった…まさか元は普通の一般人だったなんて…それを知っていれば、他に手段があったはず!!!」


そう言ってサーロスは、オンブラの腹部に光の剣をぶっ刺した。


「クッ…一体どんな…手段だって言うんだよ…」

オンブラは散々ボコボコにされて、死にそうになっていた。


「おじいちゃんから聞いた話だと、その気になれば洗脳を解くこともできるんでしょ?あと死者も蘇生させられるって…なんでレガーレとアモーレを助けてくれなかったの?信じてたのに…信じてたのにィィィィ!!!」


そう叫びながらぺスカは、オンブラの顔面を殴り続けた。


「グハッ!…たす…けて…くれ」


「うわァァァァァァァァァ!!!! 」

ぺスカはひたすらに叫びながら殴っている。


そして気づくと、さっきの5名はいなくなっていた。


すると目の前には、今まで散々焼き殺してきたスライムがいた。


「なっ…!!」


そしてオンブラは、スライム相手に完膚なきまでにボコボコにされた。


次第にオンブラの意識は遠ざかっていく。


「安心しろ、死んだ後は元の世界に戻してやる、ついでに記憶も消しておくよ」


そう言ってるぺスカのおじいちゃんの声が、どんどん遠ざかり、ついには聞こえなくなった。


「…人は、力に溺れる生き物らしいな…」


そう言って、オンブラは命を落とした。

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