第2-2話
小高い丘を降りて森に入る一行。
『なぁリーヴァ。森の中は安全って言ってたけど、普通逆じゃね?』
前世、今世でも森の中は基本的に生き物の坩堝。何がいてもおかしくない。
「と、思うでしょ?良く森を観察してご覧なさい?」
そう言われ、ダバ達は周囲を見渡す。
『そう言われりゃ……なんか明るいな』『ジメッとした感じが無い』『癒されるれふ…』『美味しそうな匂いが…』
感性はバラバラだが一応に感じるのは良いイメージ。
「……まぁ、バラバラなのもアンタ達らしいけど、ココは首都アルフレイムなのよ。長年に渡ってエルフ達が森と共に生きているの。
無論、世界樹の加護もあるけれど、彼等の献身が無ければ、神域とも言われる森には成らなかったでしょうね」
この森に住むエルフ達が手を加える事により、人、動物にとって住みやすい環境が生まれた。森も放置していれば、空気の流れや、この世界ではマソ溜りの様なものまで産まれる。そういった事を未然に防ぎ、神聖な空間を生み出したのだろう。
かと言ってこの世界のエルフ達は他者を排除したりしない。
リーヴァ達の村もそうだったが、ある程度寛容だ。
自分達の考えを持ち、それを他者には強要しないが、他者も否定しない。話し合い、妥協点を見つけ、共に過ごす。長い年月を生きるエルフ達は、大切な事を理解していた。
『でも、悪人に対しては容赦ないんだろ?』
「当たり前じゃない。目には目を歯には歯を、よ!!」
ハンムラビ法典はどの世界でも原点のようだ。
『……法律みたいなのがあるんだな』
「国として成り立つには必要だからね。細かくは分からないけど、裁く人もいるし」
『……ふーん』
法治国家かぁ…と、難しく考えているようで、よく分かってないダバだった。
無論他の三頭はなんのこっちゃ?の流れである。
「やぁ、君たちどこから来たんだい?」
森の中を歩いていると頭上から声が掛かる。
『ん?』
「あ、私達はヴィヴィアンから来たんです」
「おぉ、同胞か!よく来たね、アルフレイムへようこそ!首都に来るのは初めてかな?」
木の上から姿を現し、軽い足取りで降りてくる。忍者か。
(それにしても気配を感じなかったな…やはり木を隠すなら森の中)
などとくだらないことを考えるダバ。
「えっと、なぜ初めて来たってわかったんです?」
そんなにお上りさんしてたかな?と不安がるリーヴァ。
「森林浴が気持ち良さそうな顔してたからね」
軽くウインクまでしやがるこの軽エルフ。どうやら門番兼森の手入れをしてる様だ。
そんな軽エルフに図星を突かれ少し赤面気味のリーヴァ。
「仕方ないよ。僕達エルフにとってこの森は神域。心が清められていくのも解るだろ?」
「はい。確かに清々しい気分になります!」
(オレは何だかどす黒くなるけどな!)
鼻息荒くムスッとするダバ。嫉妬全開だ。
「で、この子達は?君は魔獣使いかな?」
「いえ、ん?私、テイマーなのかな?」
『違うだろ?同等のパートナーだ』
「おや?話せるのかい?と、なると…これだけの馬体…ジアンスかな?」
『そーだよ』
若干ぶっきらぼうに答える。
「ふむ、流石に雄大な馬体だね!鬣も素晴らしいし、何より毛色が最高に艶を出している!君は美しい!!!」
大振りなアクションをしながらダバ達を褒めちぎる。当の本人達も、若干引きながらも悪い気はしない。
『『そ、そう?』』『『だよねー!』』
男に褒められて舞い上がる馬達。チョロすぎだろ。
「ふむふむ。世界の旅と仲間探しか」
アルフレイムに来た理由をリーヴァが説明していた。
「そうなんです。アルフレイムでギルドに登録と、仲間探しが主な目的です」
「良いね!まだ若いんだし、世界に目を向け、視野を広げるのは素晴らしい事だよ!」
手を広げ、いちいちオーバーアクションの軽エルフ君。少しウザい。
「そんな君達に先輩からアドバイスだ」
『ほほぅ…』
「なんです?」
ウザいがいい人っぽい。
「恐らく彼等目的の人が集まるだろう。彼等程の馬達は中々居ないからね。だから仲間を選ぶなら、君達二人が決めるんだよ」
ビシッとリーヴァとダバを指差す。
「君達は彼等が、あらゆる手段で籠絡されていないか判断するんだ。また、君達お互いが騙されていないか、も、だよ?人と馬、同時に落としに来る奴はあまり居ないからね」
至極真っ当な意見の軽エルフさん。軽そうなのに良いエルフっぽい。
「助言ありがとうございます。慎重に判断しますね」
「うん。でも時には直感に従うのもいいんだよ?僕達エルフは、世界樹に守られてるからね」
どないやねん。
そんな事を話しながら森の奥に進むと木々が減り、辺りが開けてくる。
「さあ、着いたよ。首都アルフレイムだ!」
中央部には山の様な世界樹。その巨大さは他を圧倒しつつも何故か惹かれる。まさに神秘の樹だ。
世界樹を中心とし、大きな木が連なる。その周りには住宅地らしき建物が見え、木と共に生活しているのがわかる。
開けた一帯には、農業や畜産業を営む人々。一部には鉄鋼業も着手しているとか。
豊かな湧き水から産まれた湖には、多種多様な水棲生物が。なんでも夕方や、夜には恰好のデートスポットになるらしい。
森林業、農産業、鉄鋼業が主な産業で、観光向けの産業も多く扱っている。芸術品、魔術用品、装備品、等々、手先の器用なエルフ特産品は人気だそうだ。
住んでいる人種も多様で、森精種のエルフやドライアド。妖精種のピクシー、フェアリー。獣人種のバステト、ガネーシャ、ガルーダなど。水棲種の人魚やマーメイド達。リザードマン迄。多種多様な人種が生活している。
その国は、まさに亜人達の国理想郷を体現していた。




